まあ、以前から自分の精神的な弱さとか気力とかの問題で、中々ペンを持つことが出来なかったのだが。
最近、書類に自分の名前を書くのに微妙な不自由さを感じてきた。
あれっと思って、書類を前にボールペンを握り直した違和感。
ああ、ヘバーデン結節だ。
もう15年くらい前からだろうか、指関節がおかしくなってきたのは。
第一関節、指によっては第二関節も、痒くて痛くてどうしようもなくなって、マッサージしてみたりゴムでキツく縛っては解いて血行を動かしてみたり。
そのうち曲がらなくなってグーが出来なくなって、コンビニのお釣りも掌からこぼれ落ちて。
右手も左手も徐々に、一本ずつ曲げにくくなってはまた別の指が痛痒くなってくる。
「みんな年取ればそうなるんだよ」と、事もなげに母は言うが、ならない人はならないのだ。
ネット検索してみると明確な原因は不明、有効な治療法もなし(外科手術を除く)。普段の生活に大きな支障がなければ我慢するか、と思っていたのだけれど、ボールペンで名前が書けないとは。
いや、正確に言うと書けるのだが線がユラユラして文字が乱れるのだ。
原因に思い当たったらわかった。
ヘバーデン結節により変形した関節の骨が、しっかりペンを握る事を邪魔しているのだ。ペンだこではない、骨の瘤だ。
持ち方を多少変えたらペンタブならなんとかなりそうだが、アナログのペンは同じようにはならないだろう。とは言っても、年中苦しんでた腱鞘炎の事すら忘れるほど漫画を描いていない私が言う事ではないが。
小学生のとき、初のペンで墨汁でケント紙に絵を描いて、ひとりご満悦だったあの頃。
未来は漫画家しか考えられなかったあの頃。
自分にはきっと才能があるんだと思い込んでた痛いあの頃。
まさかこんなに長い事絵を描かなくなる日が来るなんて、微塵も考えなかったあの頃。
恥ずかしくもその眩しさに顔を覆ってしまう現在。
「漫画を描かないってのは、所詮その程度の想いだ」と言っていた、かつて知り合いの漫画家さんがいたっけ。
その人は確かに熱い人で売れっ子だった。
うん、そうかもねーと思いながら聞いていた私は、もうその周辺の方々にはお会いできない。
所詮その程度だったんだなと思われたくないのかもしれないし、現役で頑張ってる人が眩しすぎて自分が嫌になるからかもしれない。
未だに私は漫画が描けないでいる。
背景画なら描けるかもしれないが、人物画はかなりハードルが高い。
ところが内心では漫画に未練を残している。
この先どうなるのかは、本当に不透明だ。
ただ『断捨離』という言葉がどうにも嫌いなので、そんな性格から、未練だけは死ぬまで続くような気はしている。
