第100回箱根駅伝 展望 | エゾシカスポーツ新聞社社説

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100回目を迎えた記念大会。

昨年を除き、ここ何年も年に1回の投稿になってしまっているが、私自身専門としている陸上長距離最大のイベント・箱根駅伝だけは今後もよほどのことがない限り継続して予想を記しておきたい。

今年は10位までが順位予想(順位は多少の前後はあるかもしれないが、順位を上につけているチームほど力上位と考えているイメージ)。

それ以降は、「10位シード争いに絡む力があると考えるチーム」「シードは難しいが、シード以下の中では上位(10位台前半)に来る力があると考えるチーム」として評価している。

 

 

 

優勝 駒澤大学(昨年優勝、今年度:出雲優勝、全日本優勝)

 

出雲、全日本と、一度も首位を譲ることなく完全優勝を果たした。

藤田敦駅伝監督のオーダーの組方を見れば、前任の大八木監督に比べて前半に重きを置いている印象だ。

特に、2区、3区とスタート区間に続く区間にエース級を連続投入してくる傾向にあり、今回の箱根は鈴木芽吹と佐藤圭汰で、今年のチームの双璧をなす二選手だ。

1区を首位で襷を渡せれば、そのまま他校に付け入る隙も与えずに箱根路を一人旅する姿が濃厚となってくる。

三大駅伝を、一区間たりとも首位を明け渡さずに三冠達成となると、過去に例がないのではないだろうか。

死角は全く見当たらず、もはや勝ち方に焦点が集まってきさえするほどの強さを発揮し、今年も駒澤が箱根を制することだろう。

 

 

2位 青山学院大学(昨年3位、今年度:出雲5位、全日本2位)

 

初優勝から四連覇したときほどの圧倒的な強さはなくなったものの、それ以降も常に箱根優勝争いの中心に座る青学。

近年は、全区間を通して見ると「でこぼこ駅伝」となることが多く安定感こそやや欠くものの、はまった区間で一気に追い上げて先頭争いに加わるという駅伝の戦いぶりだ。

距離が長い駅伝ほど、はまったときの挽回・爆発力の効き目があり、三大駅伝でいえば箱根路がチームとして最も力を発揮できる舞台であろう。

昨年度、山(5区、6区)で流れをつかめなかった反省を生かしてか、今年はハーフマラソンの持ちタイムチームナンバー1の若林を5区に配置。

6区には、今年度絶好調の黒田を配置してくるかもしれない。

山で駒澤からおいて行かれないようにしたいという意図が読み取れ、山をうまく乗り切れ、7区以降で少しでも駒澤が見える位置につけられれば、駒澤からすると最も嫌な存在になるだろう。

 

 

3位 國學院大学(昨年4位、今年度:出雲4位、全日本3位)

 

ここ四、五年の國學院を見て毎年感心するが、箱根で外す選手が非常に少ない。

前田監督の調整力のすごさを感じるとともに、チームとして箱根にピークを持ってくるノウハウが確立されているのだろう。

2区はエース平林。

確実に区間5位以内の実力を持ち、万一1区がそれほど振るわなかったとしても、ここで必ず順位を上げてくるという計算が成り立つ。

5区には、昨年も山上りを経験している伊地知を当日変更で、また6区にも、当日変更で山本歩夢の起用があるかもしれないと見ている。

昨年、1区で出遅れたのと、6、8、9区で沈んだことが祟り、一度も首位争いに加わることはなかったが、終わってみればレース中で最も順位を上げてゴールを迎えた。

駒澤が頭一つも二つも抜けていることは間違いないが、國學院は堅実なレースぶりを毎年見せるチーム力から、かならずや上位4校には入ってくるだろう。

 

 

4位 中央大学(昨年2位、今年度:出雲7位、全日本4位)

 

出雲は1区の出遅れが響き、距離の短い駅伝の中、挽回する暇もなく終わってしまった印象だ。

それに比べ、全日本はチームとしての状態が出雲のときよりは上がり、エース吉居大和のブレーキにもかかわらず4位まで最終的には順位を上げてきたのは、自力がある証拠だ。

その全日本で精彩を欠いていたエース吉居大和が、この箱根では最初から2区にエントリーされた。

状態が戻ったのであれば、往路では駒澤に迫る可能性が最も高いのが中央だ。

ただ、湯浅、白川の当日エントリー変更での投入の可能性が高いものの、復路が若干不安なことから、差し引いて4位とした。

それでも、上位4位以内に入ってくる可能性はかなり高く、駒澤を追うグループを形成することは間違いないだろう。

 

 

5位 城西大学(昨年9位、今年度:出雲3位、全日本5位)

 

昨年、予選会から勝ち上がり、10区間4年生の出走がゼロで見事9位とシードを久々に獲得した。

その経験と、今年度の出雲、全日本の好走で、この箱根でも勢いに乗って上位新種を果たしたい。

当日の変更で2区にはキムタイ、3区に斎藤、7区に林が起用されるのではないか。

1区で出遅れなければ、常にシード権内でレースを進められるだけの力はある。

赤のユニフォームが久々に前方に位置し、二年連続のシードはおろか、久々の上位進出があるかもしれない。

 

 

6位 (昨年8位、今年度:出雲2位、全日本6位)

 

外国人留学生はいるが、それに頼らなくとも力のある日本人選手が多い。

昨年箱根路を走った4年生6人が抜けたものの、ここ最近の箱根路の活躍もあってか以前よりはスカウトで選手が集まるようになり、選手層が厚くなったこともあり、昨年からの戦力ダウンはなく、むしろ充実してきた感さえある。

ただ、全日本は全体的に不調気味の選手が多く、それを新加入の東海からの転入生・吉田響が一発で流れを変えた。

その吉田は、東海時代も好走した5区に起用される。

周囲からいろいろな雑音があると思うが、それをシャットアウトする走りができるかどうかにチームの浮沈がかかっている。

 

 

7位 早稲田大学(昨年6位、今年度:出雲6位、全日本10位)

 

4年生の1万メートル27分台を持つ選手たちが抜け、昨年からの戦力ダウンは否めない。

ただ、普段からトラックよりもロードに重きを置いているチームなので、長いロードほど力を発揮してくる傾向にある。

全日本では、校長区間と不調区間がくっきりと分かれ、最終的な順位は不調区間が響いて10位にとどまってしまった。

それらを走った選手が今のところ区間エントリーの主に復路を占めているが、調子次第ではそれに代わって走る選手もいて、レギュラー、補欠誰が出てもそれほど戦力落ちは考えられない。

例年、山を走る選手をしっかりと作ってくる印象だったが、昨年は逆に山でリズムを失った。

5区に当日変更で起用が濃厚な伊藤が、昨年度の反省を生かして山を乗り切ってくるだろう。

 

 

8位 東洋大学(昨年10位、今年度:出雲8位、全日本14位)

 

かつては10年連続で箱根3位以内を誇るなど、駒澤と並んで平成の駅伝強豪校と言われた東洋だが、近年はジリ貧気味だ。

ただ、昨年も事前の予想ではシードも危ないと見ていたのが、なんとかシード権内にとどまったように、距離の長いロードほど「駅伝力」を発揮してくるチームの伝統がある。

かつての設楽兄弟や、相澤といった一発で展開を変えられるような絶対的なエースがいなくなった。

今年度も絶対的なエースは不在だ。

ただ、珍しく酒井監督が「2区は松山を考えている」と言ったという記事を見たように、監督の中では松山がエースであり、彼と心中する覚悟すら持っているのだろう。

佐藤、村上、小林、緒方といった大学駅伝で出走経験のある選手を補欠に回していることから、調子のよい選手を当日の変更で使ってくるのだろう。

駅伝巧者ぶりが、今年もシード権内にとどまる力を発揮すると見た。

 

 

9位 大東文化大学(昨年16位、今エ年度:出雲不出場、全日本7位)

 

昨年に引き続き、予選会を首位で通過した。

ただ、昨年と違うのは、全日本大学駅伝で7位に入賞し、来年のシードを獲得したことだ。

また、外国人留学生・ワンジルが怪我で予選会に出場できなかったにもかかわらず、日本人選手だけでの首位での予選通過は、チームにとっては自信となったことだろう。

気勢が上がり、この箱根を迎えられることは大きい。

その勢いに乗って、一気に久しぶりの箱根のシードを獲得できるか。

久保田、ワンジル、入濱、菊地、佐竹、大谷と、昨年の箱根を経験した選手が多数残っている。

2区には日本人エースの久保田を入れている。

控えに回っているワンジルが走れるのであれば、1区だろう。

あわよくばトップで鶴見中継所に飛び込み、シード獲得に向けて幸先のよいスタートを切りたい。

 

 

10位 法政大学(昨年7位、今年度:出雲9位、全日本不出場)

 

昨年は1区で3位と絶好のスタートを切り、その後順位を落としたものの往路を8位で踏ん張った。

そして、復路は5区間中4区間で区間順位が一桁の好走を見せて、復路で順位を上げて総合7位に入った。

伝統的に復路で落ちにくい学校だが、今年もそれなりに選手層があり、前半でミスがあっても復路で取り返すだけの力はある。

4区に宮岡、6区に武田、9区に小泉あたりを当日の変更で起用してくることが考えられる。

 

 

10位シード争いに絡む力があると考える学校

 

明治大学(昨年12位、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

全日本大学駅伝の予選会で10位となり、7位までが出場権が得られる関東予選会を通過できなかった。

そのことで、山本佑樹前駅伝監督が辞任し、山本豪新監督に箱根予選会わずか2か月前に監督が交代するという非常事態に陥った。

ただ、山本豪氏は2003年から20年にもわたってコーチを務めてきて、チームの内情をよく知るだけに、影響は最小限にとどまった。

例年、全日本のシード権を確保する好走を見せると、その反動からか箱根では低調に終わるなど、選手個々の持ちタイムや大学入学時の力からすると、期待を大きく裏切る結果を重ねてきた。

ただ、今年は全日本に出場できなかったことが、箱根への準備については好循環となり、選手によっては予選会、世田谷ハーフ、上尾ハーフの中の2本のハーフマラソンを走るなど、トラックレースへの出場をある程度数を絞ってでもハーフの距離やロードに対する対応力を例年よりはつけてきた印象だ。

来年以降のエース・2年生森下は往路の控えを兼ねて補欠に回っているようだが、おそらく4区に当日変更で起用されるだろう。

復路は、古井、山本、尾崎あたりを当日変更で7区、10区に起用してくるだろう。

シード復権でチーム強化の流れをよくするには、最後の機会かもしれない。

 

 

順天堂大学(昨年5位、今年度:出雲10位、全日本11位)

 

昨年まで主力を担ってきた4年生が多数抜け、その穴はエース三浦だけでは埋めきれておらず、そのままチーム力の低下となっている。

三浦を1区に配置し、何が何でも序盤に流れを呼び込む作戦は、危機感の表れだ。

それだけ苦戦は免れないと陣営も見ているのだろう。

往路は区間エントリーメンバーそのままの起用も考えられるが、なんとか往路でシード権内の順位を確保できれば、復路は森本、藤原、内田など力のある選手や調子のいい選手を当日変更で総動員してシードを守りにくることだろう。

 

 

東海大学(昨年15位、今年度:出雲不出場、全日本9位)

 

予選会を3位で通過した全日本大学駅伝は、シードまであと一歩の9位と、久々に光が見えた。

初優勝を果たした前後は、毎年上位グループに数えられていたが、近年は有力選手の退部などで層が薄くなっていた。

だが、今年は久々に選手が揃い、ここ数年の中では一番粒揃いだといえる。

往路の出来次第でシード権内で粘りこむか、あるいは復路でシード権内に盛り返すかという、どちらかといえば復路重視のオーダーを組むことができた。

上位進出は難しいが、10位のシード争いが終盤まで6~7校くらいに可能性があるなどもつれればもつれるほど、力を発揮してシード権内に滑り込んでくる確率が上がると見ている。

 

 

シードは難しいが、シード以下の中では上位(10位台前半)に来る力があると考えるチーム

 

神奈川大学(昨年不出場、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

今回の箱根予選会で、日本人選手としてはトップ、全体13位の小林を筆頭に、個人100位以内の選手が4人出た。

その中の宮本、佐々木が控えに回っているが、必ずやどこかでの当日変更での起用があるだろう。

昨年箱根本線を走れず、今年度も全日本大学駅伝に出場できていないなど、大学駅伝から二年遠ざかっている経験不足が懸念されるが、シード以下の10位台では上位に来る力はある。

 

 

山梨学院大学(昨年14位、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

予選会は、通過校中最下位とやっとのことで本戦に駒を進めたが、3年生以下にも次年度以降育ってきそうな選手が多く、留学生の力と嚙み合えば楽しみなチームだ。

 

 

帝京大学(昨年13位、今年度:出雲不出場、全日本12位)

 

昨年は、全10区間のうち8区間で二桁順位を喫するなど、浮上の気配すらないままシードを落としてしまった。

それまでであれば、復路に強いチームで往路が少し悪くとも、復路で堅実に盛り返し最終的にシード権内に上がってくる粘りのチームという印象だったが、その粘りがなくなってしまった。

1区にはこの区間スペシャリスト小野の当日変更での起用があるか。

昨年は1区で16位に沈んでしまい浮上のきっかけを失ったが、今年はどうだろう。

いずれにしても厳しい戦いは避けられない。

 

 

 

チームとしてシード争いができるとは正直考えていないが、なんといっても楽しみなのは東農大のスーパールーキー・前田の走りだ。

エース区間の2区を任されるのかと思いきや、補欠に回っている。

1区か、スピードを生かしての3区の起用だろうか。

 

昨年は、1区の序盤で各校の選手たちが牽制し合い、スローペースでレースは始まった。

そんな中、関東学生連合の育英大学の1区新田が飛び出してペースが途中から上がる形になったことは記憶に新しい。

今年は、三浦(順大)や、場合によってはワンジル(大東大)が当日変更で入ってくることが考えられるが、どうか。

ある程度のペースで流れれば、やはり力上位の学校が有利になり、もしもスローで展開するようなことがあれば、前評判の高くない学校が序盤上位につけることも大いに考えられ、その分、シード争いはより混とんとしてくる。

 

往路当日は、雨が少しパラつく時間帯もあるようだが、おおむね曇りから晴れで、風も弱く気温も10度前後と、走りやすい天気のようだ。

元日から能登地震が起こり、開催に不穏な空気が流れたこともあった。

そういう意味では今後も印象に残り語り継がれる大会になるだろう。

しかし、開催する以上は、選手たちには誰に遠慮することなく競技に集中していただき、見ている人たちも全力で応援できるさわやかな空気を、かかわる人、見ている私たち全員が共有できるような大会になってもらいたい。