白痴 (手塚眞) | キ〇ガイの記録

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精神異常者のたわごと

 

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第二次世界大戦中の日本を舞台とした、坂口安吾の小説をモチーフにしつつ、監督の個性を生かした作品。

原作と、ストーリーが微妙に違ったり、逆であったり、存在感のあるオリジナルキャラクターが居たりする。私は原作も好きなのだけど、この映画の優しい綺麗な作りもすごく好きだと感じました。

 

これはもっと評価されて良いんじゃないかな―、と思う。

あまり知られていないかもしれないけど、橋本麗香という女優さん、この方を最も美しく撮影した監督がこの手塚眞だと思うのです。

 

実験映画も同様だけれど、個人的にこの「白痴」が最も彼女の美しさを際立てたと感じました。それほど橋本麗香演じる「銀河」はこの作中で重要な位置を占めていたのです。もちろんサヨ役の女優さんも魅力的でありましたが。

 

主人公の勤めるテレビ局、それは当時の日本軍を表しており、つまり現代のテレビ局は戦時中の日本軍と変わらない体制である事を伝えたかったのかもしれません。

そのテレビ局、つまりマチズモの象徴の頂点に、女の子のアイドル銀河を据えたのは、マチズモへの皮肉のように思えます。

 

また、終盤に銀河の父親が、かの朝鮮人大虐殺事件で殺された在日朝鮮人である事が明かされるので、彼女の存在は二重の意味での当てつけのようでもあり、痛快に感じます。

 

銀河という存在、我が儘なキャラクターとして描かれてはいるのですが、決して否定的に描かれているようには見えませんでした。むしろ監督の分身ではないか?と思うほど、作中で肯定的に描かれている。

最後のダンスも同性をも魅了する程の見事なもので、見惚れてしまいました。

 

この映画のメインヒロインは、一応サヨという女性ではあるのですが、手塚監督のファムファタルは、映画オリジナルキャラである銀河なのだろうなと感じました。

 

銀河以外の女優さんも、皆非常に美しく個性豊かに撮影されていて、それもほとんど皆、本業が女優ではない人ばかりなのに違和感を感じない。

 

自分の美的感覚について、世間とのズレをしょっちゅう感じているため自信が無いのですが、とにかく「白痴」「実験映画」について一言で言えば、美しいの一言です。