進行を止める卓越したALS治療薬はいつ出てくるのか?
失った機能を取り戻す薬の誕生を期待することは非現実的な考えだろうか?
昨日10月7日午後に行われた東邦大学主催のオンラインイベント「ALSカフェ」でプレゼンされたベッドラック教授に、その場でオンラインのQ&Aを使って聞いてみました。内容をシェアさせていただきたいと思いました。
昨日のALSカフェ、途中から参加してみました。プレゼンを聞きながら思いついた質問をプレゼンターであったデューク大学のベッドラック教授へ、そして名古屋大学の山中教授にもその場で質問を送ってみました。
下記がベッドラック教授への質問です:
“Dr. Bedlack, thank you very much for the great presentation. You said there wouldn’t be a remarkable cure in the next couple of years, but in your view, how close are we to have a remarkable cure or drug to really stop the progression? Also, would there be a drug someday we can expect that we can recover the functions and strength we have already lost? Would that be possible? would like to know your view Sir.”
日本語訳:「ベッドラック教授、先ほど卓越した治療薬はこの1、2年では出てこないと発言されましたが、いつになったら進行を停止させるような卓越した薬が出てくるのでしょうか?そのような薬に我々はどのくらい近づいているのでしょうか?そして既に失った機能を取り戻せるような薬が、いつの日かでてくることを期待することは出来るのでしょうか?教授のお考えを教えてください」。
How close are we?
どれだけ近づいているのか?英語での表現ですが、気持ちのこもった聞き方です。
ベッドラック教授はアメリカが夜中ということもあり、ご自身のプレゼン後退席されたのですが、退席前にオンライン上で以下のお返事をいただきました。何故か司会の方が紹介することは無かったのですが、次の通り、スクリーンショットしています:
訳すと:
「もっと顕著に進行遅延させる薬は2~3年以内に出てくると考えています。最終的には機能回復をさせる方法を見つけたいのですが、そういった薬は5年以上かかるかもしれません。」
ベッドラック教授について過去に何度も紹介させていただいていますが、同氏は米政府、製薬会社へのアドバイザー、ALS治療研究の主要な大学教授陣とのネットワーク、患者団体とつながっており、彼の耳には常に最新情報が入っています。質問する相手として最もふさわしい人物の一人のはずです(例えば同じ質問を日本の先生にしても意味がない、ということです)。
私の解釈は:
- リルゾール、ラジカット、レリブリオの効果、即ち3ヵ月、7カ月の進行遅延といったレベルを超えるALS治療薬がこの2,3年内に出る可能性が高い
- 既に失った機能を回復させる薬を望むことは間違いではない
- 機能回復の薬が出るには5年以上かかる「かも」しれない。ということは5年内にでてくることも考えられる。
というものです。ポジティブに認識出来ます。この2、3年内にもっと強力な治療薬が誕生すると考えている。更には機能回復を期待することは間違っていない。2,3年では無理でも5年位でそういった薬が開発されるかもしれないということです。これは意味のあるお返事でした。失なわれた運動ニューロンや筋肉は通常戻らないのではないか?というのが私の理解であり懸念点でした。これについてはどんな文献をみてもはっきりした情報がないからです。完全に戻らなくても少しでも機能回復すれば助かります。
過去の記事で何度も書かせていただいていますが、わたしはアメリカが5年以内に治療薬を開発すると見ています。過去にも紹介させていただいた米政府の実行計画書の存在や現在行われている治験の数、治験の進め方、全体の動きから感じるものです。私にとってベッドラック教授の回答はこれを精査する意味があるものです。
繰り返しになりますが、日本政府はEAPのシステムを完備させることが肝要です。この制度があればアメリカで第2相をパスし迅速承認の対象になった新薬をタイムラグなしに日本の我々も即開始できます。ラジカット経口薬はアメリカの認可から約一年後に日本で認可されています。トフェルセンやレリブリオも同様です。既にアメリカで認可されているのに、日本の我々は不透明に待たなければいけないのです。こういったタイムラグが無いようにしなければいけないのです。一年の間に一体何人の患者が亡くなっていくのでしょうか?一ヵ月で180人亡くなりますから、一年で2,160人です。
以上がベッドラック教授への質問と回答です。
山中教授には、
「山中先生、TDP-43のご説明ありがとうございます。先日の日経新聞で武田薬品さんが米ベンチャーのアキュラステムと契約し、TDP-43の異常タンパク質を抑える「AS-202」を開発中で、孤発性を対象にしているようです。「AS-202」についてどう思われますでしょうか?有望ですか?なにかご存じでしたら教えてください。宜しくお願いします。」と送ってみました。
最後のセッションで反応がありました。「これさっき誰かチャットで質問してたよね、AS-202の件、」といった反応だったと思います。「今後こういう薬がどんどん出てきます。AS-202は異常タンパク質を細胞から外に出す働きをします」というコメントでした。「私は上流(川上という意味だと思う)の基礎研究をしている者なので、AS-202については中村教授がもっとご存じではないか?」といったコメントもありあました。有望と思われるかどうかを聞きたかったのですが、あっ知ってるよ、それ。的なコメントでしたが、ポジティブなトーンでした。プレゼンも勉強になる有意義なものでした。
もう一つ得た情報があります。案内からは気がつかなかったのですが、徳島大学の和泉教授があるセッションの座長として参加されていたのです。最後、その和泉教授に大量メコバラミンの状況について誰か質問をされたのだと思います(良い質問です)。和泉教授のお返事は来年早々新薬認可の申請を行う、迅速承認扱いで来年内に承認されると思う、ただその後薬価設定等で患者に届くのは5カ月かかると思う、といった内容だったと思います。要は患者に届くのは2025年の中旬と解釈できます。
2022年5月22日のエーザイさんのプレスリリースでは2023年内に申請と書いてあるので、少し遅れている状況と理解できます。ですが、特例申請でもっと早く進めるべきではないか?というのが私の見解ですが、そのためには日本ALS協会のような団体が働きかけないといけないのですが、ここが機能してないのが問題です。
その他、ALSカフェでは、同病患者さん2名のご紹介もありました。素敵なお二方でした。岸本さんと畠中さんという方だったと思います。いつかお会いしたいと思いました。東邦大学のこのオンラインイベント「ALSカフェ」、非常に良い取り組みだと思います。改善点はあるかもしれませんが、行うことが大事なので、素晴らしいです。youtube で公開されるといいと思います。
以上です、
ベッドラック教授について過去の記事:
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