※ 6月23日 手術直後のこと……
術後、胸の痛みは思ったほどではありませんでした。
麻酔が効いているのかもしれません。麻酔医グッドジョブです。
痛みといえば、点滴パックのルートを確保した左手の甲ぐらいのものでした。(といって、液漏れが起きているということではなかったんですが)
しばらくすると、付き添ってくれていた母が、点滴パックが終わりそうだとしきりに気にし始めました。
「空気が入ったらどうするの? ほら、もう看護師さん呼ばなくちゃ」って感じで。
いや、呼ぶほどのこともないだろうと構えていたら、案の定、看護師さんが別の点滴パックを持ってやってきてくれました。(彼女は入院中度々お世話になった看護師さん。ひよっこのみね子ちゃんみたいな感じの人です)
みね子ちゃんの後ろには白衣を着た若い、まだ二十代半ばぐらいの女性(女医だろうか?)がついて来てました。
「点滴交換しますね。今日はもう一パック、これで終わりですから」
愛想良くきびきびとみね子ちゃんが点滴パックの交換を始めました。
「あの、これ(点滴)って、何が入ってるんですか?」 ←なんとなく気になって訊いてみました。
「えーっと……私よりも彼女の方が、新人ですけど薬剤師なので彼女の方がよくわかるかと」 と、みね子ちゃんは、後ろの白衣の女性に目をやりました。
ああ、なるほど、女医さんかと思ったら、新人の薬剤師さんが見学してたわけね。
教育的見地から、みね子ちゃんは話を振ったわけです。
「じゃ、教えて」 と、新人さんへと顔を向けたのですが、彼女、返事をしてくれません。
しかも目が合ったのに、すぐにさっとそらしたではありませんか。
みね子ちゃんも彼女から返事がないので、微妙な間があって……、
「水分補給なんですよね」と、代わりにすまなさそうに答えてくれました。
「で、成分は? 生理食塩水みたいなもの?」
はっきりと新人さんに向けて問いかけたんですが、またもや無言スルーされちゃいました。
しかも、みね子ちゃんの私への処置が終わり、他の患者さんへ向かうと、彼女も無言でそれに続いていくではありませんか。
みね子ちゃんは忙しいからそれでいいけど、はぁ?? なんなんだ、この子は。
で、そのまま、帰っちゃったよ! え? ええ~~。
母も、「何あの子?」と驚いた声を上げました。「女医さんかと思ってたのに」
だよね~~。もしかして、わからなかったから、聞きに帰ったのかな。もう少ししたら、言いに来てくれるのかな?
でも、結局待てど暮らせど、来ないまま時間だけが過ぎていき……
16時すぎ母が帰った頃です。
またみね子ちゃんが様子を見に来てくれました。後ろには先ほどの新人さんもいます。
でね、なるべく……っていうか、とてもにこやかに(嫌みにならないように注意して)訊いてみました。
「これ、何かわかった?」
私にしては、本当に優しい声で訊いてみたつもりでした。
すると、するとどうでしょう。
な、なんと……
彼女はキャハと笑ったのです。
キャハですよ、キャハ。 すみませんも、わかりませんでしたも、ごめんなさいもなく……
ただ、口に手をあてて、キャハ。
たぶん、私、目が丸くなっていたと思います。
みね子ちゃんが「宿題だね」と新人に向かって言っても、うんともすんとも言わないんです。
心ここにあらずっていうか、叱られていることがわかってないっていうか。
しかも、みね子ちゃんがあれこれ処置している間、テレビへと視線をチラチラ。
(TVでは、海老蔵さんの涙の会見が流れてました)
思わず、テレビを切ろうかと思ったぐらいです。でも、できませんでした。文句も言えなかったんです。だって、逆恨みされて、点滴に変なもの入れられたら恐いですもん。
『ああ、面倒だなぁ。このおばさん、しつこく質問するし、早く帰ってテレビみたいのに……』
なんて、彼女の心の声が聞こえてくるみたいな感じでした。
そして、とうとうその日、新人薬剤師はキャハの後、何も言葉を発しないまま、帰って行ったのでした。
茫然…… なんだぁ、ありゃ!
ゆとりか、あなた、ゆとりなのか! (いや、ゆとりを一括りに論じるのはいけないとわかっていますよ、すごく良く気が回る人もいるでしょうしね。でも、でもね……)
薬剤師でしょ。何が入って、どういう効果があるのか、説明するためにいるんじゃないんですかね。
そのために高い学費払って勉強してきたんじゃないのか!
人様の命を預かってるんじゃないのか!
御年93歳の佐藤愛子先生だったら、絶対ぶち切れでしょ。これ。
この後すぐに待ちに待った夕食だったんですが、もうムカついちゃって。
それにしても、術後最初の夕食がマカロニグラタンて、ないわ~~。
普通おかゆだと思うんだけどなぁ。野菜がほとんどない割にしっかり丼飯もついてきたし。
医者も看護師も環境もとっても優秀なのに、ここのネックは食事と新人薬剤師キャハ子でした。
追伸:その後、キャハ子が私の前に現れることはありませんでした。