~音楽は国境を越えて~
バイロンベイで、夕日を見ようと海を目の前に岩場で一人座っているときでした。
”こんちゃー。”
とどこからともなく声が。
振り向くと、2人の日本人男性と1人の日本人女性。
そして手にはディジュリドゥ。
ディジュリドゥとは、アボリジニの楽器。世界で初めての楽器ではないかと言われているほど深い歴史を持ち、大きな笛という感じなのだが、吹くには相当のコツがいり、そして音は何ともたとえようのない音。ホントにその穴から音が出てるの!?という音が出る。
”これからディジュの練習すんだけど、もしよかったら一緒に来るー?”
とレゲエ風の男性。
せっかくなのでついていってみることに。
適当なビーチに腰掛け、自己紹介から今までのワーホリ話などを語った。レゲエ風の男性はコージさん、見た目インドで3年ほど放浪してましたという感じの男性はロディさん、そして女の人はマリさんといった。
彼らはオーストラリアのワーホリで、天気のいい夕方はこんな風にディジュリドゥを持ってビーチに来るそうだ。
ディジュリドゥは本当に深い音が出て、暮れていく夕日と絶え間ない波の音によく合う。
するとどこからともなく、太鼓の音が響いてきた。
”行ってみよっか。”
とロディさん。
4人で音のする方へ向かうと、チベット系の老人が海に向かって太鼓を叩いていた。あわせてディジュリドゥを弾くロディさんとコージさん。音楽に合わせて踊りだすマリさん。
するとぞくぞくと音楽家が集まってくるではないか。
マラカスを持ったおじさん、太鼓に加わる女の人、その周りで踊りだす現地の人、楽しそうで思わず叫ぶ子ども。
そして誰かが叫んだ。
”WHALE!!”
海を見ると、遥か彼方で水飛沫をあげながらブリーチングする何頭もの鯨が見えた。
夕日が空を染めながら、海に向かって音楽家たちがアドリブの音を作り出し、海では鯨が踊りだす。
夢を見ているような、そんな気分だった。
即興野外コンサートは、オーストラリア最東端の灯台が灯りをともすまで繰り広げられた。
別れはすぐに訪れるけど、ともにした時間は一生モノです。
”俺はここで、日本じゃ見過ごしていた何かに気づき始めてる気がしてるよ。”
と遠くを見てロディさんが言った。
隣で太陽のような笑顔をしてコージさんが頷いていた。
マリさんは、まだ踊っていた。
一瞬の出逢い。
でも、出逢った。
そこに意味がある。
そして、旅人たちの別れの言葉はただひとつ。
”HAVE A NICE TRIP! --- よい旅を!”
~続く~