saboten


うちのベランダに出しっぱなしのサボテンは、年に一度だけ花を咲かせる。


昼間のうちに伸びてふくらんだつぼみの先に、

その夜のうちに薄紫色の、たおやかであでやかな花を咲かせる。


花は一昼夜、その美しい姿をすっくと空の下に伸ばし、

次の朝が来る前にしぼんで土の上にその身を横たえる。


たった一日、美しく花びらをひろげ、その花びらを蜜に濡らして枯れていく。

何かを望んで果たされず、でも恨みも悔やみもせずに去っていく。


彼女に勝る美しさに僕はまだ出会えずにいる。