「安いものでプレゼントされて嬉しいものってなんですか?」

もうすぐ奥さんの誕生日らしい高橋くん(彼は田代くんと同部所の男の子)がわたしにそう聞いてきた。

安くて嬉しいものね・・・

わたしはしばらく考えて
「やっぱりビールかな(笑)」
って答えた。

「やっすいなー(笑)それでいんすか?」

「だってさー、今貰うなら嬉しいのはお酒~。一緒に飲んでさ、まったりしたい。疲れてるから(笑)」

「マジすか~(笑)」


欲しいものねー・・・
プレゼントのやりとり、誕生日とかクリスマス、記念日などなど。
そういうことは昔に散々した。


若いときはプレゼント選ぶのもドキドキしたりして、もらうのも もちろん嬉しかったよ。
今もね、もちろん嬉しいよ。


でもさー
欲しいもの、ない。


プレゼントされたいなーってものが思い付かない。


多分。
欲しいもの、自分で買えちゃうからかも。
物欲、あんまりないせいもあるかも。


そういう余計なことは言わないけど、
高橋くんと欲しいもの談義を楽しくしていた(仕事しろよ(笑))ら、田代くんが来て
「どうしたんすかー?」
って話に混ざってきた。


田代くんだ、わーいって思ったけど
それは得意の平常心、平常心。


高橋くんの欲しいものの話になって(なにが欲しいか聞いたけど忘れた(笑))、じゃあ田代くんは?って。



「欲しいものかー」


「そうそう」


「オレは・・・」


顔をすっと上げてわたしを見た。
っていうか、数秒間 見つめあった。


「彼女かな」


そういって
ニコッて笑った。



え・・・・


な、なんなの?!


今の・・・・



なに!?
なになに!?



まさか、バレてる?
いやいや
そんなはずはない。


ほんとに、
ひっそりと、
勝手に片想いしてるだけだもの。


わたしの気持ちなんて知るはずないっしょ。
だってさー
彼女になりたいって思ってる訳じゃないんだよ?


ただただ。
好きなだけなんだよ!?



だ、大丈夫。
わたしの気持ち、絶対にバレちゃいけない。


「彼女いないんだねー、田代くんならすぐ出来るよ~」


そうすぐに切り返してみた。
大丈夫、大丈夫。
バレてないバレてないって言い聞かせて。
あなたに気持ちなんかないわよって感じで。


「誰か紹介しようか~?」
まで言ったと思う。
焦ってさ、なにを話したか覚えてないんだけどさ。


とりあえず
「じゃあ今度一緒に飲みに行きましょう」
って感じで解散した。


でも田代くんは
「キリタニさん」
ってわたしのところに少しだけ戻って。


「紹介とかいらないですから(笑)」


そう言って笑ったんだ。




・・・・・・。


一瞬なに言ってんのかわかんなかった。




けど、今の・・・・。



な、なに?!


まさか・・・
まさかだけど・・・・



わたしの気持ちに気づいてる?!




確認なんて出来ないし。
だって告白する気なんてないんだよ?
彼女になりたいとかじゃないんだよ?



気持ち、バレてる?



どないしよ~~~~~!!!!















「もうやだ~~~~!帰りたいよ~~~」

そう小さく叫びながら残務処理をするわたし。
定時はとっくに過ぎて、残業すること1時間半。
残っているのはわたしを除いて先輩二人。

「よし、これで最後!」
「片付けてきまーす」

大きなワゴンを押して、エレベーターを降りて。
薄暗い廊下(定時を過ぎると主要な廊下以外は消灯されてしまう)を通る。

くそー
みんな帰りやがって・・・
あーでも、これさえ片付ければ帰れるし・・・

廊下の突き当たりは田代くんの部所。
もしかしたら会えちゃう?
なんて、少しだけ期待しながら進む。


けど。


やっぱり電気消えてるし、みんな帰ったよなー。
残念。
まぁ、そんなラッキーはないかな。


よし、片付けてしまおう。
電気が消えている部屋を横目に、わたしは持ってきた荷物を片付ける。
ちなみに用があったのは田代くんの部所のお隣の部屋だ。

重い荷物を片付けて、ワゴンは置きっぱなしでいいって言われたからそのままにして・・・


よっしゃ、終わり!!!


夕飯何にしよっかなー
ビールないから買って帰んなきゃなー


なんて帰りモードでそんな事を考えながら後ろ手にドアをしめた瞬間
ガラッ
「うわっ」
「あ・・・」
開くと思っていなかった隣の部屋のドアが開いた。


「お疲れ様です(笑)」
くすくす笑う私服の田代くんがそこにいて。

「マジでびっくりした・・・」
色んな意味で驚いているわたし。
(人間マジで驚くとキャーなんて可愛い声出ないよねー・・・)


「電気消えてたし、誰もいないと思ってたから・・・びっくりした・・・今から帰るの?」

「そうなんですよ。自分だけ終わんなくて。でももう帰ります」

「いーなー」

「キリタニさんはまだ帰れないんすか?」

「帰りたいよ~泣」

「あはは(笑)お疲れ様です(笑)」

「外雨降ってるから気を付けてね」

「はい(笑)」


今日の田代くんの私服は、白いVネックのTシャツにチャコールグレーのパンツ(裾がきゅっと縮まってるやつ)、足元は黒のスニーカー・・・
あ~可愛い。
わたしが着たら寝巻きっぽくなるな(笑)


もうちょいお喋りしたいけど、そろそろ自分の部所に戻んなきゃな・・・

「じゃあ気を付けてね」

「あ、キリタニさん。」

「ん?」

「差し入れとかしたら貰ってくれますか?」

「え!なんかくれんの??」

「あはは(笑)貰い物なんすけど」

「わーい!なになに?」

田代くんは手にしていたビニール袋をがさがさして。
「はい」
って黒いパックを差し出した。


「あんこ玉じゃん」
中身は舟和のあんこ玉。
しかも、2個ほど減ってた(笑)

「貰っていいの?」

「はい。あ、間違えた。こっちだ」

そういって手にしていたパックをビニールに戻して、手をつけていない(と、思う)パックを出した。


「食べかけくれんのかと思ったよ(笑)」

「さっき腹減って食ったんすよ(笑)」

二人でくすくす笑って。
それから
「じゃーね」
「頑張ってください」
って言い合って別れた。



「どうしたの、それ」
「田代くんから貰った~」
「若い子から食べ物強奪してくんなよ(笑)」
「強奪してないし(笑)」
「違うよね~田代くんからの愛の差し入れでしょ?(笑)」
「そう、それだ!愛の差し入れ(笑)」


笑って答えたけど・・・。
でもね、強ち冗談ではないんだな。


先輩はもちろん知らないことだけど。
田代くんとお喋りした事で
わたし、テンション上がって元気になったよ。
残業の疲れだって癒されたよ。


だから
愛の差し入れに間違いないよね。



次に会えたら
あんこ玉ありがとう、元気になったよ
って言うんだ。
またよろしくねって。


でも・・・
舟和なら
あんこ玉よりも芋ようかんの方が好き。



なんて言いません(笑)









片想いって・・・



楽しい!!!


だってさ
会えただけで上がる~
話せたらもっと上がる~
のだもの!!!


彼が欲しい・・・とか
独占したい・・・・とか


全く思わない(笑)


もうね、一通り(いや、何通りも?)経験しちゃったから。
煩わしいことはめんどくさい。


もともと執着心がなく
他人にあまり興味もなく
自分至上主義的な部分が多いのがわたし。


巻き込まれたくないし
巻き込みたくない。
一定の距離が必要なの。


だからこそ片想い最高~(о´∀`о)


恋愛感って十人十色だもの。
そんな片想いの恋愛を楽しむのもありだよね。




今日は仕事中に見かけなかったけど。
帰りの階段で私服の田代くんと出会った(笑)


忙しさのあまり へっろへろ~で ボッサリーノのわたし。
「おつかれさま~・・・」
「あ~・・・お疲れ様です(笑)」
すれ違い様に挨拶は交わしたけれども。

言葉尻が笑いを含んでたのは気のせいじゃないはず!
くっそ~
明日は化粧直しして帰ろう。うん。

あ!
そういえば。
眼鏡かけてた!!

もしかして、いつもはコンタクトなの!?
うそーーー(*´∀`)知らなかったーーーー!
眼鏡、超かわいいじゃん。
ハリーポッターみたいなやつかけてたな。
明日会えたら聞いてみよう。
ついでに私服も可愛いかったなー。
グレーのTシャツに焦げ茶のパンツ(相葉丈)、黒のサンダル~
お洒落さんだわー

ん?
お洒落眼鏡?!
きゃーーーーヾ(o≧∀≦o)ノ゙


ほらね、片想いは楽しい。