光の道構想とブロードバンド回線が普及しない理由
「光の道構想」とは原口一博総務大臣が日本の成長戦略として「2015年頃をメドにブロードバンド利用率100%の達成」として提唱した構想。
現在、NTT東西の光回線(FTTH)は、全国の市町村主要部の90%以上にインフラは敷設済みだが、世帯数で見た利用率は約30%にとどまっている。利用率が向上しない背景の分析や対応策を大臣直轄の作業部会「ICTタスクフォース」が議論中とのこと。
普及しない理由には、有識者がこぞって「別にもはやインターネットに早さを求めてないからだ」とか「魅力的なコンテンツがない」とか言い出す始末。しかも「コンテンツもないのに回線だけ作るなど、箱物行政的で時代錯誤」だの「車が走らない高速道路になる」だの言われたい放題。
ちょっと待って……と言いたい。
光回線でも「遅い!」と思うコンテンツはいくらでもある。早さは正義……とまでは言わないにしても、早ければ可能なことはいくらでも検討されている。クラウドコンピューティングの世界になれば、サーバーの処理能力以外、ネットの早さへの依存度は高まるはず。パソコンの能力の高さよりも、できるだけ早い回線を手に入れることが望ましくなる。
ここはまさに鶏が先か、卵がさきか、という議論……と思われるが、実はひとつ確かなことがある。
光回線じゃなきゃ享受できない世界はまだまだある、ってこと。そこを理解できない人にインターネットの未来を語らせちゃいけない。メールと簡易なWebサイトしか見ない層が大半だとしても、最先端は一部のイノベーターが切り開いてきた。一般的な国民負担だの費用対効果などの話ではなく、あくまでも将来的な構想を語るなら、そこにいたずらな庶民感覚を持ち込むのは間違いだと思う。
そしてもうひとつ。一番大事なこと。
ブロードバンドが普及しない理由は、根本的に普及しないならではの「ハードルの高さ」があるから。
ご存知のとおり、モデムによるダイヤルアップ(V.90など)の時代は、敷設済みの電話回線が利用できた。ISDNも回線上の工事のみで物理的に大きな修繕は無かった。ADSLも宅内工事が必要ないプランもある。この段階までの回線は、理想的かどうかはともかく、段階的な普及と導入が理解しやすかった。
しかし、光回線は別世界。
結論から言えば、自分の住むアパートでは光回線の導入が不可能だと思っている。
アパート内に3戸あり、1戸が企業の倉庫、もう1戸が空室。もう1戸が自分。マンションタイプで決められている「居住者の過半数の賛同」が得られない。もちろん、このあたりの融通は大家との交渉なのだろうが(ホームタイプによる工事を)、大家が「No」と言っている限り導入は不可能。
また、よく聞く例だと「光回線プランの話がチンプンカンプン。ADSLまでスムーズに移行できて、それほどリテラシーが無いわけじゃないのに、光回線の話はとにかく難しく感じて、二の足を踏んでいる」というケース。特にISPとNTTやKDDIの絡みのサービスが複数種類あり、ADSL時代までのプランよりも分かりにくいことは確か。しかも、損得勘定の比較が難く、何か騙されてる気になる(落とし穴がある)と穿ってしまう。
そして、ADSLまで導入済みの人は「今のままでも我慢できる」という側面があることは否めない。その理由は、光回線を標準にしたサービスが、それほど多く提供されてないから。もちろん、光回線が導入されていることを前提にしたブロードキャストは行ないたい。しかし現段階では「ADSL級の利用者が満足するデータ転送量」でコンテンツを提供することをガイドラインとしているから。
この踊り場的な状態は、別に誰もが望んだわけじゃないと思っている。
だからこそ積極的に打破すべきだし、冒頭でも書いたように「光回線でも遅い」と思えるようなコンテンツはいくらでも生まれる。なにせインターネットの回線の9割近くが、スパムと違法アップロードで埋め尽くされているんでしたっけ? 光だとしても、実測値でそれほど早いわけじゃないのに、究極の到達点のような価値観で語るのもお粗末。
とにかく、乱暴な持論(自己都合)で光回線が普及しない理由を語らせてもらえば、ホームタイプとマンションタイプなどの区分けと宅内工事の規模、それとプランの複雑さ。大家承認じゃなく、国の指導・命令としてもらいたい。○○タイプなどを撤廃し国が援助する。「導入しなきゃ大家に罰金」くらいの勢いで。
次に料金。段階的普及が目指せていたら、もうとっくに「光の人は快適」なんてコンテンツが山のように出てきたはず。けど、踊り場でまんまと踊ってしまったから、コンテンツが少なそうに見える。だから高額の回線を手に入れても、費用対効果が合わないように感じる。ただ、国をあげて普及させるならそれに則ってコンテンツは勝手に作る。だから「作り手・送り手」でもない学者や識者や文化人が、「コンテンツがない」なんてテキトーなこと語らないで。でも、回線費はもうちょい安くなるべきかな。
これは「光の道構想」に賛成しているわけじゃなく、それに対して語られる識者の反論や懸念に対する意見です。もちろん、もっとまともな反論などもあるように見受けています。なので、総論として「光の道構想」を語るほど詳しくないことも事実です。ただ、よく言われる「現状で十分論」「コンテンツ不在論」には、ひとこと言っておきたいかな、と思ったので。