喫煙所にて。
俺「なぁ?そんな異動レベルまで話しが行く?」
奴「ん?」
俺「少し休めば気持ちの整理ができて復活するやろ?怖いって言ってもナースコール鳴っただけやん。エレベーターに閉じ込められたとかやったら分かるけど」
奴「お前、ここ2週間でMに電話したか?」
俺「一応、教育長として毎日してる」
奴「電話に出たか?」
俺「…。全滅。避けられてるかな?」
奴「いや、多分違うぞ。俺も全滅や。さらに師長もKもIもダメ。全滅オブ全滅や」
俺「でも、部長は毎日電話してるって言ってなかったっけ?」
奴「辛うじて部長の電話だけ出てるんやろな。いや、部長の電話だけは頑張って出てるんやろうな」
俺「…。なぁ、もしかして…。ナースコールの一件が発端で電話恐怖症になったとかないよな?」
奴「…。」
俺「マジで?」
奴「多分な。いや、間違いないやろな」
俺「嘘やん。たかがナースコールやん。実害もないのに」
奴「恐怖心ってのは、そんなもんや。」
奴「先端恐怖症ってあるやろ?」
俺「鉛筆とか包丁の先っぽが恐いやつ?」
奴「まぁ、そうやな。多分、包丁の先っぽは誰だって恐いと思うけど、認識は合ってる。他に尖ってる先っぽっていったら?」
俺「ナイフ!」
奴「アホか。ナイフの先っぽなんて恐い以外何者でもないやろ。さらに、ナイフの先端見てニヤニヤしてる奴おってみろ?セットで怖さ倍増じゃ」
俺「他に尖ったものやろ…。指とかは?」
奴「正解。いい線いってるぞ。もう一声。ヒントは『目の前にあって1日に何回も見えているけど、いちいち気にしないもの』や」
俺「お前!」
奴「なるほど。次の夜勤覚悟しとけよ。真っ暗な中、背後に立って永遠ナイフ見つめてニヤニヤしとくからな」
俺「す、すんませんでした…」
俺「で?正解は?何回も見るものやろ?」
奴「前髪や」
俺「は?」
奴「先端恐怖症の人間ってのは自分の前髪すら恐怖心を抱く。あと、顎とかな。『自分に向かってくる』って恐怖するんや」
俺「他人の顎が?」
奴「そう。四方八方、顎ミサイルや」
俺「前髪なんて逃げられへんやん」
奴「だから、恐いんやろ」
奴「先端恐怖症含め、そういう症状を限局性恐怖症という。場所や物とか、一定のモノに対して強い恐怖心を持つ事や」
俺「Mの場合は電話って事?」
奴「おそらくな」
俺「理解出来へん。時間がいるわ」
奴「ま、そうやろな。隣の奴に『前髪が向かってくるから恐い』って突然言われても意味不明やしな。時間はかけて良いが、理解はしろ」
俺「…。」
奴「ほな戻るぞ。コーヒーよろしく。部長は甘党やぞ。間違うなよ」
俺「俺が買うんかい」
奴「講義代や。間違えてもブラックは買うなよ。ボーナスカットされるぞ」
俺「ペナルティーが重い!」