※このブログでは解剖実習のあれこれが詳しく、ありのまま書かれています。苦手な方はスキップしてください。

 









 












 

 

午前の授業は12時に終了し、午後の授業は13時から始まります。

ご飯を食べ、歯を磨き、白衣に着替えて、アルコール消毒をし、ゴム手袋をはめる。

以上の前動作には、十分すぎる時間でした。

 

実習室は2階にあります。

階段を登って部屋の前に来ると、実習室の扉の下に20cmほどのダンボールのバリケードがあることに気が付きました。

おそらく、目を覚ましたラットたちが逃げ出すことを防ぐためなのでしょう。

 

開始10分前に入室。

実習室は午前とは打って変わり、荘厳な雰囲気……と思いきや、思いの外同級生のみんなはおおらかで、和やかに談笑をしていました。

土砂災害警戒情報も発令されていましたが、少なくとも大学の建物の中にいれば安全です。

むしろ、今の状態で外に出て帰宅するほうが危険である、そんな状態でした。

教授が入室され、いよいよ授業が始まります。

僕のこのときの心境といえば、「かわいそう」とか「哀れみ」というよりかは、純粋な興味のほうが大きく、心臓も少し鼓動が大きく感じられていました。

これは、僕が非情だ、とか命の大切さがわかっていない、とかそういうわけではなく、本当に興味が湧いていました。

これも全て、一つ前の日記で書いたような感情が裏付けになっています。

 

「ラットを取りに来てください」

ラットの個体数の関係、そしてコロナウイルスに関する三密予防の観点から、3人で1匹のラットを解剖し、6人班で雌雄両方を解剖できるようになっていました。

たまたま席を立っていた僕は、班の仲間に目配せをして、バットを持ってラットを取りに行くことにしました。

 

「席は前?うしろ?」

「前です」

「そうか、じゃあ君たちはオスをお願い」

短い情報交換をした後、教授はケージからラットのしっぽを引き、取り出しました。

私はラットの持ち方を詳しくは知りませんが、教授はそのように持ちました。

教授が今までに何匹のラットを解剖してきたのかはわかりませんが、経験が僕の数兆倍豊かなことは火を見るよりも明らかです。

そんな教授の持ち方が正しくないわけがありません。

喋ったり書いたりしていない内容から学べ、とは、少し違うかも知れないけれどこういうことかもしれない。

そう思いました。

 

また、これは余談になりますが、一般の方々が専門家に専門領域について突っかかっていくことは、大半は無謀であり、避けるべきだと思っています。

おなじ動物の持ち方で言えば、ふぐの持ち方。

熟練者は両目を親指と人差し指でつまむ持ち方をよく行いますが、これに対して「かわいそう」「残虐だ」「動物を扱う資格がない」と、冷徹な発言を反射的に行う人がいます。

しかしそういう方々に限って、「ふぐは前歯が危険であるからこのような持ち方をせざるを得ない」ということを知らないことが多いのです。

そしてそのことを教えられると、屁理屈を付けて攻撃してくる。

 

この問題に対して、様々な解決方法があります。

間違っていると思う前に自分で調べる、質問する。

あるいは、新しい知識として覚える。

何でもかんでも「この人は絶対に正しい」と盲信してしまうのもよくありませんが、はじめから疑うことしか知らない、というのも、人情味に欠けるような気がします。

お互いが気持ちよく、かつ利益を得られるような行動をすることが、お互いのためになるのではないでしょうか。

 

さて、バットの上にラットを置かれた僕は、まっすぐ席に戻り、机の上に置きます。

ラットには予め麻酔がかけられており、自由に動かないようになっています。

バットに横たわった白毛のラットは、浅い呼吸を繰り返しています。

息を吸うごとに、胸のあたりが大きく揺れているのがわかりました。

 

全部のグループにラットが配られると、教授は再び口を開きます。

「黙祷」

これから、僕たちの知識・経験のために命を落とすラットたちに、深い敬意を払うことができました。

 

ここからは、スクリーンに投影された教授のラット解剖と自分たちの班のものを照らし合わせながらの作業になります。

まずはじめに、ラットを仰向けの状態で固定(保定)します。

直接手足にピンを刺すのを避けるため、テープでラットの手足を巻き、その切れ端にピンを刺して保定しました。

こうしてみると、ラット……ドブネズミは、サイズが大きいです。

ラットはマウス(ハツカネズミ)に対してサイズが大きいだけでなく、知能も高く、心理系の実験で利用されることも多いそうです。

 

いよいよ刃を入れます。

切り開いたあとに、飛び散った毛が臓器に付着することのないよう、予め毛にアルコールを吹きかけて湿らせておきます。

ピンセットでへそのあたりを持ち上げ、ハサミでその表面に切れ込みを入れます。

とくに毛のある動物はピンセットでつまみにくいので、この場合は有鈎(ゆうこう)ピンセットというものを使います。

これは、先端に「かぎづめ(鈎)」がついたピンセットであり、つまみやすくなっている、というものです。

切れ込みを入れたところから更にハサミをいれ、上は喉元まで、下は生殖器付近まで、内臓はもちろんのこと肉や血管も傷つけずに、一番表面の皮だけを切り開きました。

切り開く最中、ラットは痛そうに反り返ったり、口元をパクパクさせたりしていました。(反射かも知れません)

このようなことが起きたらすぐに教授に報告するよう言われていたので伝えると、

「うん、なんか喋りよるな」

とつぶやき、慣れた手付きで追加の麻酔を注射してくださいました。

「すこし馴染んだらおとなしくなるけん、そうしたらまた始めてください」

そう言い残すと、他の班の手伝いに行きました。

実のところ、このあとも動いたり苦しがったりする素振りを見せるので、もう一度麻酔を打ってもらいました。それでも完全には収まりませんでした。

 

磔刑のような姿で仰向けになっているラット。

その白い毛で覆われた皮は剥がされ、ピンク色の腹部が顕になりました。

指示のとおりに、首のあたりを切り開いていくと、唾液腺や涙腺の奥に気管が見えました。

教えられていたとおり、蝶ネクタイのように甲状腺がついています。

今の僕達では名前を覚えるだけで精一杯ですが、将来的には機能や関連するものの名前まで覚えられるようになりたいと思いました。

 

器官をチェックし終わると、今度は今見えているピンク色の膜を切り開いていきます。

先ほどと同じ要領で切れ込みを入れますが、今度は傷つきやすい内臓が近くにあるので、かぎづめのない無鈎ピンセットを用います。

以外にも膜は薄く、穴が空くとその隙間から臓器が垣間見えました。

膜を切り開きます。

皮を切るときも思いましたが、「血管」さえ気をつければ、生きた個体をこれほどまでに切り開いても、あまり血は出ないということに驚きました。

このような例えをしていいものか非常に(非情に)はばかられるのですが、イメージは魚の下ごしらえに似ています。

しかし、どちらも対象を「もっとも丁寧に扱う」ということを大切にしているので、あながち僕のイメージは間違っていないのではないか、とも思います。

実際に外のグループを見渡すと、血管を傷つけてしまったのか、何枚も何枚もティッシュを取り出し、溢れ出る血液を拭き取る姿も見られました。

 

無事に臓器に出会うことができました。

胸骨より下の部分しかまだ見えていませんが、大きく赤黒い肝臓や、人間のものより遥かに発達した盲腸など、興味深いものがたくさんありました。

また、当たり前と言ってしまえばそうなのですが、そのどれもが配布資料のスケッチと同じ姿をしているのも、なんだか不思議な気分になりました。

 

さて、ここからは先程より荒い操作が必要になってきます。

心臓・肺を観察するため、肋骨を切ります。

真ん中の太い骨を中心に肋骨が左右に広がっている姿は人間のもので想像できると思います。

今回は、左右それぞれの真ん中あたりを切り開き、中に入った心臓と肺をチェックします。

硬いので先程よりもハサミにかける力は必然的に強くなりましたが、難なく切断。

自動車のハッチのように開くと、そこには小さくても必死に動く心臓、若いものにはついている(らしい)胸腺、そしてその奥の肺がありました。

 

このあとは各臓器を摘出して観察しますが、生きたまま臓器を切り取るとなると、いくら麻酔がかかっているとはいえその苦痛は計り知れないものです。

このような「動物に著しい苦痛が伴う」と判断されたとき、我々は「安楽死」させてあげなければなりません。

この「安楽死」の基準(〇〇したら~。であったり、心拍が〇〇を下回ったら~。のような)のことを「人道的エンドポイント」といい、動物実験をする際は必ず実験前に定めておかなければならないそうです。

この場合のエンドポイントは「胸骨を開いたら」、といったところでしょうか。流石にこのあたりの判断は学生にはできないということで、指導者のアシストが入りました。

 

先生方が各テーブルにおいでになり、「安楽死」を始めます。

方法は、「放血」。

麻酔をかけたもとで心臓付近の動脈、そしてももあたりの動脈を切り、大量出血により失血死させる方法です。

一見苦しそうな方法に感じますが、かなり急速に死なせることができるそうです。

「パチン」、という音とともに壮絶な量の血が溢れ、たしかにその瞬間、せわしない呼吸や痙攣はピタリと止みました。

おつかれさま。

 

血が流れたあともその前も、血液特有の鉄のような匂いはせず、むしろ生魚のような生臭さがありました。マスクをしていたから、わからなかったのでしょうか。

 

安楽死の後に、真っ先にやるべきは「生きた精子の採取」です。

精子はオスの体内にある清掃で作られ、その生命は宿主の生命に直結しています。

つまり、宿主が死んですぐに観察しなければ、生きた状態の(動いている)精子を観察できなくなってしまうのです。

急いで、かつ丁寧に、精巣の下の部分である「精巣上体尾部」という場所を切り開き、中から精子を取り出してガラスの上に載せ、顕微鏡で観察します。

しかし、結果は失敗。

途中でもたもたしてしまったので、精子は死んでしまいました。

生きた状態のものは他班の顕微鏡で観察することができました。

 

その後は、「雄の生殖器」「雌の生殖器」「精子」「摘出した肝臓」「摘出した肺」の5つをスケッチし、実習終了。

実験器具を洗い、実験で出たゴミや、ラットの死骸を袋に詰め、処理しました。

本当は16時30分終了予定でしたが、いろいろに時間がかかってしまい、解散したのは17時のことでした。

 

ヘビーでハードなワーク。

心も体も疲れ切ってしまいました。

同じ日に実習を受けたKくんと合流し、お疲れの一杯。

 

 

まだ食べたことのないウマーメシの味です。

花椒が効いていて、ピリッとしていて美味しい!

ファンになりそうです。

こういう変わり種の惜しいところは、好きになっても期間限定だったりすることです。

でも、なかったらなかったですぐ忘れてしまうのですが。

人間とは勝手な生き物です。

 

 

夕食はこんな感じ。

チャーシューと温泉卵。

こんなの絶対美味しいです。

サラダは自家製。

前回余ったサニーレタスにツナ缶をかけ、ドレッシングを回せば出来上がり。

サニーレタスがそのままでも美味しいので、この量があっても余裕です。

 

久しぶりに「鬼滅の刃」の続きを見ようと思いましたが、再生と同時に実家から着信があり、叶わぬ夢となりました。

 

さあ、明日は初めてのバイトのシフトです。

頑張るぞ!!