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 何度となくミノタウルスの攻撃をギリギリのところで躱していた晃は、突然、低い位置から矢を放った。攻撃を剣で躱していたのに、いつの間にか剣を弓に持ち替えていたのだ。しかし、矢はミノタウルスの金属の胸板の鎧にはじかれた。ミノタウルスは矢を躱そうともせずに低い位置のグリフォンと晃に向かって一度、振り上げた斧を斜めに振り降ろした。しかし、これも晃には想定済みだったのか、斧を躱すと同時にミノタウルスの小手の部分を剣で打った。今度は、いつの間にか弓を剣に持ち替えていたのだ。
 ミノタウルスは小手も金属の鎧で防御していたが、晃の動きに自らの斧を振り上げようとしていたところを狙われたのでさすがに、少しばかり痛そうな顔をし、わずだが呻き声を漏らした。
「晃はあんなに強かったのか」
 ランセルが誰れにともなく言った。
「いえ、あそこまでになるには、この短い期間に相当な修練を積んだのでしょう。ただ、それでも、今の晃には迷宮のミノタウルスは強過ぎます」
 アレジーがランセルに答えたが、その目は晃から離れることはなかった。グリフォンは巨大なミノタウルスの周囲を右に左に上に下にと動いている。そして、矢を放ち剣を振る。晃は巧に弓と剣を持ち替えているのだ。
「おかしい。晃はどうして弓を持つんだろう」
 ロウガが言った。ロウガは晃のグリフォンに足の操作だけで矢を放つことの出来る武器が乗せられていることを知っているのだ。そして、手に持つ弓よりも強力なその弓ならミノタウルスの鎧を貫ける可能性があるということをもロウガは知っていたのである。
「そうか。これは、晃にも勝てる可能性が出て来たぞ」
 それを聞いてランセルが言った。
 晃はミノタウルスの正面でグリフォンの動きを止めた。
「理屈じゃないんです。こうして動いていれば生きているのと同じ。ボクはそうしたものに対する愛情を失いたくないし、そうしたものを愛せないものを許したくもないんです」
「許せないからどうするというのだ」
 晃は、グリフォンを飛ばさずにミノタウルスに向かって正面から走り寄った。そして、まさにミノタウルスと正面からぶつかり合いそうな距離でグリフォンは少しだけその身体を宙に浮かせた。そして、ミノタウルスの前で前転でもするかのように、くるりと身体を回転させた。その回転力を利用して晃は剣を持ったままミノタウルスの上空に向かって飛び出した。前転したグリフォンはミノタウルスに尾を向けることになった。その瞬間、数本の矢が放たれた。晃が飛び出す瞬間に放ったものだ。矢はミノタウルスの顔を狙って放たれた。さすがのミノタウルスもこれは大きな斧を横にして防御した。
 矢が激しい音とともに斧の左右に折れて散る。その瞬間、晃はミノタウルスの背に落ちて行く。落ちながら彼はミノタウルスの首の後ろに剣を突き立てた。剣は激しい血渋きをもたらすことになったが、その太い首に刺さることはなかった。
 ミノタウルスは振り返り、自分の後ろに落ちた晃に向かって斧を振り降ろした。グリフォンに騎乗していない晃には、もう、それを躱すこと余裕はなかった。