※ 6月25日(日)のことです。
平熱、血圧も通常通り、手術した方の胸は表面がしびれて何も感覚がありません。
でも、腫れもなく自分でいうのもなんですが、とても綺麗でした。
(← これが全て、油断の原因でした)
当初の予定通り、退院。
病院から家まで、タクシーに乗ってもいいかと思っていたのですが、思いのほか、気分が良くて、リハビリをかねて電車で帰ることにしました。
(← 思えば、ここで最初の無理をしました)
病院から最寄り駅までは3分ほどの道のり。荷物が入った小型のスーツケースを引いて、電車に乗り、乗車の間(ほんの10分ほど)は、満員だったので立っていました。
手術をした胸は柔らかなブラのみなのでとても心許なくて、人に押されないように注意しながら、右腕で胸を庇っていました。
最寄り駅から自宅までも歩きで。ただ、普段は5分ほどで着くのですが、歩くと胸に響くので、ゆっくりとしか歩けず、倍ほど時間がかかりました。
帰宅後、シャワーを浴びるとき、じっくりを胸を見ました。
傷口は外から見ると縫い目もなく、乳輪の外側に半円状に一筋、切ったんだろうという後があるだけ。それも縫わずに手術用セメンダインで止めているだけなので、正直、すごい手術をしたという感覚がありませんでした。胸を見た母も「え~全然、手術したって言われないとわからない」というほどだったのです。
(←その後、無理をしてしまった最大原因)
翌日から、溜まっていた仕事に取りかかりました。
在宅でPCでできる仕事です。手術前に渡していたものの手直しがあって、一日数時間、PC作業を行いました。
(←無理の一つ)
1週間ほどして、手術跡の青あざ(内出血の後)がかなりくっきり浮き出てくるようになってきて、同時に手術した皮膚の感覚が戻ってきました。
それにつれて、鈍い痛みが出てきて、天気が悪いと(台風が来た時など)、シクシクと痛みだし、そういうときは、お守り代わりの痛み止め(ロキソニン)を飲んでやり過ごしていました。
ただ、リハビリとして歩いた方がいいとは言われていたので、夕方の涼しいときを選んで、積極的に家の周りを20分ほど歩いたりもしていたのです。
7月頭、楽しみにしていた歌舞伎を観に行きました。手術が無事終わることを願って、絶対これを観に行くんだと思って、購入していたチケットでした。
「駄右衛門花御所異聞」海老蔵さんと勸玄君の宙乗りで話題になった舞台です。
私の手術が終わったとき、最初に目にしたのが「麻央さんの逝去」という悲しいニュースだったことは以前にも書きましたが、舞台を拝見しながら、彼女に思いを馳せました。
どんなに無念だったことでしょう。どんなにこの舞台を観たかったことでしょう。
愛らしい勸玄君を抱き上げる悲壮な海老蔵さんの心中を思い、今、生かされている自分のことを思いながら、精一杯、拍手を送ったのでした。
(←銀座まで行ってすぐに戻っては来たのですが、思えばこれもかなりの無理でした)
退院後は、一回り大きい冷蔵庫に買い換えたこともあり、うれしくなって、買い出しにも出かけました。近所のスーパーにカートを引いて、あれこれと。
(←カートだからいいやと思っていたのですが、これはもう本当にやってはいけないことでした)
無理を重ねてしまった報いは、術後2週間経過後、買い物の次の日ぐらいから現れ始めました。胸が妙に張るようになったのです。
脇のすぐ横のリンパ節も腫れている感覚があって、ものすごく不安になりました。
(この頃は、身体に少しでも腫れや痛みがあると……もしや転移? なんてことが頭をよぎり、落ち着きませんでした)
ネットで調べると、「術後、傷口を治すために白血球が頑張っているから、リンパ節が腫れることがある」とのこと。心配はいらないみたいですが……でも、もしリンパ節に転移していたら、と思うといてもたってもいられません。
通常は乳がんの手術の際、リンパ節転移の可能性を疑って、センチネル生検(患部に一番近いリンパ節の細胞を取って検査する)をするようですが、私の場合は不要だと言われて受けていなかったのです。
本当に受けなくてよかったんだろうか……
そんなことを思っているうち、だんだんと胸が痛くなってきました。
だいぶ腫れているし、触ると熱い感じがする。
どうしよう…… 先生の次の検診までは10日以上あります。
痛み止めを飲んで少し安静にしていたら、そのうち収まるのでしょうか。
悩みつつ、一日一日を過ごしていました。
そして……7月10日(月)朝、
起きて胸を見ると、手術をしたほうの胸がしていない方より、断然大きくなっていました。
腫れているし熱いし、赤くもなっています。
もう我慢しきれなくなって、病院に電話を入れました。
ブレストセンター直通の電話で、すぐ看護師さんが出てくれました。
痛いし腫れていると訴えると、「水がたまってる感じですか?」と問われました。
水? 水なんだろうか、これ……。
答えられずにいると、すぐに、「わからないですよね。すぐ来られますか? カルテを出してお待ちしていますから」と言われました。
もちろん、診てもらえるのならとすぐに用意をして、病院へ飛んでいったのでした。