brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「期末課題はある程度片づいてきたのですが、今回もなかなかしんどい課題が多いです。誰でも良いのでドラえもんを呼んできてくれる方はいないでしょうか。。。」

 

以上、届かぬ願いでした。今回はMUCCの14thアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」をレビューする回です。曲数は9曲とミニアルバムとも取れる曲数ですが、公式ではひとつのフルアルバムとしてカウントされています。そんな今作はタイトル通り、吉田トオル氏を期間限定メンバーに加えキーボード面のアップデート、そしてリビングデッドされた楽曲を収録。メジャーから離れて、インディーズへ。公開レコーディングや限定シングルの発売など、かなりファンへ向けての音楽を届けようと画策するMUCCが繰り出すこのアルバムには果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか。

 

アルバム「壊れたピアノとリビングデッド」のポイント

 

・今作は「ホラー」と「ピアノ」にスポットを当てたコンセプトアルバム。期間限定メンバーとして加入したキーボードの「吉田トオル氏」と共に制作されたアルバムとなっており、ピアノ・オルガンに対するアプローチを強く意識した楽曲が多いです。バンドサウンド中心のナンバーでもキーボードの彩りがかなり凝っているのでそこも注目して欲しいですね。

 

・今作に収録された楽曲は全て新曲ですが、全てテイクアウト音源とのことです。実際に過去の没トラックから探し出して採用した楽曲もあるとのことですね。しかし前作から2年のもブランクが空いており、ライブではやっていたけど音源化していなかった楽曲など様々な所からの音源が採用されたらしいです。

 

・さらには今回、編曲だけに留まらずミックス作業までミヤが担当したとのこと。かなり大胆なミックスをしている箇所もあり、注文されて全体的なバランスを気にしながら作業していくエンジニアさんと頭で浮かんだ楽曲の世界をミックスを使ってどう表現すればいいか手探りで作業していくアーティストとの楽曲に生まれるミックスの感覚の違いが明確に表れていて面白いですよ。

 

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(黒→アルバム曲)

 

1.「壊れたピアノ」(作曲:ミヤ)

 

今作のアルバムタイトルその①。かなり久々なインストナンバーとなっております。吉田トオル氏が奏でるピアノですが、まさに怖い話とかに出てきそうな調教の狂ったようなピアノの音色を表現。ここにずっといると気分がおかしくなりそうなくらい、ピアノの不気味さを表現しています。中盤からはドラムスとオルガンが混ざり少しポップになるのですが、完全にネジが外れたようなはっちゃけっぷりが更に不安を煽ります。

 

2.「サイコ」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ・YUKKE)

 

楽曲はYUKKEとミヤの共作ということで、展開に展開を重ねる楽曲を得意とする2人が担当。ギターロックナンバーを中心に展開していきますが、ヘヴィ要素あり、禍々しいメロディラインあり、癖のあるメロが響き渡るBメロの展開パターンもありというキメラのようなカッコ良さがあるV系ナンバーです。

 

歌詞は父の不倫がきっかけで両親が離婚し、恵まれない環境で育って歪んでしまった子供視点で展開。語尾が幼なくしたりと子供らしさ全開で綴ったリリックだからこそ、くっきりと見えてくる生々しさに震えます。このような運命にさせた神様にむけて「サイコ」と叫ぶシーンもなかなか辛いです。

 

3.「アイリス」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

大きく二つの展開に分かれていて、前半はスカを中心としたバンドサウンドをバックにひたすらボソボソ喋るという「リスキードライブ」や「ハニー」パターンを展開、今思うとこの無理やりラップを入れ込む感じってかなり斬新ですよね。サビ以降はシャウトが響き渡り音も更にヘヴィなるお馴染みのMUCCワールドを堪能することができます。この2つのギャップを続けて味わうことができる絶妙な楽曲ですね。

 

アイリスの花言葉には「希望」「信じる心」という華やかな言葉達の一方、「失望」や「復讐」といった恐ろしい言葉も綴られていて、この曲では後者の意味合いで使われています。大好きだったあの娘がいじめなど精神的な攻撃を受けて自殺してしまい、主人公の深い悲しみと怒りが溢れ出るリリックは、近年更に酷くなっていて、しまいには真実をはぐらかしたり隠蔽工作まで行ういじめ問題を連想してしまいます。

 

4.「ヴァンパイア」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

頭から癖の強い曲が続いてきましたが、ここでポップな楽曲が登場。このアルバムのコンセプトのような、吉田トオル氏のピアノやオルガンが彩るナンバーです。どうやら、「THE END OF THE WORLD」のアウトテイクだったこのことで、そのことを踏まえて聴くと、確かにあの凍てつくシリアスな世界観の片鱗を感じます。

 

V系王道のファンタジアなリリックですが、MUCCはこういう系統の楽曲はあまり作っていない印象なので、新鮮味が強いです。歌詞はヴァンパイアに魅了されて、どんどん彼の眷属に堕ちていく女性目線で展開。やはり達瑯の女性目線の歌詞って最高だなって思いながらクレジットを見たらなんと作詞もミヤが担当していたので、驚きを隠せませんでした。ミヤが女性目線の歌詞を手掛けるのもおそらくこの曲が初めてじゃないですかね。色々な意味で新鮮味の強いナンバーです。

 

5.「In the shadows」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

メンバー全員が一曲ずつ楽曲を持ち寄ったシングル「時限爆弾」のアウトテイク。この曲もサビ前がミクスチャー要素を強く押し出したサビ前と激しいヘヴィロックに変貌するサビ以降の強いギャップを堪能することができる楽曲です。重苦しいリフで攻めた後にぼそっと小さな声で「スイッチ」って囁いてから更に暴れる部分がツボでした。

 

歌詞は禁断の恋をしてしまった事きっかけで、処刑されることになってしまった想い人と主人公。処刑されるまでの経過を描きつつ、来世でまた遇えることを祈る内容となっております。そう考えると楽曲の展開も歌詞のストーリーの展開によってスイッチが切り替わる感じも素晴らしいですね。

 

先程も書いたのですが、この曲は「時限爆弾」のアウトテイク。インタビューによると、本来はYUKKEの曲をレコーディングする予定だったのですが間に合わず、代わりにこの曲をレコーディングを済ませてしまったのでかなり完成度が高くなりYUKKEにとってはかなりハードルも高くなってしまったとのことです。このエピソードを知ることで、それでも懸命に曲を創り上げ、最終的にはこの曲を押しのけて収録された「マゼンタ」の再評価にも繋がるのではないでしょうか。

 

6.「積想」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

公開レコーディングへ向けて制作されたナンバーですが、1発録り向きではないということでアウトテイクとなったナンバー。公開レコーディングではYUKKEの「メルト」という曲が採用され、デモテープとして会場販売されたそうです。

 

吉田トオル氏のピアノかと思いきや、なんとピアノを弾いているのはミヤ。決して簡単ではない譜面を華麗に弾きこなすピアノを中心にしっとりとシリアスに展開していく逹瑯のバラードです。サビではヴァイオリンの音色も加わり楽曲の切なさが更に広がります。壮大に展開していく感じに、懐かしのフォークソング感があって、かつて達瑯が制作した「砂の砂丘」を思い出させます。

 

7.「百合と翼」(作詞:SATOち・達瑯 作曲:SATOち・ミヤ)

 

SATOちが作詞・作曲を担当した楽曲は、今作ではありそうでなかったハードロックナンバー。やはりメロディラインの素直さと聴きやすさ、そこに安心感を感じられるのがSATOち曲のポイントですよね。バンドサウンドが中心となり展開するこの曲の要所要所でクサメロソロを聴かせてくれるギターソロですが、どこか異国感が漂うのもポイントです。

 

歌詞は悲しみにまみれて1人じゃ空も飛べない状況だけど、貴方と一緒になら空へ飛べるという前向きなリリックが印象的。そのリリックを達瑯が力強く追い風のように歌い上げるので、より歌詞のメッセージ性が極まっているなと思いました。

 

8.「カウントダウン」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

アニソンタイアップを狙って制作されたというこの曲ですが、かつての「謡声(ウタゴエ)」「フライト」を彷彿とさせる綺麗すぎるポップロックなので、クレジットを見るまでSATOちの曲だとずっと思っていました。途中で少々ヘヴィなゾーンに入り、ご丁寧にカウントダウンまで入るので、そこからシャウト&デスボイスが響き渡りヘヴィロックと化すいつものパターンが来るかと思いきや、まさかまさかの本来のポップロックへ軌道修正したので、かなり驚きました。

 

歌詞は、悲しみや闇を蹴散らして前へ前へ突き進んでいけという応援歌となっております。難しい言葉を使わず、ストレートな言葉達で綴られているので、より幅広い人達へ向けて制作したという意欲が伝わりますね。

 

9.「Living Dead」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

今作のアルバムタイトルその②。達瑯のバラードでこのアルバムはフィナーレを迎えます。この感じも「6」を彷彿とさせる感じがしていいですね。ピアノ中心にバンドサウンドも重なり展開していくのですが、このバンドサウンドがかなり重くのしかかるのです。まるで大嵐のように溢れる感情を達瑯のヴォーカルが乗り、1つの曲になりました。

 

「リビングデッド」は「死後に再び活動を始めた死体」とのことで、まさに今回収録された楽曲全てに共通するワードです。歌詞は、アーティストとしての達瑯の決心が綴られています。

 

 

いかがだったでしょうか。「リビングデッド」した楽曲もジャンルにおいてかなりバランスが良く、更にはピアノ系統のアプローチやミヤの初となる女性目線の歌詞、そしてアーティスト視点のミックスなど、これまでになかった実験的な部分も目立ったアルバムでした。個人的にはどこか「6」に重ねてしまう部分も多かったです。

 

さて、次回は現在のMUCCの要素がとことん凝縮されたといえる、ボリューミーな「惡」のレビューです。よろしくお願いします。