直前☆出題予想シリーズ会社法①(株式会社の設立) | 合格への道のり("3つの道"編)

合格への道のり("3つの道"編)

これまで20年以上勤務した国家公務員を辞職し、2022年12月からは受験生、実務家(士業)及び講師の3つの道を歩みますので、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。

皆さん、こんにちは。

リーダーズ総合研究所・講師の板野です。

 

先日実施した行政書士試験受験生向けの質問募集に対して、直前期の出題予想を希望される方が多かったので、この度、対談シリーズの続編として「直前☆出題予想シリーズ」を企画しました。

 

その第1弾として、既に会社法①「株式会社の設立(以下、設立)」に関する資料を取りまとめの上、以下の通りYouTubeにて動画配信しています。

行政書士試験において会社法を苦手とする受験生が多いことは重々承知していますが、苦手というよりも会社法まで勉強の手が回っていないのが実情だろうと思います。一方で、会社法の中でも「設立」は民法親族編・相続編などと比較して遥かに的を絞りやすく短時間で仕上げることができるので、費用対効果が非常に高いです。

 

したがって、設立については食わず嫌いをせず、本動画を参考にして学習を進めて下さい。

 

なお、以下では動画と同じ内容のもの(一部加筆)をまとめましたので、隙間時間などを活用し、動画あるいは以下の記事を御覧になっていただけますと幸いです。

 

  株式会社「設立」に係る出題の特徴

過去10年間の出題傾向

毎年度1問出題される(平成25年度を除く)

⇒ 問題37は「設立」の定位置

 

全て条文に関する問題

⇒ 判例に関する問題は出題されていない

 

9問中7問(約80%)が組合せ問題

⇒ 全ての肢を検討しなくても正解を導くことができる

 

出資の履行、発起人等の責任等及び募集による設立の3つの論点が全体の約70%を占める

⇒ 「論点別出題条文実績(設立)」及び「論点別出題履歴表(設立)」を参照

 

 論点別出題条文実績(設立)

(ポイント)

 出題条文数全52の内、38(約70%)が3分野(出資の履行、発起人の責任等及び募集による設立)

 

※行政書士実務では、定款の作成(定款記載事項)は重要!

※募集設立について、発起設立との比較の観点からの出題

 

 論点別出題条文履歴表(設立)

(傾向)

 平成30年度以前、1肢につき2つ以上の条文知識に関する複雑な問題が多かったが、令和元年度以降、1肢につき1つの条文知識に関する単純な問題となっている。

⇒ 最近の問題は正解しやすいと思われる

 

試験委員の専門研究分野

(作問担当者予想)

山部俊文教授は経済法(独占禁止法)を主な研究テーマとしていることから、会社法の作問者は中曽根玲子教授ではないかと推察される

※氏名、職業は、一般財団法人行政書士試験研究センターHPから、研究分野は、各所属の大学HP(研究者データ)などから各々引用

 

 ①中曽根玲子教授

●学外委員等活動

・2006年4月、行政書士試験センター、行政書士試験委員(商法担当)

●研究分野

会社法、金融商品取引法(資本市場法)

●教員からの(学生宛)メッセージ

 会社法は営利追及の企業のための法律だからという一点だけで、毛嫌いする人がいますが、大学で会社法の講義を受けると、目からうろこの経験をするかもしれません。株式会社の存在如何によっては、私たち一人一人の生活がまさに大きく左右されます。
 会社の営利とは、株主利益の最大化のみでもないし、会社は経営者の持ち物でもありません。とりわけ、株式会社を操る者のモラルや規制は重要で高水準のものが求められています。にもかかわらず、規制緩和という標語の下で、会社法が改正されていますから、従来の理論や解釈を見直し、新たな理論をいかに構築していくのか、その力量が問われています。
(中略)
 会社法はかなりのボリュームですが、柔軟な発想が大事な、面白い法分野だと実感してもらえると嬉しいです。

 

⇒ これは学生宛のメッセージですが、中曽根玲子教授は、会社法は条文数も多くイメージがわかないために毛嫌いする学生(受験生に置き換えても同じ)が多いことを百も承知されています。

 

(出典)國學院大學HP【教員一覧】から引用

 

 ②山部俊文教授

●社会における活動

・2004/4~  行政書士試験委員

●研究テーマ

・経済法・独占禁止法に関する諸問題

●主な著書・論文

・2018/4  著書 独占禁止法〔第6版〕(共著)

・2016/9論文 ジュリスト別冊229号 会社法判例百選[第3版]

          「重要財産の譲渡と特別決議」(最大判昭40.9.22)

 ※会社法判例百選[第4版]においても同判例の解説を行っている

 

(出典)明治大学HP【教員データベース】から引用

 

 

最近の法改正(設立関係)

(平成26年改正)

 資金調達の場面におけるコーポレート・ガバナンス強化の一環として、株式会社の設立に際して出資の履行が仮装された場合における規律が新設(法52条の2関係)された。なお、改正後、計3回出題(以下、下線部)されている。

(出資の履行を仮装した場合の責任等)

第52条の2 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。

一 第34条第1項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払

二 第34条第1項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)

2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

3 発起人が第1項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

4 発起人は、第1項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第2項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第65条第1項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。

5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

 

(払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任)

第102条の2 設立時募集株式の引受人は、前条第3項に規定する場合には、株式会社に対し、払込みを仮装した払込金額の全額の支払をする義務を負う。

2 前項の規定により設立時募集株式の引受人の負う義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

 

出題数ベスト3条文(最後はこの条文!)

1位 会社法37条(計5回)

 

 2位 会社法53条(計4回)

  同   会社法55条(計4回)

   4位 会社法27条、52条の2(計3回)

   6位 会社法25条、34条、52条 他(計2回)

 

(私見)

☑出題数1位の37条は令和4年度に出題された

☑出題数2位の53条は令和3年度に出題された

⇒ 令和5年度は同率2位の55条が出題されるのではないか

 (平成30年度の出題以降、出題されていない!)

 

 会社法条文別出題実績(設立)

 

 出題数ベスト3条文集

(発行可能株式総数の定め等)

第37条 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

2 発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。

3 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

 

(発起人等の損害賠償責任)

第53条 発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 発起人、設立時取締役又は設立時監査役がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(責任の免除)
第55条 ①第52条第1項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務、②第52条の2第1項の規定により発起人の負う義務、同条第2項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務及び③第53条第1項の規定により発起人、設立時取締役又は設立時監査役の負う責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

【本条による総株主の同意で免責される責任】

①出資された財産等の価額が不足する場合の責任

②出資の履行を仮装した場合の責任等

③設立時における任務懈怠責任

 

 

発起人等の設立時における任務懈怠によって第三者に損害が生じた場合、当該賠償責任は総株主の同意があっても免責されない!

 

  会社法出題予想(設立編)

●発起人等の責任等(全3問)

(優先順位1)55条を題材とした問題

  ⇒ 平成30年度行政書士試験問題

(優先順位2)52条~54条を題材とした問題

  ⇒ 令和3年度行政書士試験問題

 

  + (他資格)令和2年度司法書士試験問題

 

●設立に関する総合問題(全3問)

(優先順位3)定款の作成及び出資の履行、募集による設立を含む総合問題

  ⇒ 平成28年度行政書士試験問題

 

  + (他資格)令和5年度司法書士試験問題

  + (他資格)令和2年度司法試験予備試験問題

 

他資格の問題にチャレンジ!

 令和2年度司法書士試験問題

問題27 発起人等の責任に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 募集設立の場合には,株式会社の成立の時における現物出資財産の価額が当該現物出資財産について定款に記載された価額に著しく不足するときであっても,当該現物出資財産の給付を行った発起人以外の発起人は,その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは,当該株式会社に対し,当該不足額を支払う義務を負わない。⇒×(103条1項、52条2項)

イ 株式会社の成立の時における現物出資財産の価額が当該現物出資財産について定款に記載された価額に著しく不足する場合には,定款に記載された価額が相当であることについて証明をした弁護士は,当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明したときを除き,当該不足額を支払う義務を負う。⇒○(52条3項)

ウ 発起人がその引き受けた設立時発行株式につきその出資に係る金銭の払込みを仮装した場合において,当該発起人が株式会社に対し払込みを仮装した当該金銭の全額の支払をする義務は,総株主の同意がなければ,免除することができない。(55条、52条の2第1項)

エ 発起人がその引き受けた設立時発行株式につきその出資に係る金銭の払込みを仮装した場合には,当該発起人以外の発起人であってその出資の履行を仮装することに関与した者は,その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときであっても,株式会社に対し,払込みが仮装された当該金銭の全額の支払をする義務を負う。(52条の2第2項)

オ 発起人がその引き受けた設立時発行株式につきその出資に係る金銭の払込みを仮装した場合において,当該発起人が株式会社に対し払込みを仮装した当該金銭の全額の支払をしたときは,当該金銭の額は,その他資本剰余金の額に計上される。(会社計算規則21条1号)

 

 1 アイ   2 アエ    3 イオ   4 ウエ   5 ウオ

 

(解法のポイント)

●肢ア・イの正誤判断のみで解答できる問題

⇒ 肢アを×と判断した時点で正解肢は「1」「2」に絞られ、肢イが○と判断できるので、正解肢を「2」と選択できる

●肢オは会社計算規則からの出題であってやや細かい知識

正解:2

 

令和5年度司法書士試験問題

問題27 次の対話は、株式会社の設立に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

教授: 今日は、株式会社の設立に関する会社法の規定について検討しましょう。まず、会社法上、株式会社の設立時の資本金の最低額についての規定はありますか。

学生:ア はい。株式会社の設立時の資本金の額は、300万円を下回ることはできません。⇒×(最低資本金制度は平成18年改正で撤廃)

教授: ところで、法人や未成年者は、発起人となることができるでしょうか。

学生:イ 会社法上、法人は、発起人となることができますが、未成年者は、発起人となることはできません。(発起人の資格に制限はなく、法人や未成年者も発起人となることができる)

教授: 発起設立の場合には、発起人は、割当てを受けた設立時発行株式について、現物出資をすることができますが、募集設立の場合はどうでしょうか。

学生:ウ 会社法上、募集設立の場合には、発起人でない設立時募集株式の引受人は、割当てを受けた設立時募集株式について、現物出資をすることはできません。⇒○(58条1項3号、63条1項)

教授: それでは、払込金の保管証明について、発起設立の場合と募集設立の場合とで異なる点はありますか。

学生:エ 会社法上、発起人は、発起設立の場合も、募集設立の場合も、払込取扱機関に対し、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができます。(64条1項)

教授: 最後に、会社法上、株式会社の成立についてはどのように規定されていますか。

学生:オ 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立するものとされています。(49条)

 

 1 アイ    2 アウ    3 イエ    4 ウオ    5 エオ

 

(解法のポイント)

●肢ア・ウの正誤判断のみで解答できる問題

⇒ 肢アを×と判断した時点で正解肢は「3」「4」「5」に絞られ、肢ウが○と判断できるので、正解肢を「4」と選択できる

●肢イは会社法に明文の規定はなくやや細かい知識(肢ア・イのみでは正解肢を選択できない)

正解:4

 

令和2年司法試験予備試験問題

〔問題16〕

 株式会社の設立に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.各発起人は,設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。⇒○(25条2項)

イ.設立時募集株式の引受人が払込期日又は払込期間内に設立時募集株式の払込金額の全額の払込みをしていないときは,発起人は,当該払込みをしていない設立時募集株式の引受人に対して,期日を定め,その期日までに当該払込みをしなければならない旨を通知しなければならない。⇒×(63条3項【当然失権】)

ウ.発起人がその出資に係る金銭の払込みを仮装することに関与した設立時取締役が,株式会社に対し,払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払をしたときは,出資に係る金銭の払込みを仮装した設立時発行株式について,設立時株主及び株主の権利を行使することができる。(102条3項【設立時株主及び株主の権利を行使できるのは引受人であって設立時取締役ではない】)

エ.設立時募集株式の引受人が設立時募集株式の払込金額の払込みを仮装した場合において,当該引受人が株式会社に対して負う払込みを仮装した払込金額の全額の支払をする義務は,総株主の同意によっても,免除することができない。(102条の2第2項)

オ.判例の趣旨によれば,株式会社の設立の際,発起人による出資の履行がいわゆる見せ金によって仮装されたものであったにもかかわらず,出資の履行が完了したとして商業登記簿の原本である電磁的記録に資本金の額の記録をさせた行為は,電磁的公正証書原本不実記録罪に当たる。(最決平17.12.13)

 

 1.アイ   2.アオ   3.イエ   4.ウエ   5.ウオ

 

(解法のポイント)

●肢ア・イの正誤判断のみで解答できる問題

⇒ 肢アを○と判断した時点で正解肢は「1」「2」に絞られ、肢イが×と判断できるので、正解肢を「2」と選択できる

●肢オはやや細かい判例知識であり、肢イの正誤判断ができないと正解するのが難しい問題

正解:2