ALS患者は世界にどれくらいいるのか?

 

グーグルで「世界のALS患者」で検索すると、「世界のALS患者数は推計40万人、毎年5,600人がALSと診断されています。」 と書いてあるページがでてきました。40万人は納得しますが、毎年「5,600人が診断」という数字は明らかにおかしい。少なすぎる。(おかしいサイトこちら→ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000009993.html。インターネット上にはこういう間違ったデータも多く存在するのでそれを見極めることが必要です(一方で私が見る限り大学の論文にはそういった間違いは無い)。これ以外でも混乱するデータが散見されたので、今朝から1時間くらい検証しながら、情報を集めていくうちに自分で試算するに至った次第です。アメリカ、日本も検証のため試算し、人口が一番多い中国も興味があったので試算してみました。ちなみに、有病率(prevalence)と、発生率(incidence rate)の違いですが、有病率は現段階の患者総数が人口に対してどれくらいかを見るものです。もしくは現段階の患者総数からその率をみるものです。それに対し、発生率は新規診断者数からみる値(率)という理解です。

 

試算結果:

結論:

  • 世界のALS患者は45万6千人、新たに毎年診断される人は15万4千人
  • 日本は 11,349人、アメリカは 29,610人日本はアメリカの約1/3(人口と比例)。
  • ALSの患者数45万人をどうみるべきか?例えばHIV患者数と比べると少ないです。HIVは2019年のデータで、世界のHIV陽性者数は3800万人、新規HIV感染者数は年間170万人、エイズによる死亡者数は年間69万人。HIVの新規感染とALSの新規診断を比較するとALSは約1/10 という見方もできると考えます。
  • こうやってみると、中国はALS患者が世界一なので、どんな治療研究成果を上げているのか、ちょっと気になります。
 

試算するにあたり、発生率と有病率は先進国と開発途上国で異なるべきと前提を立てました。先進国の有病率と発生率(発症率)は日本神経学会の文献を参考にしました。それによると「日本における ALS の発症率は,1.1〜2.5 人/10万人/年,有病率は 7〜11 人/ 10 万人と推計される」とあったので、それぞれ中央値をとり発症率は.1.8人/10 万人/年、有病率は9人/10 万人/年としました。それに最新の人口のデータをかけると、日本においてはALS患者が11,349人となりました。同じ発症率、有病率前提をアメリカの人口にあてはめると米国の患者数は29,610人となり、それはジョンホプキンズ大学のサイトにある、患者数3万人とほぼ同じになりました(インターネット上は米国の患者数は2万人とする情報もありました)。開発途上国の発症率と有病率はALS News today の文献の数字を参考にしました。先進国と開発途上国の内訳(比率)は2:8で、これはJETROのデータを参考にしました。

 

参考にしたデータ:

 

 

 

 

 

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4987527/
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/als2013_01.pdf

https://www.jica.go.jp/jica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/field/pdf/200607_soc_01.pdf

 

 

以上です。