桜の花が咲き始めた 暖かな午後

都会の真ん中にある大きな公園は

家族連れや恋人達であふれ

幸せが漂っていた



芝生で寝転がり子供とボール遊びをする父親

走り回っている子供達

お弁当を食べる恋人達

昼寝をする赤ん坊


自分はそんな人たちの写真を撮っていた


ベンチでフィルム交換を終え、体を預けるように座っていると

一人の女性が目の前を通り過ぎた

淡いブルーのシャツが軽やかに揺れながら通り過ぎた



思わずカメラを構えピントを合わせ彼女の後ろ姿を撮る


「こっち向いて」


ファインダー越しに彼女につぶやいた



風が吹き手に持っていた紙を飛ばす

振り返り小走りで紙を追いかる

地面にジッとした紙を拾い上げる


コマ送りのような場面

シャッターを切り続けた


顔をあげる彼女

カメラから視線を外す自分


目が合う

ばつが悪いが軽く会釈する

彼女も困ったような顔で軽く頭を下げた


「こんにちは」


そう声を掛けようとした時

彼女は歩き出してしまった


なんとなく置いてきぼりにされてしまった感じがする

でも、ここには数分前の彼女がいる


自分の手の中にあるカメラには彼女がいる

カメラに入っている27枚のフィルムは全て彼女だ

早く現像して彼女を見たい



少し雲が出てきた午後

鞄を肩に掛け駅へ走った