病棟にはチームが2つある。
重症者メインのAチーム。中・軽症者のBチーム。
Aチームは(奴)が管理し、Bチームは俺が管理していた。
一応、師長は全体を管理する立場ではあるが、残念ながらそこまでの力量はない。
主任と副主任に至っては、その他のメンバーと遜色ない。
はっきり言って、この病棟は(奴)ありきで成り立っていた所が大きい。

異動が決まってからの1ヶ月間は(奴)が主任と副主任を教育していたが…。
さすがのベテラン達。全く危機感を感じていなかった。
まぁ、(奴)がいなくても問題ないと思っていたのだろう。
さて、大問題が発生しまくりだ。

手始めに重症者チームでノロウイルスが蔓延。
もうすぐ春というこの時期にノロウイルスとは…。
日に日に下痢の患者が増えていった事に何の不信感も持たず、ただ事務的に担当医に整腸剤の指示をもらうという事を繰り返していた。

チームが違う事や、身内の事で忌引きを取っていたのもあり、休み明けに出勤してみればスタッフも1/3がダウン中。
ベテラン勢が次々とダウンしていく中、SとKが率先して病棟を回していた。

俺「状況は?」
K「ノロで4部屋隔離中です。主任と副主任もアウトです」
俺「誰が指揮してるん?師長?」
K「(奴)先輩とF先生です」
俺「は?」
S「師長に聞いても指示をくれないんで(奴)先輩に電話で指示もらってます」
俺「嘘やろ。ってか俺にも連絡しろよ」
K「電話しようと思ったんですけど(奴)先輩に『忌引きで休んでる奴に電話するな。常識考えろ。あいつが帰ってくるまで俺が指示出す』と言われたので…」
俺「…。すまん。」

奴『帰ってきたか?』
俺『すまん』
奴『お前の仕事アドレスに発生時からの状況を全て送ってあるから確認しろ。状況はF先生にも全て伝えているから』
俺『了解』
奴『リンゴジュース忘れるなよ!今回は2本な!』
俺『お土産も付けて持っていくわ』
奴『あと、落ち着くまで店に来るなよ』
俺『了解』
奴『それと…』
俺『お、おぅ…。まだあるんかい』
奴『ノロでアルコール消毒しとるバカを教育し直せ!』
俺『…!?マジか…。了解しました(泣)』