エゾシカスポーツ新聞社社説

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スポーツ観戦の展望や感想、考察を中心としたコラム。

他にも、ブログとして筆者の日常や北海道ならではの気候や大自然に触れた北国の生活に関する話題も満載。コラムとブログの二本立てです。

冬は氷点下20℃以下にもなる凍てつく北の大地。国内のスポーツ紙で最も寒冷の地に本社を構える『エゾシカスポーツ新聞社』(もちろん架空)。最も日付変更線に近い地から、スポーツ界の最前線の話題を、自称・スポーツライターのエゾシカが独自の切り口で理論的に、時には熱く綴ります。


【2009年2月8日追記】


御来訪、誠にありがとうございます。いつも遊びに来てくださっているお客様は既にご存知のことと思いますが、当ブログへのコメントやゲストブックへの投稿は、開設当初から承認制とさせていただいています。昨今のブログをめぐる情勢から、本日改めてお知らせいたしますとともに、これから初めてコメントをくださる方はご理解くださいますようお願い申し上げます。なお、承認制を告知いたしましたのでそのようなコメントはないかと思われますが、万一、掲載は不適当と筆者の方で判断せざるを得ない内容のコメントが投稿された場合には、削除させていただきますので、ご了承ください。

100回目を迎えた記念大会。

昨年を除き、ここ何年も年に1回の投稿になってしまっているが、私自身専門としている陸上長距離最大のイベント・箱根駅伝だけは今後もよほどのことがない限り継続して予想を記しておきたい。

今年は10位までが順位予想(順位は多少の前後はあるかもしれないが、順位を上につけているチームほど力上位と考えているイメージ)。

それ以降は、「10位シード争いに絡む力があると考えるチーム」「シードは難しいが、シード以下の中では上位(10位台前半)に来る力があると考えるチーム」として評価している。

 

 

 

優勝 駒澤大学(昨年優勝、今年度:出雲優勝、全日本優勝)

 

出雲、全日本と、一度も首位を譲ることなく完全優勝を果たした。

藤田敦駅伝監督のオーダーの組方を見れば、前任の大八木監督に比べて前半に重きを置いている印象だ。

特に、2区、3区とスタート区間に続く区間にエース級を連続投入してくる傾向にあり、今回の箱根は鈴木芽吹と佐藤圭汰で、今年のチームの双璧をなす二選手だ。

1区を首位で襷を渡せれば、そのまま他校に付け入る隙も与えずに箱根路を一人旅する姿が濃厚となってくる。

三大駅伝を、一区間たりとも首位を明け渡さずに三冠達成となると、過去に例がないのではないだろうか。

死角は全く見当たらず、もはや勝ち方に焦点が集まってきさえするほどの強さを発揮し、今年も駒澤が箱根を制することだろう。

 

 

2位 青山学院大学(昨年3位、今年度:出雲5位、全日本2位)

 

初優勝から四連覇したときほどの圧倒的な強さはなくなったものの、それ以降も常に箱根優勝争いの中心に座る青学。

近年は、全区間を通して見ると「でこぼこ駅伝」となることが多く安定感こそやや欠くものの、はまった区間で一気に追い上げて先頭争いに加わるという駅伝の戦いぶりだ。

距離が長い駅伝ほど、はまったときの挽回・爆発力の効き目があり、三大駅伝でいえば箱根路がチームとして最も力を発揮できる舞台であろう。

昨年度、山(5区、6区)で流れをつかめなかった反省を生かしてか、今年はハーフマラソンの持ちタイムチームナンバー1の若林を5区に配置。

6区には、今年度絶好調の黒田を配置してくるかもしれない。

山で駒澤からおいて行かれないようにしたいという意図が読み取れ、山をうまく乗り切れ、7区以降で少しでも駒澤が見える位置につけられれば、駒澤からすると最も嫌な存在になるだろう。

 

 

3位 國學院大学(昨年4位、今年度:出雲4位、全日本3位)

 

ここ四、五年の國學院を見て毎年感心するが、箱根で外す選手が非常に少ない。

前田監督の調整力のすごさを感じるとともに、チームとして箱根にピークを持ってくるノウハウが確立されているのだろう。

2区はエース平林。

確実に区間5位以内の実力を持ち、万一1区がそれほど振るわなかったとしても、ここで必ず順位を上げてくるという計算が成り立つ。

5区には、昨年も山上りを経験している伊地知を当日変更で、また6区にも、当日変更で山本歩夢の起用があるかもしれないと見ている。

昨年、1区で出遅れたのと、6、8、9区で沈んだことが祟り、一度も首位争いに加わることはなかったが、終わってみればレース中で最も順位を上げてゴールを迎えた。

駒澤が頭一つも二つも抜けていることは間違いないが、國學院は堅実なレースぶりを毎年見せるチーム力から、かならずや上位4校には入ってくるだろう。

 

 

4位 中央大学(昨年2位、今年度:出雲7位、全日本4位)

 

出雲は1区の出遅れが響き、距離の短い駅伝の中、挽回する暇もなく終わってしまった印象だ。

それに比べ、全日本はチームとしての状態が出雲のときよりは上がり、エース吉居大和のブレーキにもかかわらず4位まで最終的には順位を上げてきたのは、自力がある証拠だ。

その全日本で精彩を欠いていたエース吉居大和が、この箱根では最初から2区にエントリーされた。

状態が戻ったのであれば、往路では駒澤に迫る可能性が最も高いのが中央だ。

ただ、湯浅、白川の当日エントリー変更での投入の可能性が高いものの、復路が若干不安なことから、差し引いて4位とした。

それでも、上位4位以内に入ってくる可能性はかなり高く、駒澤を追うグループを形成することは間違いないだろう。

 

 

5位 城西大学(昨年9位、今年度:出雲3位、全日本5位)

 

昨年、予選会から勝ち上がり、10区間4年生の出走がゼロで見事9位とシードを久々に獲得した。

その経験と、今年度の出雲、全日本の好走で、この箱根でも勢いに乗って上位新種を果たしたい。

当日の変更で2区にはキムタイ、3区に斎藤、7区に林が起用されるのではないか。

1区で出遅れなければ、常にシード権内でレースを進められるだけの力はある。

赤のユニフォームが久々に前方に位置し、二年連続のシードはおろか、久々の上位進出があるかもしれない。

 

 

6位 (昨年8位、今年度:出雲2位、全日本6位)

 

外国人留学生はいるが、それに頼らなくとも力のある日本人選手が多い。

昨年箱根路を走った4年生6人が抜けたものの、ここ最近の箱根路の活躍もあってか以前よりはスカウトで選手が集まるようになり、選手層が厚くなったこともあり、昨年からの戦力ダウンはなく、むしろ充実してきた感さえある。

ただ、全日本は全体的に不調気味の選手が多く、それを新加入の東海からの転入生・吉田響が一発で流れを変えた。

その吉田は、東海時代も好走した5区に起用される。

周囲からいろいろな雑音があると思うが、それをシャットアウトする走りができるかどうかにチームの浮沈がかかっている。

 

 

7位 早稲田大学(昨年6位、今年度:出雲6位、全日本10位)

 

4年生の1万メートル27分台を持つ選手たちが抜け、昨年からの戦力ダウンは否めない。

ただ、普段からトラックよりもロードに重きを置いているチームなので、長いロードほど力を発揮してくる傾向にある。

全日本では、校長区間と不調区間がくっきりと分かれ、最終的な順位は不調区間が響いて10位にとどまってしまった。

それらを走った選手が今のところ区間エントリーの主に復路を占めているが、調子次第ではそれに代わって走る選手もいて、レギュラー、補欠誰が出てもそれほど戦力落ちは考えられない。

例年、山を走る選手をしっかりと作ってくる印象だったが、昨年は逆に山でリズムを失った。

5区に当日変更で起用が濃厚な伊藤が、昨年度の反省を生かして山を乗り切ってくるだろう。

 

 

8位 東洋大学(昨年10位、今年度:出雲8位、全日本14位)

 

かつては10年連続で箱根3位以内を誇るなど、駒澤と並んで平成の駅伝強豪校と言われた東洋だが、近年はジリ貧気味だ。

ただ、昨年も事前の予想ではシードも危ないと見ていたのが、なんとかシード権内にとどまったように、距離の長いロードほど「駅伝力」を発揮してくるチームの伝統がある。

かつての設楽兄弟や、相澤といった一発で展開を変えられるような絶対的なエースがいなくなった。

今年度も絶対的なエースは不在だ。

ただ、珍しく酒井監督が「2区は松山を考えている」と言ったという記事を見たように、監督の中では松山がエースであり、彼と心中する覚悟すら持っているのだろう。

佐藤、村上、小林、緒方といった大学駅伝で出走経験のある選手を補欠に回していることから、調子のよい選手を当日の変更で使ってくるのだろう。

駅伝巧者ぶりが、今年もシード権内にとどまる力を発揮すると見た。

 

 

9位 大東文化大学(昨年16位、今エ年度:出雲不出場、全日本7位)

 

昨年に引き続き、予選会を首位で通過した。

ただ、昨年と違うのは、全日本大学駅伝で7位に入賞し、来年のシードを獲得したことだ。

また、外国人留学生・ワンジルが怪我で予選会に出場できなかったにもかかわらず、日本人選手だけでの首位での予選通過は、チームにとっては自信となったことだろう。

気勢が上がり、この箱根を迎えられることは大きい。

その勢いに乗って、一気に久しぶりの箱根のシードを獲得できるか。

久保田、ワンジル、入濱、菊地、佐竹、大谷と、昨年の箱根を経験した選手が多数残っている。

2区には日本人エースの久保田を入れている。

控えに回っているワンジルが走れるのであれば、1区だろう。

あわよくばトップで鶴見中継所に飛び込み、シード獲得に向けて幸先のよいスタートを切りたい。

 

 

10位 法政大学(昨年7位、今年度:出雲9位、全日本不出場)

 

昨年は1区で3位と絶好のスタートを切り、その後順位を落としたものの往路を8位で踏ん張った。

そして、復路は5区間中4区間で区間順位が一桁の好走を見せて、復路で順位を上げて総合7位に入った。

伝統的に復路で落ちにくい学校だが、今年もそれなりに選手層があり、前半でミスがあっても復路で取り返すだけの力はある。

4区に宮岡、6区に武田、9区に小泉あたりを当日の変更で起用してくることが考えられる。

 

 

10位シード争いに絡む力があると考える学校

 

明治大学(昨年12位、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

全日本大学駅伝の予選会で10位となり、7位までが出場権が得られる関東予選会を通過できなかった。

そのことで、山本佑樹前駅伝監督が辞任し、山本豪新監督に箱根予選会わずか2か月前に監督が交代するという非常事態に陥った。

ただ、山本豪氏は2003年から20年にもわたってコーチを務めてきて、チームの内情をよく知るだけに、影響は最小限にとどまった。

例年、全日本のシード権を確保する好走を見せると、その反動からか箱根では低調に終わるなど、選手個々の持ちタイムや大学入学時の力からすると、期待を大きく裏切る結果を重ねてきた。

ただ、今年は全日本に出場できなかったことが、箱根への準備については好循環となり、選手によっては予選会、世田谷ハーフ、上尾ハーフの中の2本のハーフマラソンを走るなど、トラックレースへの出場をある程度数を絞ってでもハーフの距離やロードに対する対応力を例年よりはつけてきた印象だ。

来年以降のエース・2年生森下は往路の控えを兼ねて補欠に回っているようだが、おそらく4区に当日変更で起用されるだろう。

復路は、古井、山本、尾崎あたりを当日変更で7区、10区に起用してくるだろう。

シード復権でチーム強化の流れをよくするには、最後の機会かもしれない。

 

 

順天堂大学(昨年5位、今年度:出雲10位、全日本11位)

 

昨年まで主力を担ってきた4年生が多数抜け、その穴はエース三浦だけでは埋めきれておらず、そのままチーム力の低下となっている。

三浦を1区に配置し、何が何でも序盤に流れを呼び込む作戦は、危機感の表れだ。

それだけ苦戦は免れないと陣営も見ているのだろう。

往路は区間エントリーメンバーそのままの起用も考えられるが、なんとか往路でシード権内の順位を確保できれば、復路は森本、藤原、内田など力のある選手や調子のいい選手を当日変更で総動員してシードを守りにくることだろう。

 

 

東海大学(昨年15位、今年度:出雲不出場、全日本9位)

 

予選会を3位で通過した全日本大学駅伝は、シードまであと一歩の9位と、久々に光が見えた。

初優勝を果たした前後は、毎年上位グループに数えられていたが、近年は有力選手の退部などで層が薄くなっていた。

だが、今年は久々に選手が揃い、ここ数年の中では一番粒揃いだといえる。

往路の出来次第でシード権内で粘りこむか、あるいは復路でシード権内に盛り返すかという、どちらかといえば復路重視のオーダーを組むことができた。

上位進出は難しいが、10位のシード争いが終盤まで6~7校くらいに可能性があるなどもつれればもつれるほど、力を発揮してシード権内に滑り込んでくる確率が上がると見ている。

 

 

シードは難しいが、シード以下の中では上位(10位台前半)に来る力があると考えるチーム

 

神奈川大学(昨年不出場、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

今回の箱根予選会で、日本人選手としてはトップ、全体13位の小林を筆頭に、個人100位以内の選手が4人出た。

その中の宮本、佐々木が控えに回っているが、必ずやどこかでの当日変更での起用があるだろう。

昨年箱根本線を走れず、今年度も全日本大学駅伝に出場できていないなど、大学駅伝から二年遠ざかっている経験不足が懸念されるが、シード以下の10位台では上位に来る力はある。

 

 

山梨学院大学(昨年14位、今年度:出雲不出場、全日本不出場)

 

予選会は、通過校中最下位とやっとのことで本戦に駒を進めたが、3年生以下にも次年度以降育ってきそうな選手が多く、留学生の力と嚙み合えば楽しみなチームだ。

 

 

帝京大学(昨年13位、今年度:出雲不出場、全日本12位)

 

昨年は、全10区間のうち8区間で二桁順位を喫するなど、浮上の気配すらないままシードを落としてしまった。

それまでであれば、復路に強いチームで往路が少し悪くとも、復路で堅実に盛り返し最終的にシード権内に上がってくる粘りのチームという印象だったが、その粘りがなくなってしまった。

1区にはこの区間スペシャリスト小野の当日変更での起用があるか。

昨年は1区で16位に沈んでしまい浮上のきっかけを失ったが、今年はどうだろう。

いずれにしても厳しい戦いは避けられない。

 

 

 

チームとしてシード争いができるとは正直考えていないが、なんといっても楽しみなのは東農大のスーパールーキー・前田の走りだ。

エース区間の2区を任されるのかと思いきや、補欠に回っている。

1区か、スピードを生かしての3区の起用だろうか。

 

昨年は、1区の序盤で各校の選手たちが牽制し合い、スローペースでレースは始まった。

そんな中、関東学生連合の育英大学の1区新田が飛び出してペースが途中から上がる形になったことは記憶に新しい。

今年は、三浦(順大)や、場合によってはワンジル(大東大)が当日変更で入ってくることが考えられるが、どうか。

ある程度のペースで流れれば、やはり力上位の学校が有利になり、もしもスローで展開するようなことがあれば、前評判の高くない学校が序盤上位につけることも大いに考えられ、その分、シード争いはより混とんとしてくる。

 

往路当日は、雨が少しパラつく時間帯もあるようだが、おおむね曇りから晴れで、風も弱く気温も10度前後と、走りやすい天気のようだ。

元日から能登地震が起こり、開催に不穏な空気が流れたこともあった。

そういう意味では今後も印象に残り語り継がれる大会になるだろう。

しかし、開催する以上は、選手たちには誰に遠慮することなく競技に集中していただき、見ている人たちも全力で応援できるさわやかな空気を、かかわる人、見ている私たち全員が共有できるような大会になってもらいたい。

ここ何年も、ブログがこの箱根駅伝の展望記事のみとなってしまっている。

今年こそは、他の記事も書ければと思うが、とりあえずは例年通りこの記事からスタートする。

 

【第99回箱根駅伝 総合成績予想】

 

優勝:駒澤大学  出雲:優勝 全日本:優勝 前回大会:2位

今年のこれまでの駅伝の戦いぶりを見ると、この箱根駅伝も圧勝の予感がする。

大学駅伝三冠達成が濃厚だ。

オーダーを見ると、王者らしく堂々と使いたい選手を使いたい区間に配置してきた印象だ。

小細工なしで、普通に走れば勝てるという信念を感じさせる。

1区の円が出遅れず、先頭から30秒以内で襷をつなげれば、2区田澤で確実に先頭に立てる。

3区には、当日の変更で佐藤圭汰を配置してくるのだろうか。

そうすると、序盤から先頭に立ち、そのまま押し切るという完全優勝も見えてくる。

目指すは、まさに横綱相撲。

青山学院、國學院、順天堂と、例年通りだと優勝争いをする戦力を抱えるチームも、今年の駒澤の前にはかすんで見えるほど戦力が充実しており、頭一つ抜きんでているように感じられる。

 

2位:青山学院大学  出雲:4位 全日本:3位 前回大会:優勝

2~4位が、青学、國學院、順天堂の3校と見ているが、最終的には青山学院がこの3校の中からは抜け出して2位を確保するように思う。

全日本大学駅伝では、2区白石、8区主将の宮坂と、2区間で二桁順位のブレーキを起こしながら、3位に食い込んだ。

その二人も、これら一度のミスでエントリーメンバーの16人からも外れるほど、選手層は厚い。

1区目方と2区近藤は、おそらく原監督が今年度最も信頼を置いているであろうと思われる二人だ。

この二人で、なんとか駒澤と競る展開に持っていきたい。

4区には当日の変更で岸本か太田を起用してくるだろう。

5区は昨年も区間3位で走った若林。

なんとか往路優勝をもぎ取り、駒澤に一泡吹かせたい。

仮に4区に太田だとすると、復路に岸本、中村、田中と、まだまだ駒は残っている。

往路優勝を駒澤から奪えれば、少し駒澤を慌てさせることができるかもしれない。

 

3位:國學院大學  出雲:2位 全日本:2位 前回大会:8位

今年度の大学駅伝では、駒澤の2冠が目立っているが、いずれも2位に食い込んでいるのが國學院で、その安定感は見逃せない。

全日本では、1区島崎が18位と出遅れながらも、その後2位まで巻き返してきた。

1、2区は当日の変更で藤本、平林を起用してくるのではないだろうか。

駒澤に勝つまではどうかと正直思うが、2区終了時点で上位に残りレース全体の流れに乗ることができれば、常に3位以内でレースを進められる地力はある。

中西唯翔、青木も復路に残せて盤石。

3大駅伝全て表彰台という快挙も濃厚だと見ている。

 

4位:順天堂大学  出雲:5位 全日本:4位 前回大会:2位

三浦、野村、西澤を補欠に残しており、当日変更でいろいろなパターンが考えられる。

5区には、昨年もこの区間を担当した四釜が入るだろう。

2区には三浦が濃厚だろうが、野村も考えられる。

いずれにせよ、この二人のうちのどちらかが復路にも残せて、復路も厚い。

9区、10区も当日の変更が考えられ、レースが終盤までもつれれば、2位争いを制するところまでは十分考えられる。

 

5位:中央大学  出雲:3位 全日本:7位 前回大会:6位

1,2区は、おそらく当日の変更で、千守、吉居大和か。

出雲は、スピード駅伝で、序盤からそのスピードを生かし終始上位でレースを進められたが、全日本ではやや距離に苦しんだ印象だったが、それでも最終的には7位に食い込めた。

ここ数年の強化と、一昨年の久々の全日本シード入り、昨年の箱根シード入りが選手にもたらした自信が見事に融合。

強い中央復活の伝統の再構築に成功している。

この中央も含めたこれより上位2~5の予想4校は、順位の変動こそ多少あれども、2~5位を分け合う上位校ではないかと見ている。

 

6位:東洋大学  出雲9位 全日本:8位 前回大会:4位

出雲、全日本とも1区から出遅れ、早々上位争いからは圏外に飛んでしまった。

この箱根駅伝も苦戦は免れないが、ロード、しかも長距離になればなるほど力を発揮してくるのが東洋だ。

全日本はシードを落とすこともあったが、箱根だけはここ十数年上位を外さない。

今回は、3、6,7、8区が当日の変更で、ここに佐藤、村上、梅崎、木本あたりが入ってくるのだろうか。

復路にもある程度の選手が残り、中盤あたりに一時シード圏外に落ちたとしても、最終的にはシード権内には上がってくる力はある。

相澤晃(現旭化成)が卒業してから絶対的なエースが不在で小粒になった感じが否めないが、なんだかんだといっても、中位くらいではシードを確保するのではないかと見ている。

 

7位:  出雲:6位 全日本:5位 前回大会:7位

ここ数年、シード入りを逃していないのは、1区で出遅れることなく2区の外国人留学生で上位を確固たるものにして駅伝の流れに乗っていることが大きい。

今年もこの戦法は変わらない。

往路優勝を目指していると報道では聞くが、当日変更で5区に誰を起用してくるか。

総合上位争いは正直厳しいが、山を乗り切れれば、シード中位あたりは十分可能だ。

 

8位:早稲田大学  出雲:不出場 全日本:6位 前回大会:13位

8位には、ロード、長距離の強みを発揮して、早稲田が食い込んでくるのではないか。

4区には鈴木、6区には佐藤、そして10区に山口あたりを当日の変更で起用してくるのだろうか。

昨年は1万メートル27分台ランナーを二人も抱えながらシード落ちを味わった。

ここ数年は区間配置がしっくりいっておらず、中盤で失速し、終盤の追い上げが実らないという展開が多く、大砲を生かし切れていない印象だった。

今年も井川が27分台を持つが、配置は3区。

本来は、総合力で勝負する大学で、井川の前後を固め、レースの流れに乗りたい。

全日本ではそのような布陣を組んで功を奏した。

4区までに5~6位につけられれば、復路後半までつながる。

 

9~10位争いは、次の4校ではないか。

 

9~12位①:明治大学  出雲:不出場 全日本:9位 前回大会:14位

ここ数年は序盤の出遅れが響き、昨年は復路だけなら3位だが、序盤のビハインドが大きすぎて挽回できないまま終わってしまっている。

ゲームチェンジャーがいないだけに、ブレーキを極力少なく、堅実な走りをしたいところだ。

例年、トラックに偏ったチーム作りで、トラックの持ちタイムは素晴らしいが、駅伝のようなロードレースで力を発揮できていない。

ところが、今年はトラックレースは絞り、ハーフでじっくりとエントリーメンバーの選考を重ね、この箱根に照準を合わせてきた。

2区、3区には児玉、森下が当日変更で入ってくるのではないか。

そうなると主将の小澤が復路に置ける。

例年、選手層が厚いようで、実はロードの経験に乏しく、選手の置ける区間が限られている印象だったが、今年はいくつかのパターンが考えられる。

シード入りには、往路で少なくとも10位以内が必要だ。

 

9~12位②:法政大学  出雲:7位 全日本:不出場 前回大会:10位

4区には小泉、8区に中園を入れてくるのだろうか。

5区は前回大会を経験している細迫か川上か。

全日本大学駅伝の出場権を逃し、駅伝の経験不足が気がかりだが、もともとロードの長距離に強みを発揮する。

シード圏ギリギリで確保する力はある。

 

9~12位③:東海大学  出雲:不出場 全日本:10位 前回大会:11位

全日本大学駅伝では前半4区までの二区間で区間15位以下のブレーキが起きてしまい、早々に上位争いからは脱落してしまった。

後半、ジリジリと追い上げられる力はあるだけに、序盤の出遅れがなく常に10位以内でレースの流れに乗れれば、ワンチャンス、シード入りはある。

 

9~12位④:大東文化大学  出雲:不出場 全日本:14位 前期回大会:不出場

今年はトラックで力をつけてきて、ここしばらくの明治大学の印象と重なる。

だが、駅伝となると久々で、やはり駅伝の経験不足は否めない。

ただ、2区にはおそらく外国人留学生ワンジルが入る。

ここで上位につけられれば、ある程度流れに乗れる。

4区に大野、6区と8区に木山、谷口あたりを当日の変更で入れるものと見られ、ここも最もうまくレースが運べれば、シード入りする力はギリギリある。

 

 

 

 

 

 ここ何年も、箱根駅伝の予想記事しか載せておらず、自分でも普段開くことがほとんどなくなってしまったアメブロ。ここ数年は、正月にのみログインということの繰り返しだった。

 しかし、一年で最も楽しみにしているこのイベントがやって来るからには、やはりここに予想記事を書かないと今年も始まらないなという気になって、久々にアメブロに記事を書こうとした。

 …ところが、マイページに入るための暗証番号が思い出せない。

 PCを変えてしまったため、二階の片隅に眠っている以前のPCをつなぎ直し、なんとかマイページに保存されている暗証番号を「表示」にして、自分が登録していた暗証番号を知った。

 しかし、それを一階の自室に戻り、ログイン画面で何度打ってみても、一向に「メールアドレスかパスワードが違います」のメッセージが出てくるのみ。「パスワードはさっき表示にして見たので正しいはず。メールアドレスかパスワードが違いますということは…」と冷静に考え直し、また二階へ駆けあがり、以前のPCで再度「表示」にしたものを見直してみる。すると、なんと、登録メールアドレスが、自分が認識していたものと微妙に違っているではないか。

 ようやく、ログイン画面から、その以前のPCに保存されている正しいメールアドレスとパスワードを注意深く打ってマイページに入ることができ、今、やっとここに来ることができた。

 過去10年来の記事が全てパーになったかと、頭の中が真っ白になったが、一階と二階を何度か往復し、ようやく事なきを得た。年も重ねると、少々のことでは動じなくなってきたが、不覚にも最近では最も焦った出来事となってしまった。本当に大事なものは、どこかにメモを残しておくべきだと痛感した。

 

 さて、前置きが長くなったが、今年も箱根駅伝の拙い予想を展開したい。

 一応、筆者は端くれだが陸上界に身を置き、毎年このレベルの選手たちのレースを間近で見る機会もあり、情報や知識もそれなりに有する。名前は伏せるが筆者の母校もだいたい毎年出場していて、母校の輝かしい優勝予想の記事の一つも書いてみたいものだが、あくまでも専門的な目で公平に見て、極力そのような個人的な希望や観測は排して予想してはいるつもりだ。もちろん、公平な目で見ても優勝に値する予想となれば、そう書くつもりだが。

 ただ、毎年書いていることだが、これはあくまでも筆者個人による見解ということで、賛否両論あることと思う。ごひいきのチームが下位に予想されていることで、憤慨、立腹される方ももしかしたらいることと思うが、何卒ご容赦いただきたい。

 

 

優勝 駒澤大学(出雲5位、全日本優勝)

 

駒澤、青学の二強ともいわれているが、駒澤に分があるように思う。

理由は爆発力だ。

全日本大学駅伝で、3区通過時点で、首位東京国際大と最大2分20秒も差があった。

その後、わずかに4区、5区で差を詰めたものの、5区終了時点でも首位とはまだ2分近くの差。

さすがに残り3区間では厳しいだろうと思って見ていたが、6区安原、7区田澤で一気に逆転し、しかも18秒のアドバンテージを作った破壊力はすさまじいものがあった。

今大会、その安原以外にも、トラックのタイムでは田澤と肩を並べるまでに成長した鈴木芽吹、花尾、青柿といった主力を補欠に回している。

3区の登録が全日本1区で区間賞を獲得した佐藤で、そのまま走らせることも考えられるが、4区も含めて、ここに仮に上に述べたような補欠メンバーを当日変更で並べて入れてくるとすると、2区の田澤も含めて全日本のときのように少ない区間で一気に流れを呼び込む破壊力が十分だ。

ここまでに留学生の威力で首位近くをキープすることが濃厚と予想されている東京国際や創価と引けを取らないか、場合によっては先んじる展開に持ち込むこともできる。

往路で優勝できなくても、トップから2分半差くらいであれば、復路で十分逆転可能な戦力がある。

往路への当日変更での選手投入の仕方次第では、往路、復路、総合の完全優勝まであり得る。

 

 

2位 青山学院大学(出雲2位、全日本2位)

 

ここ何年かは、以前ほどの圧倒的な強さはなくなってきたが、それでも優勝を争う学校には違いない。

補欠には、飯田、岸本、横田、佐藤といった主力を残している。

2区近藤は変わらないだろうが、1区、3区に佐藤、岸本あたりが当日変更で入るのではないだろうか。

そうなると、昨年犯したような往路での出遅れは防げるだろう。

復路も、西久保、中村唯翔といった主力を8、9区に置けるところがさすがで、やはり駒澤以外の他大学と比べると、一枚も二枚も違う感じがする。

1万メートルの持ちタイムが、史上初の登録16人全員が28分台というスピード自慢の集まりだが、ただ、こと駅伝に関しては、ここ数年来、今ひとつ勝ち切る力強さに欠ける印象がある。

距離が異なり、箱根とは大きく性質的に異なる駅伝ではあるが、特にブレーキ区間があったわけでもない出雲駅伝で、2区以降東京国際に一度も先んずることなく逃げられたことが示すように、トラックのスピードのわりには、駅伝でスピードを持ち味に圧倒できるわけではなさそうだ。

勝負強さや、ゲーム展開をガラリと変える「爆発力」が今年のチームにはやや欠けているように思えてならない。

青学が優勝するには、駒澤の復路にブレーキが起きて、なおかつ青学の出場選手全員がほぼ力を発揮するという条件がつくと考え、力通りの勝負となれば駒澤に分があると見て、二番手の評価とした。

 

 

3位 順天堂大学(出雲10位、全日本3位)

 

出雲10位の敗因は、野村、服部の絶不調と、はっきりしている。

そこを修正し、全日本では調子の波を合わせたのか、石井の不調以外はほぼ一定した走りを見せ、堅実に3位に食い込んだ。

箱根は、10人全員が調子をピークに合わせることは難しく、連覇をしていた頃の圧倒的な強さを誇った青学ならともかく、それ以外の年では、優勝チームですらいくつかの不調区間が起きるものだ。

ただ、それを挽回する力があるかないかで、優勝したり上位に食い込めたりするかどうかが決まるものだ。

その点、不調区間が起き、それを修正してみせた経験を持つ順天堂は、二強に次ぐ三番手を争うチーム同士の比較においては、挽回力という点でアドバンテージがあると考える。

注目の三浦龍司だが、本人は1区で昨年のリベンジを果たしたい希望があったようだが、区間登録では1区が主力の平ということで、1区での起用はほぼないだろう。

そうなると2区が濃厚か。

トラックシーズン中、3000m障害に軸足を置くといえば、順天堂では塩尻和也(現・富士通)が思い出される。

三浦の特性としては、1区か3、4区あたりのスピードが生きる区間が適任だと思うが、塩尻も3000m障害をメインに置きながら、箱根では2区を他大学のエースに引けを取ることなく、粘りで走破してみせた。

チームの経験値として、きっと三浦が2区で起用されても、他大学のエースと遜色のない走りは見せられるのではないかと考えている。

 

 

4位 早稲田大学(出雲6位、全日本6位)

 

ここ数年、1万メートルが27分台のランナーが現れ、それなりに破壊力はあるが、それ以外の選手層がやや薄く、優勝争いには加われず中位にとどまっている印象の早稲田。

ただ、今年は、中谷、山口、井川、鈴木、菖蒲を軒並み補欠登録に回せるところに、例年よりも少し選手層に厚みを感じさせられる。

1~3区に27分台ランナー3人を並べてくるのではないかと見る向きもあるが、筆者は、2区が中谷で、1区北村と4区石塚はそのまま走らせるのではないかと見て、27分台ランナー3連続という豪華襷リレーにはならないのではないかと思う。

ここ何年かは、往路序盤で突っ走り、復路は耐え凌ぐ「防戦」の駅伝となっているのが早稲田だった。

だが、全日本で太田が使えなかったこともあり、逆に後半区間で失速を防ぐ配置にしたことが功を奏し、早稲田としては新しい戦い方のバリエーションが増えたのではないか。

それで、27分台ランナーの一人・井川を復路に残し、往路の成績を見て、思ったよりも下位なら7区に、後半勝負に持ち込めそうなら9区に起用する手もある。

それだからこその27分台ランナーの二枚を補欠に置く作戦に出ているのではないかとも受け取れる。

いずれにしても、ここ数年のように、復路は防戦一方の駅伝から、復路で逆襲をかけられる駅伝ができる。

これが今年の早稲田の強みで、中盤に順位を6、7番手に落とすことがあっても、最終的には4位あたりに食い込んでくると見る。

 

 

5位 國學院大學(出雲4位、全日本4位)

 

國學院は、一昨年、浦野、土方、青木の三枚看板が機能し、学校史上最高となる3位に食い込んだ。

昨年は、その三人が抜け、谷間のような年となったが、1、2年の頃から活躍している藤木や木付、中西大翔が力をつけ、シードを守るなど、ここ数年「駅伝力」の確かな根付きを感じさせるチームとなった。

大砲はいないが、いないなりに駅伝を総合的にまとめられる力がある。

今年の出雲、全日本とも、中盤区間には10位前後にまで順位を落とす場面があったが、どちらも最終的には4位に浮上して終わっている。

この、最後に浮上して終わっているというところが、箱根に向けては大事なところで、チームとして勢いを盛り返し、次につながる予感をチーム全体が感じ取ることができる。

前田監督は、もしかすると箱根に最高潮に持っていくためにそこまで考えて区間配置をしていたのではないかと思わせられるほど、出雲、全日本とも符合した終わり方となっていて不気味だ。

ここ二年、1区を任され、チームに勢いをつける走りをしている藤木が、出雲、全日本でやや不調だったことが気がかりだ。

補欠登録されているが、今年も1区での起用があるのか。

それとも、復路に回るのか。

山上りの5区に信頼できる殿地がいるだけに、木付、藤木のどちらかを復路に回すことができ、そうなると、この箱根でも復路に順位を上げて最後は上位に滑り込んでくることが十分考えられる。

 

 

6位 東京国際大学(出雲優勝、全日本5位)

 

留学生に頼るチームだったが、数年前からはそうではなく、卒業生の伊藤達彦が出たあたりから、日本人選手の向上も目覚ましい。

今大会も、山谷、堀畑、白井、丹所といった1万メートル28分台の日本人ランナーを多数抱え、決して留学生・ヴィンセントだけでないチーム作りが、今年の出雲の三大駅伝初優勝という形で実を結んだ。

丹所の3区起用は濃厚。

そうなると、山谷、ヴィンセント、丹所というエース級三枚を並べて、往路の逃げ切りを図れる。

白井を7区に、宗像を9区に置けたことは大きく、また、補欠の野澤も復路に投入することができ、決して序盤の貯金をひたすら守るだけのレースにはしない意思が感じられる。

走る往路に比べれば落ちることは致し方ないが、復路も粘れる布陣で、復路で一気にシード権外に飛ぶことは考えにくい。

 

 

7位 明治大学(出雲不出場、全日本7位)

 

例年、トラックの持ちタイムはトップ3に入るが、駅伝での勝負強さに欠け、期待を裏切り箱根での凡走が多いチームだ。

ただ、今年は、「勝ち切る」ということをテーマに掲げてきたと聞き、それが最も象徴的に表れたのは、箱根予選会だ。

集団走を指示していたわけでもないのに、上位27位までに7選手が入る圧倒的な強さで予選をトップ通過。

これは、個々に強くなってきたこと意味し、例年、チームとして伝統的に「トラック番長」と言われ、ロードの単独走や競り合いに弱い選手が多いとされるチームカラーに対し、相当変革を施してきたことを示す。

全日本を見ていると、さすがに上位校と競ったときという点では、まだ物足りなさを感じるものの、ロードでの単独走は、予選会の疲れがある中としてはまずまず力を発揮できた部類ではないかと思った。

持つポテンシャルとしては、上位3位までは食い込む力があるとは思う。

山の上り、下りも、ある程度の目処は立っている。

ただ、主力の櫛田のけがの回復ぶりが思わしくないこと、加藤の安定しない好不調の波、1、2年生の突き上げの少なさを勘案して割り引き、この順位とした。

 

 

8位 東洋大学(出雲3位、全日本10位)

 

全日本では、三区間で二桁順位を記録するなど、明らかに波に乗れなかったが、その前の出雲では、今年の力からすると好走したといえる。

メンバー的には、補欠に置いたゴールデンルーキーの石田を除き、爆発力はない。

同じく補欠の清野、前田、奥山、村上と、既に区間登録されているメンバーとの比較で、当日変更でより調子のいい選手を順次送り込んでくるものと思われる。

伝統的に山で外すことはないチームなので、あとは平地の部分でどれだけブレーキを起こす区間を少なくするかにかかっている。

全日本のように、終始シード権外でレースをすることを余儀なくされることはないだろうが、優勝争いに絡んでくることは、今年のチーム力からすると考えにくい。

ただ、駅伝力が非常に高いチームなので、往路で首位から3分差以内につけることができれば、復路もかなりの確率で中位程度には粘りこむことはできそうだ。

 

 

9位 (出雲7位、全日本不出場)

 

昨年2位に食い込んだ再現はなるか。

いかに序盤に貯金を作って、レースの主導権を握れるかがカギだ。

4区嶋津、5区三上、6区濱野は盤石なので、そこへつなぐ序盤で2区のムルアを中心にどれだけ貯金を作れるかだ。

緒方、葛西、新家が1区、3区の当日変更で入ってくる可能性が高そうだ。

他大学も復路が例年以上に充実しており、昨年とは違って復路に順位を落としていきそうに思えるが、シード権内には踏みとどまれるだろうと見ている。

 

 

10位 帝京大学(出雲8位、全日本13位)

 

全日本は、1区小野の区間19位の出遅れが全てだった。

それ以後の区間の選手はそれなりに走っただけに、全日本の13位だけで見限るのは早い。

伝統的にトラックのタイムより、ロードで力を発揮する選手の多い大学だ。

大エースがいないだけに、2区は苦労するだろうが、1区の小野が全日本のようなことがなければ、往路、復路とも10位前後の順位は常にキープして走れそうだ。

 

 

10位シード争いに絡むと思われる大学

 

中央大学(出雲不出場、全日本8位)

 

全日本大学駅伝では、三大駅伝久々のシード入りを果たした。

明治と同じく、直前の箱根予選会に出場しながらのシード入りは、2本続けられるようになったということで、選手の自信も大きいだろう。

最終8区でも、競った中で、シード権を獲得できたのは、地力強化の証拠だ。

予選会よりも、全日本に照準を合わせてきたのではないかというふしも感じられる。

タレント揃いで、井上、三浦、中澤を補欠に置く。

往路に登録されたメンバーが好調でそのまま走れ、これらの三人をエントリー変更で復路に起用できるようなら、大きくシード権入りに向けて前進する。

ただ、予選会、全日本と立て続けに好走してきた分、反動は大きいはず。

全日本からのわずか二か月弱で、戻るかどうかは少し疑問。

それに、予選会で首位明治からは4分以上離されたという点も勘案すると、残念ながら箱根の距離を考えた場合にはそれが実力と見るべきで、その分を割り引き、よくてシードぎりぎり取れるかどうかというくらいだと考えている。

 

 

法政大学(出雲不出場、全日本9位)

 

中央と同じく、箱根予選会からの連戦となったが、全日本は穴が非常に少なく、堅実な走りを見せた。

もともと、トラックよりもロードの方に強さを発揮する選手が多いチームだ。

補欠登録の清家、川上、河田は、4、5、9区あたりの当日エントリー変更での出場がありそう。

シード権争いに全く絡まないということはなさそうだ。

 

 

東海大学(出雲9位、全日本12位)

 

三年前の初優勝を含め、ここ何年か守り続けたシードは、残念ながら今年で手放しそうだ。

補欠登録の市村と竹村の復調、起用があるか。

この二人が出場し、力を発揮すると、もしかするとよくて10位争いに食らいついてくる程度だと見ている。

 

 

気象予報を見ると、おおむね条件は良さそうだ。

元日のニューイヤー駅伝も好条件のもと、区間によっては好記録が連発されたように、箱根もハイペースのスピード勝負となるのではないだろうか。

そうなると、ますます予想上位校が有利になると見る。

晴天の下、選手たちがさわやかに新春を届けてくれるような走りを期待する。

「意外」とは失礼も承知だが、創価大学が往路初優勝を飾った。

 

〔1区〕

最初の1キロは、テレビ画面からの計測で、なんと3分35秒。

画面からもはっきりとジョギングをしているかのような緩いペースで走っているのが見え、タイム的には並の中学生の陸上部員でも走れるような1キロとなったが、これがその後の波乱の伏線となった。

誰も前へ出ようとしない中、東海・塩澤がしびれを切らしたように1kmあたりから前へ出た。

その後は3kmが9分12秒、10kmが30分40秒、15.2kmが45分49秒と推移していることから、一旦1kmが2分55秒ほどのペースに上がるものの、その後また3分4~5秒に落ち、再び2分55秒程度に上がるなど、3分0秒を挟みペースが上下した。

5秒以内ならさほどの変化は感じないが、1kmを10秒程度もペースが変わると、上がっても下がっても走っているランナーの負担は大きい。

この区間10番目(全体9位プラス学生連合)までに通過した学校全てが2年生以上で、1年生はかろうじて10位(11番目通過)に話題のスーパールーキー・順天堂の三浦が入ったくらいという、なによりも経験値がものを言う区間となった。

昨年、一昨年と、およそ平均してずっと2分52~3秒程度で流れるハイペースの1区だっただけに、そういった展開を予想して、トラックでも早いタイムを持つ選手を起用してきた有力校は軒並み、これで計画が狂った。

 

有力校で、この乱ペースにまずまず対応できた東海(1区塩澤)が、3区までレースの主導権を握ることになった。

後でも書くが、この乱ペースにまずまず対応できた方の青学(1区吉田)、早稲田(1区井川)は、本来なら東海同様に往路の主導権を握れるはずだったが、その後に続く選手の不発で流れを逸することになった。

 

創価の1区・福田は、留学生を除き、チームナンバーワンの1万メートルの持ちタイムを持つ、日本人エースだった。

経験を積んできた4年生でもあり、ここで上位につけられたことが、その後往路優勝に結びつく。

 

チーム上位のスピードランナーのカードを切ってきた他の有力大学が、テレビのゲスト解説の東洋大OB・相澤選手が言ったように「もったいない起用」となった学校が多かった中、序盤から流れを手放さないためにエースを起用せざるを得なかった創価としては千載一遇の展開となり、結果的にここで福田を起用した采配が当たったことになる。

 

〔2区〕

有力校の中でペースを握ったのは東海(2区名取)。

4kmすぎに法政(2区河田)を突き放してからは、留学生二人(東京国際・ヴィンセント、創価・ムルア)に抜かれるものの、無理して追うことなく、後ろから来た日体(2区池田)のペースをうまく利用していい位置で3区に襷がつなげた。

 

また、東洋も往路2位で終われた原動力となったのは、この2区の1年生・松山の走りが大きかった。

5千メートル13分48秒のスピードは持っているランナーだが、ハーフくらいの距離となると未知数だった。

だが、前半に集団を形成した青学、城西、神奈川といった他大学のこの区間を任されるだけある実力あるランナーのペースに乗り、いけると見るやそこから抜け出すというクレバーな走りを展開し、昨年に青学・岸本が作った2区の1年生史上最速タイムに迫る1年生歴代2位の1時間7分15秒をたたき出した。

さすがは東洋、今シーズンはあまりトラックの記録会に出ていなかったが、その間、ロードの長距離に対応できる練習をかなりこなしていたと見え、レースではおそらく初となるハーフマラソン相当の距離に見事に対処できた。

 

他の有力校は、当然1区のレース展開を知って襷を受け取っていたわけで、「自分のところで1区の分も稼がないと」といった心理的に余計な負担がかかった選手が多かったのか、力を発揮できなかった学校が多かった。

駒澤は、順位としては上げたものの、大エース田澤としては1時間7分27秒の区間7位と、タイムとしては物足りなく稼げなかった。

早稲田の太田は、1万メートル27分台の大エースとしては完全な不発。

國學院・中西大翔も然り。

帝京・星は、区間12位ながら10位とさほど差がなく、他の大エースを擁する有力校・東海や駒澤との比較で、この区間として30~40秒程度のビハインドにとどめた。

エースとしては目立つものではなかったものの、最低限のタイムと位置は確保した感じで、その後大崩れすることなく往路4位で終える下地は作った。

青学・中村や明治・加藤は、この区間を任されるのは荷が重かったか調子が合わなかったか。

両校はチームの浮上のきっかけを失い、完全に流れを手放してしまった。

 

〔3区〕

目立ったのは、東海の1年生・石原だ。

トラックの持ちタイムはないが、全日本大学駅伝の4区で区間新の快走がフロックではなかったことを証明して見せた。

ロードレースでいい結果を持ってここへ臨んだ自信がそうさせたのか、若々しく、恐れのない軽快な走りが目立った。

これが、一度でもロードのレースで失敗した経験を持ってここへ臨んできていたなら、また心理的に違っていたのだろうが、1年生の経験の浅さと全日本の快走の成功体験が良い方に出た感じた。

 

対照的に経験で上位に持ってきたのは駒澤・小林と帝京・遠藤だ。

小林は、昨年の箱根駅伝で7区5位、今年の全日本大学駅伝で7区4位と、駅伝では外さない堅実な走りが魅力の選手で、序盤から表情は苦しそうに見えたが走りは乱れず、その力を存分に発揮してチームを3位にまで押し上げた。

遠藤は、今年の全日本大学駅伝こそ4区で区間12位と沈んだが、箱根駅伝に関しては1年生と2年生時にともに同じ3区で区間3位と区間2位ながら区間新更新と実績があり、自信を持ってこの日に臨んでいた。

 

東洋・前田は、この区間を走る選手としては持ちタイム上位ではなかったが、区間5位としっかりとまとめた。

早稲田は、もう一枚の看板・中谷をつぎ込んできたが、2区・太田同様、不発に終わってしまったのが痛恨。

明治は、4年生のチーム準エース的存在の小袖が自慢のスピードを生かせず、タイムも平凡、区間順位も12位では、72年ぶりの総合優勝を狙うには致命的となってしまった。

 

創価・葛西は、序盤で東海・石原に抜かれ、見た目は芳しいものではなかったが、この区間の持ちタイムが下位の選手だったにも関わらず、終わってみれば区間3位と大健闘。

1区福田が流れを作り、2区ムルアが力どおり上位で襷を持ってきたという、駅伝の鉄則の常にいい位置で襷をつなぐという心理的アドバンテージが快走を呼びこんだ。

 

 

〔4区〕

創価・嶋津の快走が、往路優勝を決定づけた。

元々、昨年10区で区間新を叩き出した実力者でもあるが、それとともに、首位の東海・佐伯の不振と、本来なら追ってくるはずの襷をもらった時点で順位的にはすぐ後ろのそれぞれ3位、5位の、駒澤・酒井、東洋・𠮷川が区間11位、6位とやや不発だったことも幸いし、この区間で大量の貯金を築き往路優勝を大きく引き寄せた。

昨年の快走後、一時陸上から離れていたが、復帰してしかもこの4区で使えたことが、なにかこの日の創価の優勝を運命づける出来事だったかのようにさえ思われる。

 

東海・佐伯は、先の全日本大学駅伝では1区で7位ながら、タイムとしては区間新を更新していた。

ただし全日本大学駅伝の1区は9.5kmで、その倍以上の距離の箱根駅伝となると未知数だったことも事実。

5千メートル13分台を持つスピードランナーだが、調子が合わなかったのか、ロードの長距離に対応する練習が不十分だったのか、区間19位の大きなブレーキとなってしまった。

4強とも5強とも言われた他の有力大学が相次いで1区から流れを失う中、唯一狙い通り往路優勝に向けてひた走っていただけに、その良い流れを自ら手放してしまったのは、東海としてはいかにも残念だ。

 

帝京・中村は、区間9位ながら7位とは8秒差と差のないタイムで、創価同様、各区間とも区間順位を一桁にまとめた。

ここまで触れていなかったが、順天堂、東京国際も、ここまで大きなブレーキがなく、常に10位前後から一桁順位を確保していた。

特に東京国際は、3区、4区に起用された内田、宗像の両選手とも、決してその区間を走る他の大学の選手との比較では持ちタイム上位の選手ではなかったのだが、区間一桁順位にまとめ上位をキープし続けた。

先にも触れたが、良い位置で襷を渡せているからこそできたことだ。

 

早稲田は鈴木が区間3位の快走を見せてやや盛り返したものの、2区、3区の誤算からチームとしては大きなゲインとはならず。

明治は櫛田が区間7位と、かろうじて浮上のきっかけを作った。

 

〔5区〕

注目は、昨年区間賞の宮下だった。

宮下はその力を発揮し、今年も区間3位の好走を見せ、往路2位に貢献した。

 

だが、それ以上に目立ったのは駒澤の1年生・鈴木芽吹だった。

襷をもらった時点で28秒後ろから宮下が追いかけてくるという絶好の展開だったこともあり、追いつかれてしばらく並走、そして一旦引き離されてからも気持ちを切らすことなく目標にして追い続けた。

そして、最終的にはまた差を縮めて迫ってくるという、1年生としては言うことないレースを展開し、区間4位で初の山上りを走破した。

上りの適性があるという話は伝わっていたが、1年生ということもあり、負担の少ない区間に起用してくるかと思っていた。

駒澤はここ数年山上りに苦しんでいただけに、向こう三年、山上りの心配が要らなくなったかもしれない。

田澤の不発もあったが、大八木監督のこの日最も当たった起用がこの鈴木だったと言える。

 

創価の三上は、持ちタイムは1万メートルで30分台、ハーフでも1時間4分台しかないが、メンバー入りしていた理由を今さらながら知らせてくれた。

走りを見ても、今のトレンドとは真逆でややかかと着地気味に見えるが、上りには負担の少ない走りだ。

持ちタイムだけの話でいけば、他の大学ではエントリーメンバーにも入りにくいものだが、よほど山上りの適性を見込んでいたのだろう。

逆にいえば、その適性を見抜き、チームとして周到な準備をしてきたからだと言える。

小田原で襷をもらったときの差をほぼ詰められることなく、逆に芦ノ湖では2位チームとの差をさらに40秒ほども広げ、区間2位の圧巻の走りを見せ、往路優勝のゴールテープを切った。

4区嶋津で作った貯金があまりにも大きく、いい位置で、しかも余裕を持って走れるタイム差で襷をもらうという、駅伝のアドバンテージを最大限に生かし切った走りをしたということも見逃せない。

 

区間賞の帝京・細谷も、典型的な山上り用の選手だろう。

帝京も全区間を通して堅実なロード向きの走りと準備が光った。

 

早稲田・諸富は区間19位の失速。

5千メートルの持ちタイムは14分07秒を持つが、1万、ハーフともになく、なによりもまだ1年生なので個人を責められない。

学校として、2~4年生の上級生に山上りを任せられる人材がいなかったのか、これまで育ててこなかったのか、また準備・対策もしてこなかったのか疑問の残る区間となってしまった。

 

明治・鈴木は、昨年同区間で区間5位だったが今年は9位。

1~3区の流れが最悪で、4区櫛田がやや浮上のきっかけは作ったものの襷をもらう位置が悪すぎた中では仕方なしか。

また直前の記録会1万メートルで、足の痛みを訴えて途中棄権していたことからすると、これが精いっぱいの走りだったのかもしれない。

明治はシード権確保というところで最低限首の皮一枚でつながったという印象だ。

 

当たり前だが、区間ごとに最もミスの少なかった創価が優勝し、東洋、帝京も上位に名前を連ねた。

襷をいい位置でもらうと、実力を発揮し、ときには実力以上の力も出てしまうし、逆に悪い位置でしか襷をつなげないと呪縛にかかったかのように力が発揮できないという、駅伝の怖さをあらためて思い知らされた往路だった。

 

 

〔復路展望〕

総合優勝争いは、3分27秒差の5位東海までに絞られた。

 

残している選手からすれば、この中では3位駒澤、次に2位東洋の順に分があるのではないかと思う。

駒澤は、8区に伊東、9区に山野、10区に神戸と、力のあるランナーを残していることが大きい。

終盤までもつれるにしたがって有利となるだろう。

 

東洋は、エース西山を残している。

しかし、トラックではタイムを出しているものの、先の全日本大学駅伝では7区で区間11位と、まだ1、2年生時のような調子に完全復調しているわけではない。

それに、自信を持って送り出せるほどだと判断されたならば、往路のどこかで起用していただろう。

それを考慮すると、彼一人に過度な期待をするのは酷ではないだろうか。

往路のようにチーム一丸で、スローガンどおりに一秒を削り出していくしかない。

ただ、「駅伝力」の高い大学だけに、終わってみれば3位以内を確保している可能性は大きいと見る。

 

二校の次に位置する総合優勝争いとしては、流れからいえば、帝京の順のように思う。

は、復路の力は正直一枚落ちると言わざるを得ないが、それでも8区、9区にはロード向きの選手を配置している。

特に9区・石津は、昨年の箱根駅伝の同じ区間で区間6位で走っており、終盤までリードを保っている展開であれば、逃げ切ってしまいかねない。

まだ順エース原冨を残しており、総合優勝に向けて攻めの采配をするなら7区、最後までもつれることを予想するなら10区の当日変更での起用が考えられる。

 

帝京も、選手の層としては他の上位校に劣るが、8~10区には乗り切れそうな選手を配置していると見る。

特に8区は一昨年、昨年と、ともに同じ区間を走り9位、3位と順位を上げてきている8区のスペシャリスト鳥飼を配置しているのは心強い。

6~7区で、一度でも先頭に立つことがあれば、他大学からすれば抜き去るのは厄介になる。

 

東海は、9区に全日本大学駅伝6区で区間新を出した長田を配置している。

ただ、今年度の三枚看板・塩澤、名取、西田を全て使い果たしての往路5位は、明らかに誤算であり、精神的にはこの中で最も余裕がないと見る。

往路の不調を引きずらずに復路スタートラインに立つことが、優勝争いに絡む前提だ。

 

戦前の下馬評が高い大学が、シード権獲得ライン付近に位置し、例年以上に厳しいシード争いが展開されそうだ。

8位の神奈川から14位の明治までが2分32秒差。

6位の東京国際が圏外へ飛ばない限り、戦前の有力校と見られていた9位國學院、11位早稲田、12位青山学院、14位明治の中の最低1校は予選会に回ることになる。

 

國學院は、昨年ほどの選手層はないが、3年生主将でエース格の木付をまだ残しているところが救い。

早稲田は、1万メートル27分台コンビの太田、中谷を既に往路で使い果たしてしまった中でのこの位置は、精神的なダメージをかなり負っての復路スタートとなり不安。

青山学院は、経験者の飯田を残しているが、主将の神林が疲労骨折で往路が使えなかったことが判明し、精神的に落ちた中での往路からの流れの悪さがどれだけ復路に影響するか。

明治は、エース格の手嶋と今シーズン好調の富田を補欠に残し、全日本大学駅伝で自信をつけた大保と、チーム内一番の好調と伝わる長倉を8区、10区に配置しているのが望み。

往路終了時点では上に挙げた中で最下位ながらタイム差もそれほどなく、往路のように区間配置さえ間違わずに好調の選手から優先して使えれば、シード確保の可能性はまだまだあるはずだ。

予選会最上位の往路7位・順天堂は、清水、真砂、西澤の箱根経験者をどこに起用してくるかだが、それにしてもまだ安泰ではない。

東京国際は、佐伯、芳賀の経験者をエントリー変更で起用してくる見込みで、精神的に余裕を持って走れれば、二年連続のシード確保は十分可能だろう。

神奈川拓殖は、戦力的には苦しいが、6区、7区でいい流れを作り、終盤の粘り込みにかけるしかない。

城西は、経験者の雲井がどこかには入ってくることが見込まれるが、戦力的に正直厳しい。

 

今回の駅伝の今のところ最重要テーマとなっている「ミスをいかに出さないか」。

往路のまとめそのままに、ミスのない、あるいは出しても限りなく少ない大学が、シード圏内を確保するだろう。

新型コロナウイルス感染拡大のため、開催されるかどうか危ぶまれたが、観戦自粛を求める形で開催される。

例年、かなり時間をかけて展望をするが、今年は個人的な事情であまり時間がない。

簡単に上位の順位予想と展望を述べることにする。

 

四強とも五強とも言われる今回の戦国駅伝。

上位の順位付けは、やはり迷った。

その中で、最も重視したのは、「チーム全体を見まわして基本的に上級生の力があることプラス下級生の突き上げのバランス」だ。

青山学院大学の原晋監督が常々言っていることだが、最終的に「大学スポーツは四年生が主役」だと、筆者も考えている。

実業団とは違い、四年間で一サイクルという特性上、その四年生の充実ぶりがある程度チームの勢いを決める。

 

 

優勝:青山学院大学

上でも述べたが、青山学院の強さは、上級生が下級生を支えているところだろう。

例年の原監督の起用法を見ると、往路は思い切って勢いのある下級生を使い、復路に経験のある上級生を配置してくることが多い。

そういう傾向からすると、3区に全日本大学駅伝でも快走を見せた期待のルーキー・佐藤一世を起用か。

4区、5区も湯原、飯田あたりのエントリー変更があるかもしれない。

主将・神林は復路7区あたりの起用が濃厚と見ている。

いずれにせよ、神林、新号、松葉という上級生を復路に投入できる区間エントリーは心強い。

今年も、終わってみればやっぱり青学かとなりそうな予感がする。

 

2位:明治大学

例年、4年生がまともに走れることの少ない大学だが、今年は4年生が6人、3年生が4人と、上級生が過半数を占め、上級生の充実ぶりは目覚ましい。

特に、以前は上級生になるにしたがってジリ貧傾向が顕著だったにも関わらず、今年は4年生になってから自己ベストを更新した選手も多く、就任四年目の山本佑樹駅伝監督の手腕の確かさを示している。

直前の記録会で途中棄権した鈴木の怪我の回復がカギだが、伝え聞くところによると昨年どおり5区を走れそう。

鈴木が5区と仮定すると、3区には小袖、4区は櫛田か富田、7区か9区にエース格の手嶋が起用できる。

1万メートル28分台を持つ選手が14名もおり、当日の変更を含めてメンバーを読むことも予想しづらい。

裏を返せばそれくらい戦力が充実しているということ。

4区金橋をそのまま走らせるのであれば、手嶋、富田といった主力級を復路7区、9区あたりに当日のエントリー変更で置いてくることも予想され、終盤まで上位争いがもつれた場合には手堅く順位を確保するだろう。

 

3位:駒澤大学

全日本大学駅伝の優勝で勢いに乗る駒澤。

「復路の駒澤」と呼ばれることが多いが、エースの田澤を順当に2区に起用してきた。

ここ十年ほど、例年往路に苦戦して早々と優勝争いから脱落することが多かった駒澤。

大八木監督の田澤2区起用は、並々ならぬ優勝への執念を感じる。

1区でトップから30秒以内くらいで田澤につなげれば、田澤の走力からして2区で大きな貯金を貯金を作って往路の主導権を握ることができる。

期待のルーキー・鈴木芽吹を、4区あたりに起用してくるのだろうか。

5区、6区にやや不安を抱えるが、往路で主導権を握り、山の区間をうまく乗り越えられれば、そのまま突っ走る展開も考えられる。

 

4位:東海大学

一昨年の優勝、昨年の2位を経験した黄金世代6名の抜けた戦力ダウンは大きいが、それでも4年生の名取、西田、塩澤が主力として、全日本大学駅伝は2位を確保した。

区間が10に増える箱根では、全日本よりも苦戦は免れられないと思うが、それでも全日本で区間新の快走を見せた長田を区間エントリーで隠すことなく9区に配置しているところに、両角監督の自信がうかがえる。

塩澤は1区か3区。

あるいは本間も往路に投入してくれば、往路で大きく出遅れることはないだろう。

9区に長田を置いていることが、他大学から見ても、脅威に感じるに違いない。

 

5位:早稲田大学

1万メートル27分台ランナー二人を抱え、「爆発力」という点では、今年度の箱根駅伝で最もあるのがこの早稲田だ。

他にも力のあるランナーは多く、順当に力どおりに走れば上位3校に入ってくるだろうが、故障者または故障明けの選手がいて、そのあたりで力が額面通りに発揮されるかが不透明ということで、予想はこの順位にとどめた。

中谷の使いどころに興味が集まるが、もしかすると1区もあるのかもしれないと考えている。

ただ、宍倉を復路に起用できると思われ、ある程度上位で往路を終えられれば、常に5、6位以内でレースを進めることは可能だ。

3年生は充実しているが、4年生がメンバー登録に二人のみと、今年優勝争いをするには一枚足りないと見ている。

 

6位~9位:東洋大学

全日本大学駅伝では、例年になくマークが薄れたが、それでも終わってみれば6位と、一昨年まで11年連続して箱根駅伝で3位以内に入る駅伝強豪校の底力は見せた。

エース西山は、全日本大学駅伝で7区の区間11位と、昨年来の不調から脱出できていない印象なのが気がかりだが、それでも本来の力さえ発揮できれば、チームを流れに乗せることはできる。

個人的には1年生のときに快走した1区がやはり合っていると思う。

ただ、西山以外に爆発力のある選手はおらず、全日本同様、我慢の駅伝となりそう。

ブレーキが起きると、シード権確保にも黄信号がともるほど苦戦が予想されるが、例年堅実に走る箱根の経験を買い、このくらいの順位ではとどまれると見ている。

 

6位~9位:帝京大学

例年、上級生になるほど力をつけてくる印象の帝京。

今年も12名の3、4年生がチームを引っ張る。

そんな中、帝京の将来を引っ張るであろう1年生の小野が補欠登録。

4区あたりの起用があるか。

シード圏外に飛ぶことは、考えにくい。

 

6~9位:國學院大學

土方、浦野など、昨年3位の原動力となった世代が抜けた穴は、やはり影響して、昨年同様の3位争いは正直厳しい。

エース格の藤木と中西大翔が引っ張るが、藤木は補欠登録。

他大学も4区に当日のエントリー変更で有力選手を起用してくることが考えられるだけに、4区の起用があるかもしれない。

そうなると往路5位以内を確保し、この学校もシード圏外に飛ぶことはほぼないだろう。

 

6~9位:順天堂大学

上位を脅かす大学の候補として、この大学を忘れるわけにはいかない。

スーパールーキー・三浦に注目が集まるが、こちらも3、4年生が11名を占める選手層の厚さがある。

三浦にマークが集まる中、上級生として期するものは並々ならぬものがあるはず。

補欠に回った主将・清水は山での起用だろうか。

この大学もシード権を落とすことは考えにくい。

 

10位シード争い:中央大学

こちらもスーパールーキー吉居を抱えるが、区間エントリーを見る限り、復路の起用だろうか。

箱根の予選会や、トラックレースでも、今年は例年になく安定感が光り、大きな失敗は考えにくい。

久々のシード復帰は大いに考えられる。

 

10位シード争い:日本体育大学

全日本大学駅伝では、1区の17位出遅れが響いて、上位に顔を出すことはなかったが、それほど力のない大学とは思わない。

1区には大内や森下あたりを起用し、出遅れを防ぐのだろうか。

 

 

 

今年はエントリー変更が例年以上にも増して妙がある。

特にエントリー変更で、層の厚い大学は4区に有力選手を投入してくることが考えられ、今年の鍵は意外と4区になる気がする。

 

今年ほど、優勝争いに注目が集まることは、ここ何年かではなかったことだ。

それだけ優勝を狙える大学が今年は多く、非常に楽しみだ。

〔往路評〕

 

1区

NIKE社製の厚底シューズ、ほぼ無風で気温が7℃~9℃という長距離には絶好の気象条件が相まって、冒頭からハイペースでレースが始まった。

最初の1kmが2分46秒、3kmが8分39秒というのは、1万メートルでも28分台の早いペース。

ほぼハーフマラソンと同じ距離の21.3kmを走りきる中では壊滅的なペースかと思われたが、1時間1分台で走破した選手が8人も現れたように、これで押し切ってしまうのには驚いた。

 

ひと昔前は、5000mや1万メートルのタイムのみで、ハーフマラソンの公認記録のない選手が箱根駅伝の区間に出走していることもそれほど珍しくなかった。

ただ、近年急速にレベルアップした箱根駅伝においては、そういった選手はほとんど見られなくなった。

ましてや、この日のハイペース1区では、やはり1万メートルが28分台なおかつハーフマラソンの持ちタイムがせめて1時間3分台であるという、タイムの裏付けのないランナーから次々と脱落していくことになった。

 

その中でも光ったのは國學院・藤木だ。

最後は創価・米満に交わされて区間2位にとどまったが、全日本3区12位に沈んだ走りとは別人のようだった。

昨年の箱根では1区で10位ながらトップとは22秒差、今年の出雲の1区では日本人トップとはわずか6秒差の5位と1区での好走が続いていたように、本来1区に向いた選手だ。

終盤9人が残った集団では最も楽そうに見えた中で、残り3kmからのロングスパートは圧巻だった。

スパートが早すぎたと見る向きもあるが、1万メートルの持ちタイムが28分46秒と、この日の1区の終盤まで集団を形成していた他大学の選手からは10秒程度劣るものだったので、ラスト勝負には持ち込みたくなかったのだろう。

1時間1分30秒台までに8人が襷をつなぐというところまで区間のレベルを最終的に押し上げたのはこの選手だと思う。

 

その中で意外だったのは、過去2年この1区で好走していた東洋・西山。

中継で言っていたが、今シーズンは剥離骨折の影響で夏場に十分な走り込みができなかったとのことで、それならサバイバルの様相を呈したハイペースのレースの中で脱落していったのはやむを得なかったか。

ここで2分02秒ものビハインドを負ってしまったことが、後に続くランナーの心理に大きな影響を与えたことは間違いない。

 

東海・鬼塚は、軽快に集団を引っ張りハイペースのレースを演出する引き立て役に回ってしまった感はあるが、それでも区間4位のトップとは10秒差なら、東海としては御の字だっただろう。

 

 

2区

ここは、後方から東洋の相澤と東京国際の伊藤の二人の集団の追い上げ、拓殖・レメティキの単独走、そして中盤まで7校の集団で展開された先頭集団と大変見どころが多かった。

 

青学・岸本は、いくら力のある1年生とはいえ、駒澤のスーパールーキー・田澤が3区に置かれたように、力のある1年生でもさまざまなプレッシャーを考えて2区には置きづらいのがたいていの監督の心理だろう。

そんな中で、エース区間の2区起用はいくらなんでも荷が重すぎると筆者は見ていた。

だが、序盤で先頭との18秒差を追いつき、すぐに7校の集団に加わって終盤まで我慢し、最後に飛び出すという円熟味さえ感じさせられた走りには驚いた。

駅伝強豪校出身ではないため、駅伝と言えば中学駅伝や都道府県対抗駅伝の場しかなかったはずが、まるでこれまで駅伝で経験をたくさん積んできたかのような鉄則に沿ったクレバーな走りができたのは、原監督の指導が行き渡っていることの証明だ。

逆に言えば、だからこそ原監督は自信を持って岸本を2区に送り込んだのだろう。

 

相澤がついに2区23.1kmで1時間5分台に突入する驚異的な区間新記録を叩き出した。

襷を受け取ったときにわずか13秒前に伊藤がいたという展開も、一緒に追い上げる効果が生まれ、大記録誕生に大きく幸いしたように思う。

相澤の走りも圧巻だったが、あと8kmも残した15kmあたりから苦しそうな表情になった伊藤が、時折相澤に置いて行かれそうになりながらも必死の形相でつき、時には前に出た粘りの走りも見事だと思った。

次の3区の青学・鈴木にも共通するが、本当に強い選手は、一度落ちたり落ちかかったりしたときになんとか食らいついて、ずるずると下がることをしない底力を持っている。

伊藤の走りにはそんな魂を見た。

 

上に挙げた各大学のエースの快走に隠れてしまったが、明治の1年生・加藤の走りも触れておかなければならない。

同じ1年生・岸本とはわずか49秒差の1時間7分52秒。

従来の箱根2区の1年生に限っての最高記録が1時間8分台なので、加藤も岸本と並び“1年生区間新”の快走をしている。

走る前はこの区間を走る選手の中で力としては20番目、つまり最下位の選手と目されていたが、これほどレベルの高かった区間で10位の快走だ。

しかも駒澤・山下、社会人経験後に入学した日大・ドゥング、創価のエース・ムイルを上回っての快走だ。

山本監督が、入学以来大きな期待を寄せて夏の故障後もじっくりと育て、何とか上尾ハーフマラソンに間に合わせるなど、将来を見越した英才教育を施しているが、その期待や信頼の高さに対して走りで応えて見せた。

岸本や駒澤・田澤と並び、こちらも阿部の抜ける来年以降に明治の大エースになり得る期待を抱かせた。

 

 

3区

駒澤・田澤が評判に違わぬ走りを見せた。

高校の時から、他選手がどうこうというよりも、自分の空気を作り、大きなゆったりとしたフォームで自分のリズムで押し切ってしまうレーススタイルだ。

13位で受けた襷を7人抜いて6位で4区につないだが、抜くときに後ろにつけるとか、抜いた後にペースを落として集団にして様子を見るとか、そういうことが一切なく、他校の選手がいようがいまいがペースを変えることなく最後まで押し切ってしまうスタイルをこの日も貫いた。

こういう選手にはエースの強さがある。

来年以降間違いなく2区を担うエースになるだろう。

 

東京国際・ヴィンセントが一人異次元の走りをして先頭に立ち、2位以下に1分21秒もの大差をつける中、青山学院・鈴木が粘りの走りを見せた。

ヴィンセントに抜かれるまではトップを守り、岸本で作った良い流れを手放さなかったことが、青学の往路優勝を呼び込んだと言っていい。

2区のところでも少し触れたが、終盤5kmくらいからは表情が厳しくなり、残り3kmあたりからは体も明らかに動かなくなり、一時は國學院・青木に前を譲るほど苦しい走りとなったが、そこから底力を発揮して最後は抜き返し、秒差でも前で襷をつないでみせた。

この踏ん張りがなかったら、次の4区の吉田祐也の区間新はなかったと思われる。

鈴木は昨シーズンからケガに泣き、決して万全の状態では挑めなかった大学3年生と4年生時だった。

今シーズンは出雲には出場せず。

先の全日本でも4区で区間7位の凡走で流れを引き寄せられず、チームの優勝を逃す一因を作ってしまっていた。

ただ、箱根には2年生から出場し、1区(5位)、10区(2位)、そして今日の3区(4位)と好走。

しかも、いずれもプレッシャーのかかる場面での出走であり、その区間順位以上にチームに流れをもたらしたり、取り戻したり、決定づけたりする「ゲームチェンジャー」の役割を果たしてきた。

まさに「箱根男」といえる大学競技生活の最後を締めくくるにふさわしい走りをした。

 

上位陣では駒澤・田澤のインパクトが強く、陰に隠れがちになったが、帝京・遠藤と國學院・青木も、力どおりの走りでそれぞれ区間2位と3位に入った。

一方、東海・西川、東洋・𠮷川は不発に終わってしまった。

遠藤や青木などこの日上位に来た選手に共通して言えることだが、3区のポイントとなったのは、「自分のリズム」で走れたかどうかだ。

1区からのハイペースのレースの流れが続き、3区にしては例年以上に順位の入れ替わりが激しい区間となった。

その中で、前の選手に追いついたり、後ろから来た選手に追いつかれたり、あるいは追いつかれた選手が前に行ってしまい再び単独走になったりと、ひとつの区間の中で局面がめまぐるしく変わる場面がどの大学にもあった。

そんな中で、ヴィンセント、田澤、鈴木、遠藤、青木、明治の手嶋と、自分のリズムで走れる選手を置けた大学が浮上した区間だったように思える。

来年以降もこの区間は高速区間で変わらないだろう。

駆け引きというよりも、自分のリズムで走れる選手を置けるかどうかで差がつく区間となるだろう。

 

 

4区

4区は従来からつなぎの区間と言われるが、坂がいくつも存在する難しいコースだ。

距離が短めなわりに例年快走や逆に失速が見られ、差が付きやすく、山に向かう流れを作る区間だ。

以前は往路では最も力のない選手が置かれるのが定番だったが、最近はそれを逆手に取り、ここで差をつけたり挽回したりするべく、準エース級を置いて流れを作る学校もある。

 

そういった気概の見えた大学が、青山学院、東海、國學院だ。

それぞれ吉田祐也、名取、期待の1年生中西大翔と、力のある選手を置いてきた。

名取は先の全日本で大学駅伝初出場で箱根駅伝は初出場。

全日本は、首位青学と2秒差で襷を受けたがすぐに抜き、あとは独走でゴールだったので、前とは30~40秒差で襷をもらうというのは初めての展開だ。

そして中西は当然箱根駅伝初出場、しかも青学とは秒差で襷をもらうというプレッシャーのかかる展開と、名取、中西とも難しい局面だった。

そんな中、青学・吉田祐也が区間新の快走を繰り広げ、中西や名取からすると、どんどん吉田の姿は小さくなっていったはずで、精神的にやられてもおかしくはない展開となったが、それぞれペースを崩すことなく、名取が区間2位、中西が同じく3位と、力を発揮したのは立派だった。

他にも創価・福田、駒澤・小島、帝京・岩佐、早稲田・千明と、爆発力はなくても堅実に走った選手が区間上位かつチームの順位を引き上げた。

4区は、難しい局面になることが多く、我慢が必要な区間といえ、精神的に強い選手を置けるかどうかで差がつく区間といえるだろう。

 

 

5区

前々回大会から距離が短縮されたことと、各校とも山上り対策が進んだことから、極端なブレーキが起きることが以前よりも少なくなった。

少し前なら「山の神」と言われるほどのタイムを出すランナーが、新コースになってから毎年数人同時に出ているとう状況だ。

つまり、全体的に5区のレベルが高くなったことを示している。

逆にいえば、そんな中でも順位を大幅に上げてくるランナーは、相当強いということになる。

この日でいえば、東洋・宮下、法政・青木、明治・鈴木だ。

他、元々上位で襷を受けているので順位の大幅な変動はないが、青山学院・飯田、國學院・浦野も同様だ。

宮下の快走は失礼ながら意外だったが、それ以外の5区快走ランナーに共通しているのは、各選手はそれぞれチームのエースや準エースと言えるほどの平地での走力の高さを持つことだ。

以前はトラックやロードの持ちタイムがそれほどでなくとも、突出した山上りの適性の高さで区間上位に来るランナーもいたが(東洋大学時代の柏原竜二がその例)、近年では1万メートル28分台のタイムを持つランナーを投入してくることが当たり前になってきた。

以前ほど28分台が珍しくなくなってきたというのもあるのだが、山上りとスピードが無関係ではないという認識が浸透してきたことも間違いなくあるだろう。

 

そんな中、宮下が区間賞の輝きを放った。

トラックのタイムが平凡なのは、トラックよりもロード、駅伝に重きを置く東洋大学だからなのかもしれない。

 

 

〔各大学往路評と復路展望〕

 

1位:青山学院

筆者は事前に、往路4区区間新の吉田祐也(祐の字は正しくはへんが「示」)を1区に置き、1区に入った吉田圭太は4区に投入されるのではないかと逆の配置を予想していた。

だが、ふたを開けてみれば、エースの吉田圭太を惜しげもなく1区に投入してきた。

これは、原監督の執念の采配だと感じる。

選手層が例年よりも薄く、復路に不安を抱える青学にとって、往路は何が何でも往路優勝を手にして、なおかつライバルの東海、東洋、駒澤に1秒でも多く差をつけて復路を迎えたいと思っていたことだろう。

したがって、序盤からレースの主導権を握るためにも1区にエースを起用してきた。

もちろん2区の1年生岸本を楽に走らせるためにそうしたととれないこともないが、なによりもこの気概がチーム全体にメッセージとして伝わり、選手に「やってやるぞ」という気持ちにさせた。

原監督は、指導力の高さだけでなく、こういったチームをやる気にさせたり奮い立たせたりすることが実にうまい。

ただ、國學院と1分33秒差、東海と3分22秒差は、まだ安全圏とはいえない。

まず6区、7区の入りに全神経を集中させるだろう。

当日エントリー変更が見ものだ。

 

2位:國學院

往路優勝を狙っていたので、この結果には納得がいっていないだろう。

だが、往路2位は大学史上最高成績。

総合成績でも昨年の7位が過去最高なので、全体を見ると上々に過ぎるといってもいいだろう。

なんといっても駅伝は流れ。

良い流れを手放したくない。

今シーズン優勝した出雲、全日本と二つの大学駅伝を見ても、大崩れする選手はおらず、復路で順位を落とすことはあっても、5位以内には確実に残ってくるような気がする。

 

3位:東京国際

これ以上考えられないというくらいの往路の結果を残した。

予選会を1位で通過し、全日本でも4位でシード権を獲得と、チームとして乗りに乗っている流れを簡単に消したくはない。

復路に若干の不安はあるが、それは総合優勝争いをする一握りの学校を除いてどの学校も同じこと。

4区と5区途中まではジリ貧に映ったが、5区の最後で山瀬が東海・西田を再び交わし突き放してゴールした姿は、復路の選手に勇気を与えたはずだ。

シード圏外に飛ぶことは考えにくい。

 

4位:東海

3分22秒差は、想定していたよりも1分半ほど悪いと思うが、到底無理というほどではない。

昨年も8区で逆転し初優勝と、もともと追うことが得意な大学なだけに、駅伝でよく言われる後ろから追いかけるという心理的なビハインドは、この大学に限っては思ったほどはないだろう。

まずは7区終了までに首位と2分程度に詰めれば、まだまだ総合優勝は十分にあり得る。

10区での逆転ということまで視野に入れ、あくまでも総合優勝するために万全のレースをしてくるだろう。

 

5位:明治

例年、区間の終盤に垂れたり、どこかで大ブレーキを起こして圏外に飛ぶということを繰り返す大学だが、今大会に関してはこれまでブレーキがなく順調だ。

山本監督に替わって二年目、約束事や走り方が以前よりも徹底されつつあり、チームとしての体を成してきた感がある。

最後に垂れるどころか伸ばす選手が多いところに、チームとして変わりつつある姿を見ることができる。

今大会に関しては、時計を見ることを禁じているという。

「駅伝は流れだ」という山本監督の信念のもと、あえて設定タイムなどはうるさく告げず、あくまでも周りとの関係から流れに乗るというスタイルを、往路の選手たちがよく体現してみせた。

これは他大学にも教訓として言えることで、ハイペースで流れているレースにおいて、設定タイムを細かく指示されている(と思われる)大学、選手が伸び悩む姿が見られる。

時計を見ると「早すぎる」と怖気づき、自制してしまう選手もいるからだろう。

ただ、昨年までのレースぶりからは、見ている側からすると信頼が置けないのも事実。

故障上がりで、復路に起用してくると思われる阿部に多大な期待をするのも酷。

変に上位への色気を見せず、まずは10位以内シード権獲得を確実にするという走りが大事だろう。

 

6位:帝京

目だったのは3区・遠藤くらいだったが、大崩れなくここまできたのは、実にロードに強い帝京らしい。

このくらいの順位で推移し、シード圏外へ飛ぶことはないだろう。

 

8位:駒澤

復路の選手層の厚さと言えば、東海に匹敵するものがある。

6区の中村大成、9区の神戸にゲームチェンジャーとしての期待がかかる。

先頭争いまではないだろうが、間違いなく順位を上げてきて、最終的には3位もあり得るのではないだろうか。

 

9位:早稲田

あまりいい流れできたとはいえないが、なんとか最低限踏みとどまってきたという印象だ。

出だし6区で流れを作れなければ、圏外へ飛んでもおかしくはない。

積極的に区間変更して攻めの駅伝をしてくるかに注目だ。

 

11位:東洋

最も誤算だったのがこの大学だ。

二区間で区間新を出しながらのこの順位は、流れを完全に手放してしまっていることの証明だ。

1区西山で流れを作れず、2区相澤で首位が見える位置まで追い上げてきたが、3区吉川で再びブレーキとちぐはぐだ。

例年、序盤から着実に上位につけて、流れを呼び込む駅伝を展開してくるのが東洋だが、今シーズンは全日本でそのような展開とはほど遠く、東洋らしくないと思っていたが、この大事な場面でもそれが出てしまった。

一つでも順位を上げていくしかない。

 

 

優勝争いは青学、國學院、東海の三校に絞られたか。

その中でも、青学、東海はまだ6:4くらいの確率はあると筆者は見ている。

 

シード争いも例年以上に熾烈だ。

5位明治から12位中央学院まで2分6秒差に8チーム。

この間、秒差の学校も何校かあり、6区スタート直後から集団になることも考えられる。

例年以上に神経を使う復路の出だしとなりそうだ。

一時的には追いつき追い越されがあるかもしれない。

だが、終盤にいくにつれてプレッシャーが大きくなるので、やはり前を走っていた学校がまた突き放す場面が例年多い。

終盤を迎える前にもともといい位置でレースを進めることが有利には違いなく、なかなか見て思うよりは大逆転は起きにくいものだ。

6区、7区で失敗のない学校がシードを獲得するだろう。

 

間もなく、第96回箱根駅伝がスタートする。

このブログはここ何年か箱根駅伝のためだけに書いているが、今年もそれを継続して予想してみたい。

 

 

優勝:東海大学(出雲4位 全日本優勝)

東海大学の二連覇が濃厚と見ている。

選手層の厚さで他大学からは抜きんでている。

区間登録されているメンバーがそのまま走っても十分だが、当日のコンディションを見てより調子のよい選手を起用するものと見られる。

2区は塩澤がエントリーされている。

スピードの裏付けはあるが、距離とラスト3kmの上りに耐えうるかは未知数である。

その点、当日のエントリー変更があるとすれば館澤、阪口あたりか。

唯一不安があるとすれば、昨年6区区間2位の中島怜利が使えなかったところだが、2区に入らなかった場合の舘澤、阪口か松尾を起用するのだろうか。

万一他大学の後塵を拝することがあっても、7区までに2分程度のビハインドであれば、昨年同区間新記録の8区小松、そして9区に入れてくると思われる全日本8区区間賞の名取で十分に逆転できると見る。

 

 

2位:駒澤大学(出雲2位 全日本3位)

2位は、駒澤と東洋で迷ったが、穴の少なさに分があると見て駒澤とした。

「復路の駒澤」と言われるように、例年、1区、2区で多少後ろになっても耐え凌ぎ、後半にいくにつれて堅実に巻き返してくるイメージだが、今年は戦力も充実しており往路から積極的に選手をつぎ込んでくることができる。

なんといっても注目はスーパールーキーの田澤だ。

大八木監督は往路のどこかで起用すると明言しているが、3区か4区だと思われる。

他大学のメンバー配置を見て決めるために大八木監督は田澤を補欠に回したのだろう。

攻めなら3区で東海・西川、青学・鈴木、東洋・𠮷川の各大学準エース級にぶつける。

田澤にプレッシャーなく走らせ、来年以降のエースにするために大事に育てたいのなら、4区だ。

全日本では東海・松尾、青学・吉田圭太、東洋・定方のエースまたは準エース級が揃う7区にぶつけてきたことからすると、3区だろうか。

いずれにしても、田澤の起用区間に注目が集まる。

他、出雲、全日本とも安定した走りを見せた小林も田澤の起用区間の裏返しの3区か4区、小島の7区起用が濃厚か。

総合力では東海に対して分が悪いが、できれば復路の終盤まで競る展開に持ち込みたい。

 

3位:東洋大学(出雲3位 全日本5位)

3位とは予想したが、東海に泡を吹かせる一発があるとすればこの大学だと思っている。

毎年そうだが、酒井監督の区間エントリーを見ると、1~3区に西山、相澤、吉川とエース、準エースを惜しげもなくつぎ込み序盤に重きを置いた配置で、レースの主導権をまずは握りたい意図がはっきりと見え、実に正攻法だと感じる。

3区までにできれば1分以上の差を後続につけて、他大学を焦らせる展開に持ち込めれば、5区にはおそらく当日エントリー変更で入ってくる昨年5区を経験している田中がリードを守り切り、往路優勝をするという青写真を描いているのではないか。

復路はやや手薄にも感じるが、往路で総合優勝が狙える位置につけられれば、7区、8区、10区には今のところ1年生を配置しているが、当日エントリー変更で大澤、蝦夷森といった上級生を起用してくることも考えられる。

 

 

4位:青山学院大学(出雲5位 全日本2位)

4連覇、そして2位でフィニッシュしたここ5年と比べると、最も選手層が薄く感じる。

それが2区に1年生の岸本を起用せざるを得なかったことにも表れている。

もちろん、岸本は出雲で2区1位、全日本でも2区5位と結果は残している力のあるルーキーで原監督が信頼をおいて器用していると見ることもできるのだが、それでも箱根未経験で距離も未知数の1年生に2区というのは荷が重すぎる気はする。

本当であれば往路なら4区、あるいは復路で起用したかったところだろう。

2区岸本にかかるプレッシャーを少しでも軽減するためにも、1区の出遅れは許されない。

おそらく当日エントリー変更で吉田祐也(※「祐」の字は正しくはへんが「示」)を入れてくるのではないか。

2区岸本がある程度持ちこたえてくれれば、3区鈴木で先頭争いには持ち込める。

4区は当日エントリー変更でエース吉田圭太か。

5区には1年生の昨年から箱根を走った経験のある飯田、6区にはスピードランナーの谷野を置いているが、不安はぬぐえない。

復路で挽回できるのは、おそらく7区か10区での起用が見込まれる湯原くらいであり、往路では他大学に1秒でも先んじて襷をつないでおきたい。

 

 

5位:帝京大学(出雲7位 全日本8位)

今年の三大駅伝の二つ、出雲、全日本では不振だったが、それでもこの順位でまとめてきたのは力のある証拠だ。

1区は田村を置いているが、他大学の様子を見て、ハイペースになりそうもないならそのまま出走させ、ある程度ペースが上がりそうなエントリーなら、スピードのある谷村か小野寺の起用か。

スピード勝負というよりは粘りが身上の帝京としては、スローで流れてほしいところだろう。

元々復路には定評のある大学だが、今年も駒自体は揃っている。

上位4強に食い込む力のあるダークホースだ。

 

 

6位:國學院大學(出雲優勝 全日本7位)

出雲で三大駅伝初優勝を果たした今シーズンだが、全日本はその反動からかやや調子を落としていた印象で、島崎、藤木の序盤で出遅れてしまったことが7位に沈んだ原因だ。

それだけにこの箱根は序盤は細心の注意を払って入りたいところだ。

藤木は本来なら1区向きの選手で、調子が戻っているなら1区起用が濃厚か。

5区には絶対的な信頼のあるエース浦野が、また2区、3区にも土方、青木と駅伝では着実に外すことのない走りをする選手を置いているだけに、さらに攻めて往路優勝を狙うなら4区には期待の1年生中西大翔をつぎ込む可能性がある。

逆に往路優勝にこだわらず総合成績を上げたいなら、あるいはチーム全体として調子のいい選手が多いなら、7区に起用してくることが考えられる。

 

 

ここまでは順位で予想した。

 

 

ここからは10位以内のシード権争いの観点で述べる。

 

7~10位あたりには入り、シードがほぼ確実だろうと思われる「シード争いAグループ」、シード争いには絡んでくるだろうと思われる「シード争いBグループ」、そして、ミスが少なかったり、力どおり発揮できたりした場合にシード争いに加わってくるだろう「シード争いCグループ」の三つに分けてみた。

 

 

◎シード争いAグループ(二校)

 

A-1:順天堂大学(出雲8位 全日本9位)

全日本では6区まで2位を走るという大健闘を見せたが、終盤二区間で順位を大きく下げて9位とあと一歩でシードを逃した。

往路メンバーを見るとある程度戦えるので、復路で順位を落とさない配置にしたい。

橋本を3区、経験者の野田が復調していれば復路での起用が考えられる。

いずれにしても、堅実なメンバーが揃っており、シード圏内は外さないと見ている。

 

 

A-2:中央学院大学(出雲11位 全日本10位)

主将の有馬は4区での投入が考えられ、山上りに向けて流れを作りたい。

当日エントリー変更で6区にスピードのある高橋、9区には出雲、全日本で目処がついた城田、永山の起用が考えられ、比較的穴が少ない。

例年出雲や全日本よりも、距離が延びる箱根で強みを発揮してくる大学だけに、今年もシードが濃厚と見ている。

 

 

◎シード争いBグループ(五校)

 

B-1:東京国際大学(出雲不出場 全日本4位)

箱根駅伝予選会トップ通過が伊達ではないことを、全日本4位で示して見せた。

留学生が補欠に回っているが、2区には堂々日本人エース伊藤が配置されていることから、それ以外の区間での起用だ。

普通に考えると伊藤の後の3区起用が濃厚かと思われるが、区間エントリーを見ると、それほど早くなりそうもない1区にヴィンセントを思い切って起用してくることもあるのではないかとも思う。

そうなれば、1区で後続に30秒程度の差をつけるようなことがあれば、往路で五強とも六強とも言われる一角を崩すことも考えられ、一躍台風の目となり得る。

他には6区に真船、8区に菅原のエントリー変更での起用が見込まれる。

6区を終えた段階でシード権内にいれば、大学史上初の箱根シード権獲得が見えてくる。

 

 

B-2:早稲田大学(出雲不出場 全日本6位)

箱根予選会では9位とギリギリの通過となり苦しんだが、全日本では前評判を覆しシード入りと、伝統校の底力を発揮したのはさすがだ。

昨年不振だったエース太田智樹が2区に起用された。

今年はここまで出雲、全日本とも、全盛期とまではいかないがまずまずの走りを見せており、復調気配。

この調子なら2区で戦えると見込まれての起用だろう。

他に、来年以降のエース中谷、実力のある新迫、三上、期待の1年生井川が補欠に回り、交替枠4つを全て使い切り、当日締め切りギリギリまで配置を考えて全力でシードを取りにくる。

正直、持ちタイムも枚数も足りないことは否めないが、全日本で見せたような伝統に基づくチームとしての「経験」が生きれば、シード権獲得は十分にある。

 

 

B-3:明治大学(出雲不出場 全日本15位)

こちらは早稲田と同様に伝統はあるが、逆にチームとして作り替え途上にある大学だ。

故障上がりの大エース阿部を補欠に回したのはうなずけるが、主力の手嶋を補欠に回した意図は何だろうか。

最大の謎は2区加藤、3区小澤の配置だ。

どちらも来年以降のチームの中心となり得る好素材なだけに、復路で経験を積ませたかったところなので、「当て馬」の配置とすれば残念だ。

個人的には、二選手は当日そのまま走らせてもらいたいが、あるとすれば準エースにまで育った今年度進境著しい手嶋が2区か3区かのどちらかに入ってくること。

その手嶋を9区に置いてくれば、山本監督が来年以降を見据えている覚悟が見て取れると思う。

阿部は7区、あと一人期待の1年生櫛田は8区、9区、10区あたりの終盤の起用が濃厚か。

このチームに足りないのは経験。

それが露呈したのが15位に沈んだ全日本。

4年生が三人しかエントリーされていないことは、考えようによっては幸いだ。

今回下級生中心でシードが取れたら大きな自信になるし、たとえシード権が取れないにしても下級生には「大学駅伝」の経験を積んでほしい。

 

 

B-4:日本大学(出雲不出場 全日本不出場)

このチームも明治大学と似ており、伝統校の生まれ変わり途上という状況だ。

岩城、松岡、そして1年生ながら1万メートル28分台をたたき出した樋口と、久々に1年生に力のある選手が揃っている。

これらの選手は7~9区の投入が考えられる。

往路で一桁順位でくれば、ここ10年で一度しか取れていないシード権の獲得が見えてくる。

ここも来年以降の足掛かりとなるレースにしたい。

 

 

B-5:中央大学(出雲不出場 全日本不出場)

この大学も、区間エントリーが非常に謎を呼んでいる。

池田、三浦、舟津、岩佐といった本来区間に入ってくるべき選手が軒並み補欠に回っている。

また、スピードのある中距離ランナー田母神も補欠だ。

おそらく池田、三浦は3、4区に、舟津は6区に当日入ってくるのではないか。

岩佐、田母神は、復路での起用が考えられる。

交替枠4つをフルに使っての戦いになり、うまくはまればシード争いには十分入ってくるだろう。

 

 

◎シード争いグループC(二校)

 

C-1:拓殖大学(出雲9位 全日本16位)

主将赤﨑の起用のしどころがカギだ。

1区での起用なら2区レメティキと合わせて稼げ、ある程度の好位置で序盤を乗り切れる

清水、竹蓋は6区、7区あたりの起用か。

出雲、全日本とも起用されている1年生の佐々木は期待の表れか。

8区か10区での起用が考えられる。

ここ数年成功している5、6区の山区間だが、今年は不安がある。

山をどうしのぐかがシード争いに加われるかどうかに大きく関わってくる。

 

 

C-2:日本体育大学(出雲不出場 全日本14位)

廻谷、岩室の往路区間を使われてもおかしくない選手が補欠に回っている。

廻谷はおそらく昨年同様6区、岩室、藤本が4区、5区あたりに当日入ってくるのではないか。

期待のハーフマラソン1時間2分台を持つ藤本の使いどころが見ものだ。

 

 

 

筆者は東海の二連覇が濃厚だと見ている。

一時代を築いた青学が踏みとどまれるか、久々の駒澤の復権なるか、11年連続3位以内の東洋がさらにその記録を伸ばすかにも注目だ。

今年は上位と中・下位の力差がはっきりとしており、ここで述べたシード争いA~Cグループの学校が上位六校の間に加わってくることはあまり考えにくい。

それだけに7~10位をめぐって八~九校が争うという例年にもましてシード権争いが熾烈になることが予想される。

 

〔往路評〕

 

第1区

スタート直後の大東文化・新井の転倒のアクシデントには、見ていて思わず声が出るほど本当に驚かされた。

転倒直後は、足を引きずって走り出し、それ以後の21km余りを走りきることなどとても不可能かと思われた。

個人のレースだったら間違いなく棄権していただろうレース中の大きな故障だ。

だが、途中持ち直し、最後は足を引きずりながらも走りきり襷をつないだことは驚異的だ。

普通の精神状態だったら、とてもではないが激痛に耐えながら21kmも走りきることなどできない。

だが、駅伝に出場している選手は、とても「普通の精神状態」とは言えない。

これが、全員で襷をつないで成立する駅伝という競技の「魔力」であり、また「魅力」でもある。

 

今後「なぜ、競技を続けさせた」等、物議を醸すことは間違いない。

筆者も、学生の駅伝競技に関わる身なので、いろいろと思うところはある。

選手個人のことだけを考えるならば、競技をそのまま続けさせた(本人の続けるという意志があったにせよ)ことは間違いなく良くないとは思う。

だが、駅伝は襷をつなぎ切らないと競技が成立しない。

その後けがを押して走りきることで、たとえダントツの最下位にしかならなくとも、あるいは何十分遅れて繰り上げスタートになろうとも、襷が途絶えてしまうよりはチームとしてははるかに価値のあること、それが駅伝という競技なのだ。

だから、軽々しく「競技を続けさせたのは、間違いだ」などと見ている周囲の人々が断じることはできないし、してほしくない。

選手はそれくらい重いものを背負って走っているし、本人の気持ちからすると、これを最後にその後の選手生命が絶たれるほどのダメージが残ったとしても襷をつなぎ切りたいと思うのが常であろう。

新井は、卒業後も実業団で競技を続行する予定だそうだ。

この激走の代償が、競技生命を脅かすほどのものとならないよう、回復することを切に願うばかりだ。

 

 

さて、レース評に戻るが、レース展開としては序盤はかなりのスローだった。

誰が動き出すか、各選手とも待っていた感じだ。

その中から我慢できずに細かく動き出したのは、東京国際・モグス・タイタスだったが、それ以外は淡々と流れた。

他の選手からすると、これが幸いした。

東洋・西山と中央・中山は実力どおりだ。

特に西山は、六郷橋の少し前から自分で引っ張る形になり、そのまま押し切ってしまったのだから、この中では力が上だったということだ。

全日本大学駅伝までは不調が伝えられていたが、その後12月の記録挑戦会で復調の兆しが見え、ここまで仕上げることができたことは、やはり東洋のここ一番に向けての調整能力の高さだ。

その後の東洋のチームの快走の流れがこれでできたのは大きかった。

中山は一般入試からチームの準エース格にまで上り詰めてきた選手で、心情的にも応援したくなる選手だ。

かなり苦しそうな表情が続いていたが、それでもペースが落ちずに最後まで西山についていけたことは、まさに「雑草魂」の象徴のように感じた。

有力どころでは、東海・鬼塚、青学・橋詰が、爆発力を発揮することなく終わった。

スピードランナーの鬼塚や橋詰にとっては中盤までスローペースで流れてしまった展開が向かなかったし、何よりも本調子ではなかったのだろうと思われた。

それでも両選手とも首位から6~8秒差で襷をつないだので、最低限の仕事は果たしたと言える。

例年、この1区で流れが決まることが多いが、今年に関しては主導権を握れた東洋のみが成功という感じで、その他の学校については大勢に影響は少なく、1区ながら「つなぎ」の区間になった印象だ。

 

 

第2区

4~5年ほど前までは、この2区よりも次の3区の方にエースと呼ばれる選手がエントリーされることが多く、この2区は距離の踏める選手によるつなぎの区間と化す傾向だった。

しかしここ2、3年は、一色(青学OB)、鈴木健吾(神奈川OB)、外国人留学生選手、昨年の青学・森田、そしてこの日もこの区間に名を連ねた順天堂・塩尻など、昔のように「エース区間」に戻っていた。

だが、今年はまた4~5年ほど前に流行った「つなぎの区間」として用いた学校と、従来どおり「エース」を据えた学校に二分化された。

定石通りにエースを投入して、そのエースが役割をきっちりと果たしたのが、先述の日大、順天堂に加え上位校ではないが国士舘だ。

日大、順天堂がそれぞれワンブイ、塩尻によりジャンプアップした以外ではここで大きな変動はなかった。

逆に、ここを「つなぎの区間」として成功した大学は、上位校の中では東洋、東海、駒澤、國學院だ。

そんな中でも特にしっかりと役割を果たせたのが東洋・山本だ。

襷を受け取った直後から、中央のエース堀尾と並走状態。

ハーフタイムのベストでは、堀尾が山本よりも1分ほど良いタイムを持っているだけに、山本にとっては堀尾を良いペースメーカーとして進めることができた。

東洋にとっては、こういった展開になったことも幸いし、この日の往路優勝の流れができた。

とはいえ、その流れを引き寄せるのも駅伝の実力のうちだ。

例年感じることだが、選手をここに向けて仕上げ、調子を見極め、適切な区間に配置する東洋・酒井監督の指導力の高さが目を惹く。

他にも、東海・湯沢、國學院・土方、駒澤・山下は、それぞれこの区間で5位、6位、7位。

それぞれチームのエースではないところを考えると、この最長距離かつ終盤に坂が待ち受ける難しいコースをこの順位で乗り切れたことは非常に大きかった。

 

後ほど3区以降のところで書くが、2区をつなぎの区間としてなおかつそれに成功させた学校は、切り札を温存しながら上位をキープすることができ、この区間で切り札を切った学校に比べて今大会の総合優勝争いに優位に立った。

 

 

第3区

2区とは対照的に、ここにエースを投入してきたのが、青学と明治だ。

逆につなぎの意味合いを強くして選手を投入してきたのが、上位校では東洋、東海、駒澤、國學院、帝京だ。

東洋・𠮷川は、全日本大学駅伝を回避してここに照準を絞って調整してきた。

ややオーバーペース気味で入ったように見えたが、そこは首位に立ったときの東洋の戦略どおりだ。

この区間4位にまとめ、期待にきっちりと応える走りをしてみせるのだから、東洋は強い。

東海は西川。

鬼塚、阪口、關、舘澤、松尾などがひしめく3年生が黄金世代の東海において、西川は失礼ながらチーム6~7番手の立ち位置の選手だ。

その選手で各校のエース、準エース級を相手にこの区間7位、通過順位でも4位に浮上させて乗り切れたのだから、東海にとっては御の字だ。

チーム6~7番手といえば、國學院・青木もそうだ。

この区間6位で走ったのは、往路3位に入った國學院にとって、5区のエース浦野の区間新と同等に大きな働きをしたと言っても過言ではない。

帝京・遠藤は、1年生ながら1万メートル28分台をたたき出し今大会前から株が急上昇していたが、ハーフの持ちタイムがこれまでなかった。

だが、今回区間3位で、この区間でかなり早いとされる1時間02分台で走れるのだから、大学駅伝の基本の20km近辺の距離にも対応できることを証明して見せた。

今後、日本学生陸上界のエースとして成長していくことが大いに期待される。

 

青学・森田と明治・阿部はさすがの走りだった。

森田は、故障が伝えられながらも終わってみれば区間新の快走は、さすがの一言。

阿部は、区間新ペースで飛ばすものの終盤に鈍って森田に区間賞を譲ったが、襷を受けた位置が17位だったことを考えると、チームを12位にまで押し上げたのはエースとして十分な働きだったと言える。

ただ、両校とも、目指すところは「優勝」と「シード権獲得」と違うものの、ここでエースを使い切ってしまったことは共通の事実。

それでいてそれぞれこの位置(青学は僅差の首位、明治はようやくシード権ぎりぎりの位置)というのが、この後の展開に微妙に影を落としていたようにも思える。

 

 

第4区

東洋は、ここにエース・相澤を配してきたのは意外だった。

だが、昨年までと同じことをしていては青学には勝てないと考える酒井監督だ。

エントリーの段階で7区に主将で昨10区区間賞の小笹を起用しきたのと共通する思惑を感じる。

相澤は、従来の区間記録を大幅に更新する区間新の快走で、十二分に過ぎる働きをした。

東海は、ここでようやく準エース格の舘澤というカードを切ってきた。

東洋との比較では、相澤の驚異的な区間新の前に1分40秒ほど差を開かれたものの、青学には逆転してみせた。

東洋、青学ともエースを切った中、まだエースを切らずとも堂々とこの位置につけている東海には末恐ろしささえ感じた。

青学・岩見は全く見せ場もなく序盤からズルズルと遅れ、区間15位の凡走。

東洋に水を開けられたばかりか、最大のライバルとされていた東海にも抜かれ、逆に42秒も差をつけられたことで完全に勢いを失った。

続く5区・竹石も凡走に終わってしまったが、岩見の不振が5区竹石の走りに影響しなかったとは言えない。

 

下位の学校で目を惹いたのが大東文化・奈良の走りだ。

1区であのような大きなアクシデントがあり、3区で早くも繰り上げスタートになりながら、繰り上げの襷とはいえ、さらに続けて次の繰り上げになることなくつなぎ切るにはかなりの精神力が必要だ。

この区間6位で襷をつなげたことは、次の5区・佐藤(区間7位。山梨学院を抜き総合最下位を脱出)に大きな力を与えた。

 

 

第5区

國學院・浦野、東海・西田、法政・青木の三人が区間新の快走。

「山の神」と称される選手が出るのがこの区間の特長だが、それは逆に言えば他の選手に比べて突出するからこそ言われるフレーズだ。

だがこの日は違い、従来なら「山の神」に相当するタイムを出す選手が続出する展開となった。

その証拠に、区間8位までがこの区間で「早い」とされる1時間12分台以内で走るというのだから、近年では初めて見るハイレベルで見ごたえのある5区となった。

東洋・田中も区間8位とはいえ、昨年の自己の区間記録を上回る記録で走り、昨年よりも大きなアドバンテージを築いて往路を終えることができたのだから十分な働きだったと言えるだろう。

 

上位校ではなんといっても東海だ。

東海・西田は、他校なら準エース級の選手になるのだろうが、レベルの高い東海の中では失礼ながらチームの中では中位の立ち位置の選手。

それでいて区間新を出し、不振にあえいだとはいえライバルの青学に4分16秒もの大差をつけ、首位東洋にも1分14秒に迫る位置まで持ってこれるのだから、東海のチーム力の高さが恐ろしい。

東海は、いまだエースを使わずに往路2位なら、万々歳だ。

國學院は、ここにチームのエース・浦野を起用するという、他校にはない独自色を出した。

これで失敗すると勢いが削がれるが、ここで失敗するはずはないという全幅の信頼があったのだろう。

ここでその期待通りの走りをする浦野もすごいが、ここまで1区藤木、2区土方、3区青木、4区茂原と、与えられた区間に応じた役割を意識した走りができたことが浦野の快走を呼んだとも言える。

今年の國學院の快走は、起こるべくして起こった感じた。

法政・西田は、力通りの走りと言えるが、前に順天堂、拓殖、明治、中央、駒澤と、目標にしやすい学校が次々と現れた展開も味方につけた。

シード圏外の12位から一人で5位まで押し上げた働きは大きい。

 

 

 

〔復路展望〕

 

ミスのなかった東洋、東海、國學院、駒澤が上位を占め、ミスのあった青学が沈むという対照的なムードで復路を迎えるが、まだ半分が終わったばかりだ。

往路にミスのなかった学校も復路でミスがない保証はないので、依然として慢心することなく細心の注意を払って復路を迎えることだろう。

 

往路を終えた段階で、総合優勝の最右翼は東海だ。

往路評の中でも書いたが、エース級のカードをすでに切った東洋、青学に対し、いまだ關、阪口といったエース級のカードを残しながらの東洋との差1分14秒は、かなりのアドバンテージだ。

關が使えないとの一部情報もあるが、それでも6区昨年区間2位の松尾、7区に阪口、8区に松尾と最強世代の選手を配し、補欠には同じく最強世代の小松も控える。

万一關が使えなかったとしても、総合優勝の最短距離にいることは間違いないだろう。

 

東洋は、現状でできる精いっぱいのレースを往路では展開した。

だが、復路の駒でいえば、小笹を7区に配したものの、上位校との比較では東海や青学には劣る。

東洋が総合優勝を引き寄せるためには、6区、7区で逆に2位以下との差を広げることに尽きる。

8区に襷が渡るときに3分ほどのアドバンテージがあれば、東海、青学といえども慌てる。

 

総合優勝までは考えにくいが、駒澤は復路の層の厚さからいえば、三強に割って入ってもおかしくはない。

全日本大学駅伝では、箱根駅伝予選会の反動が出た感じだったが、往路の走りを見る限りではここに向けて立て直しに成功した。

復路も大崩れはないだろう。

 

國學院は7区までは計算が立つ。

3位とはいえ、10位のシード権ぎりぎりの学校までの差は3分17秒で、まだ安全圏とは言えない。

当日エントリー変更が見込まれる8~10区でいかに凌ぐかだ。

 

シード権争いも例年同様熾烈だ。

5位法政から16位日体大まででも4分57秒。

10位中央学院と11位明治との差は42秒と、ここはほぼないに等しい。

山下りで2分から3分ほどの差がつくことは考えにくく、上位校の争いでもそうだが、山を下った後の7区、8区にいかに強い選手を置けるか、また10区にタイムの早い遅いよりもいかに勝負強く精神力の強い選手が置けるかで大きく変わってくる。

そう考えると、5~16位の中の学校のシード権争いに関しては順天堂、帝京は有利だと見る。

それに続いてある程度の選手層が感じられるが、拓殖、明治、中央学院、中央、法政といったところか。

この5校が当落線上で最終的にはシード争いを展開するのではないだろうか。

早稲田は選手層が薄く、日体大は選手層はそこそこのものがあるが、やはりこの順位からの巻き返しは困難と考えるべきだ。

ただ、シード権争いもどこかの区間でブレーキがあると大きく様相は変わってくる。

ミスの少ない学校が、最終的にはシード権を獲得する。

 

 

青山学院の評価が難しいが、総合優勝、5連覇の可能性が全くなくなってしまったわけではない。

ただ、5分30秒差の東洋よりも、4分16秒差の東海との差の方がはるかに重い。

青学は、6区小野田、7区林が昨年以上の走りをすることは絶対条件だ。

なおかつ8~10区に東洋、東海にミスが起きなければ逆転は難しいという、他力本願的な部分も必要となる。

 

現時点でのゴール順位予想は、①東海、②東洋、③青山学院、④駒澤、⑤帝京、⑥國學院としておく。

今年もこのイベントがやってきた。

第95回箱根駅伝が間もなくスタートする。

筆者も陸上に携わる身であるが、母校が出場していることもあり、年間を通じて最もワクワクする大会だ。

上位5位までは順位を、中位以降は「○位争いグループ」として予想してみた。

 

 

優勝青山学院大学(出雲:優勝、全日本:優勝)

かつての久保田、一色、神野のような絶対的なエースはいないが、全体的な層の厚みとしては近年ますます増している気がしている。

原監督が出雲駅伝の前に、「2チーム出しても、もう一つのチームも5位以内には入る」と豪語していた。

今回補欠に回した森田や鈴木を使うとするならば、この中で誰を外すのだろうかと思わせられるくらい、補欠に回る6人を含めて誰をどこに配置しても遜色ない。

ただ、ややうがった見方だが、一発で流れを変えるほどの爆発力がある選手がいないのが唯一の不安ではないだろうか。

一部森田の故障を伝える報道があったが、実際はどうだろう。

もう一人補欠に回した鈴木を含めて、エントリー変更をして使うとすれば3区、8区、10区だろうか。

他の有力大学の布陣を見ても、3区、7区あたりをキーポイントとして考えている大学が多いように思われるので、森田、鈴木のいずれかを3区に起用するものと思われる。

ここまでに首位に立っておくことが理想だが、それが叶わないまでも先頭が見える位置でレースを進めることができれば慌てることはないだろう。

 

 

2位東海大学(出雲:3位、全日本:2位)

青山学院の打倒候補一番手は、東海大学だ。

2区湯沢、3区西川は思い切った起用だと思った。

1区鬼塚で先頭もしくは先頭近くで襷をつなぐ可能性は高い。

2区~3区をつなぎ区間だと考えれば、ここまでで大きな出遅れさえしなければ4区には舘澤を起用してくることが考えられるので、往路は十分射程圏内で踏みとどまれる。

すると、復路に關、小松などゴールデンエイジと呼ばれる三年生が使え、もともと6~8区にエントリーされている中島、阪口、松尾と合わせて復路勝負に持ち込める。

そうなると、青山学院にとっても大きな脅威となるのではないだろうか。

往路でできれば青学より先んじたいが、それでなくても1分差以内で終わることができれば、復路での逆転の可能性すらあると思っている。

「箱根駅伝シンポジウム」などの事前の談を見ても、青学・原監督の眼中にはおそらく東海しかない。

3区まで乗り切れば、終盤青学との一騎打ちの展開も見えてくる。

 

 

3位東洋大学(出雲:2位、全日本:3位)

2年連続1区を予定している西山が今シーズン不振で、出雲、全日本とも足を引っ張った格好だが、それでも両方とも終わってみれば3位以内に入っているところが東洋の強さである。

2区はおそらく当日の変更で相澤が来るだろう。

3区は出雲区間賞だったものの、全日本は欠場した吉川。

ただ、ここに万全を期すために全日本をパスしたという報道もあり、吉川が当日調子を外すことは考えにくい。

そうなると1区の西山の出だしがカギになるが、直前の記録会で1万メートル28分台を出し、復調気配だ。

全日本のように序盤出遅れて苦しむことさえなければ、青学、東海の見える位置には常につけてレースが進められる。

昨年青学に逆転を許した7区に小笹を入れてきて、終盤まで食らいつこうという闘志は見て取れる。

あとは、当日調子さえ合わせてくれば、ここも3位以内でまとめてくることはほぼ確実なように思われる。

 

 

4位帝京大学(出雲:5位、全日本:5位)

1区主将の竹下、2区エースの畔上、3区スーパールーキーの遠藤は、今年の看板だ。

その三枚を惜しげもなく前に並べて、まさに「正攻法」という感じだ。

ハーフ1時間04分を切る選手が11人と、毎年そうだがロード適性が今年は際立つ。

昨年まではややスピードに欠ける部分があり、距離の長くなる箱根になると、ロード適性の高さから復路で力を発揮して後半じわじわと浮上してくる印象のある大学だった。

だが、今年はスピード駅伝の出雲でも5位と結果を出し、スピードにも対応できることを証明して見せた。

序盤から出遅れることは考えにくく、1号車や2号車のカメラに常に映っている位置で走れるのではないだろうか。

 

 

5位駒澤大学(出雲:不出場、全日本:4位)

片西、伊勢、白頭、伊東を補欠に回した。

特に片西は1区、伊勢は7区での起用が有力か。

ハーフ1時間04分台を切る選手が13人いて、これは青学をも凌ぐ。

誰をどこに起用しても戦えるし、先述した補欠からの起用が考えられる選手を起用するにしても、誰を外すのだろうかと思わせられるくらい戦力が充実している。

ただ、不安は、予選会でやや仕上がり過ぎていた印象があり、全日本ではその疲れが若干見えた感じがしたところだ。

また、昨年箱根のシードを落とし、今年は全日本の予選を戦ったのと、出雲を経験できなかったこともどう出るかが不安で、持っているタイムや力から少し割り引いてこの順位にした。

 

 

6~8位グループ(シード権獲得の可能性が大きいと予想するチーム)

城西大学(出雲:8位、全日本:8位)

拓殖大学(出雲:4位、全日本:不出場)

順天堂大学(出雲:不出場、全日本:13位)

 

城西大学は、荻久保が出雲1区3位、全日本2区区間賞と目下絶好調。

その荻久保はおそらく7区あたりの起用だろうか。

毎年往路で出遅れるなどして、復路はシード権争いの当落線上を行ったり来たりする展開が多いが、今年は往路は安定感があり、荻久保のところで早々とシード圏内を確定させる確率が高い。

拓殖大学は、全日本を予選落ちしたことは想定外だが、秋に来てその頃とは別のチームになったかと思えるほどチームとして大きく成長した印象だ。

全日本の経験値が得られなかったマイナスは確かに大きいが、出雲4位の自信を持って望めば面白い。馬場、白髪の復路投入も考えられ、終盤はしぶとい。

順天堂大学は、絶対的なエースの塩尻に目が向きがちだが、駒澤に水を開けられたものの予選会2位で通過したように総合力も高い。

全日本で難波が不振だったのがやや気になるが、往路は現状で考えられるベストに近いオーダーは組めたのではないだろうか。

 

 

9~12位グループ(シード権争いの当落線上と予想するチーム)

明治大学(出雲:不出場、全日本:9位)

國學院大學(出雲:不出場、全日本:6位)

法政大学(出雲:12位、全日本:7位)

日本体育大学(出雲:9位、全日本:12位)

明治大学は、区間配置を見て少々驚いた。

エース阿部を2区で起用してくるものと思っていたが、補欠に回したところを見ると、2区、3区の両にらみか。

いずれにしても、復路の区間配置を見ると6区、8~10区と変更の可能性があるので、往路での変更は阿部1枚のみにとどめておきたいところだ。

そうなると、当日出場が見込まれる阿部、それにもともと2区と3区に区間配置の中島、手嶋にかかるプレッシャーが大きく、序盤をどう乗り切れるかがカギになりそうだ。

國學院大學は、区間エントリーを見ると、ほぼエントリーどおりに走らせてくるものと思われる。

特に5区にエース浦野を起用してきたところに、他大学とは違う独自性を出してきた。

ただ、準エース格の土方と青木をそれぞれ順当に2区、3区に起用してきてぬかりはない。

法政大学は、全日本7位と秋に調子を上げてきた感じがする。

エース坂東が出雲の1区で15位と出遅れたが、全日本では6区6位と復調気味。

今回も2区に配置されているが、持っている力を出せば、毎年山の上り下りと復路に強みを発揮してくる大学だけにシード権が近づく。

日本体育大学は、力のある選手は揃っているが、出雲、全日本とも不振にあえいだ。

特にどちらも1区を担当した池田が出遅れて波に乗れなかったのが大きい。

今回も池田が1区に起用されているが、三度目の正直となるだろうか。

あるいは廻谷、宮崎の投入もあるかもしれない。

 

 

13~17位グループ

中央学院大学(出雲:6位、全日本:14位)

早稲田大学(出雲:10位、全日本:15位)

東京国際大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

神奈川大学(出雲:不出場、全日本:10位)

中央大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

 

中央学院大学は、石綿を9区あたりで起用してくるのだろうか。

出雲は調子がよさそうに見えたが、全日本では全体的に不振で、ここに臨む過程に不安がある。

早稲田大学は、出雲、全日本とも不振に終わった。

中谷がスーパールーキーとはいえ、1年生に頼らなければならないほど選手層は薄く、ここも苦戦は免れない。

東京国際大学は、このくらいの順位に顔を出すようになれば、下級生にまだまだ力のある選手はいて、来年以降の見通しは明るくなる。

ここは来年以降につながるレースを期待したいところだ。

神奈川大学は、荻野は今年も5区に起用されるのだろうか。

昨年同区間20位のリベンジを期待したいが、それ以外では1区山藤、2区越川が目を惹くが、シード権争いするまでは厳しいと見る。

中央大学は、藤原監督のもと、着実にチームは再建されているが、今シーズンは全日本の予選会で棄権して三大駅伝の出場がこの箱根のみとなってしまったことが大きな頓挫だった。

力のある選手はそこそこ揃っているが、経験の必要な駅伝競技において、今シーズン全く経験がつめていないという部分をどうしても割り引いて考えざるを得ない。

 

 

18位~22位グループ

大東文化大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

山梨学院大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

国士舘大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

日本大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

上武大学(出雲:不出場、全日本:不出場)

 

残念ながら、どのチームも、出雲・全日本とも出場がなく、メンバーから見ても強く推せる材料がない。

だが、この予想をいい意味で裏切り、なんとか一つでも上位に食い込んでもらいたいものだ。

 

第94回箱根駅伝は、青山学院の史上六校目の四連覇で幕を閉じた。

 

 

復路

 

復路のオーダーを見ると、青学にとって前日に往路優勝の東洋につけられた36秒差は、6区に過去二年区間2位を記録した小野田を置いているので、筆者はないものに等しいと感じていた。

これまでの東洋・酒井監督流のセオリーからすると、首位で襷をつないだ時の東洋は、早めの入りをする。

それに、東洋・酒井監督も、この区間で追いつかれることは織り込み済みだったようだが、追いつけそうで追いつくことができない間隔を保ちながら、なるべく追いつかれる地点を先延ばししたかったに違いない。

また、下り坂ではともかく平地のスピードという点に関しては小野田と今西は遜色ないだけに、追いつかれるにしてもなるべく下り切ってからやあるいは少なくとも勾配がゆるやかになってからにして、そこから粘りの展開に持ち込みたかったに違いない。

したがってこの復路スタートも、東洋・今西は当然早い入りをするだろうと見ていたが、その通りだった。

 

上りきり、最高到達点を過ぎたあたりに迎える芦の湯の4.8km地点では、2位青学とは復路スタート時から1秒開き37秒差に。

相手が小野田であることを考えると、入りの5kmを同じラップを刻んだということは、今西にとってはややオーバーペースだったと言える。

下りに入ってからは小涌園、宮ノ下、大平台と進むにつれ、28秒、22秒、15秒とみるみる差は縮まり、15km地点でついに小野田は今西を捕えた。

東洋にしてみれば、下りに入ってから思いのほか早く小野田がギアチェンジして追いついてきたのではないか。

戦略としては決して間違っておらず、今西も酒井監督の思い描いた通りのラップを刻んだ走りをしてみせたように思うが、小野田の山下りの力と経験が一枚も二枚も上手だったと見るより他ない。

下りきった後のラスト3kmが上りに見えるほどきついとは毎年言われていることだ。

小野田も今西も、その部分ではダメージがきていたようだが、経験がないのとオーバーペースだった今西の方に余計にそのツケが回り、小田原中継所で52秒差にまで広がったのは、思った以上だった。

あとのメンバーを考えると、52秒でも青学には十分すぎるほどのアドバンテージであると思った。

他に東海・中島(9位→5位)、法政・佐藤(5位→4位)、帝京・横井(12位→7位)がこの区間で小野田に次ぐ2、3、4位の快走を見せ、それぞれ順位を上げた。

結果的に、混戦と思われた4~13位までのシード権争いにおいて、これらの学校は早い段階でシード権確保を決定的なものとしたが、この区間での快走が大きかったといえる。

6区はこの日のスタートであるとともに、上り5区と同じく大きく順位が変動する可能性の高い区間だけに、レース全体における影響が大きい区間であることを改めて思い知らされた。

上りの5区が短くなり、また函嶺洞門を迂回するコースになったものの、依然箱根駅伝独特の山の区間の成否が優勝を大きく左右しているといえる。

 

その青学に傾いた流れを決定づけたのは、7区林の区間新記録の快走だった。

他の学校は、よほどでない限りこの区間に強い選手は置けない。

5kmを14分15秒で入られると、他校は追う気力もそがれるというものだろう。

あとは林の独壇場。

3年生にして三大大学駅伝デビューということで、走りをこれまで見たことがなくどんなものだろうと思ったが、力強いというよりは軽く小気味いい走り。

青学の走者におおよそ共通するこのような走りを見ると、アクシデントでもない限り終盤に失速することは考えにくく、優勝争いの興味は潰えて焦点は早くもシード権争いに移った。

 

7区に襷が渡ったときにはシード圏内にいた順天堂は、この7区最初の二宮のチェックポイントで11位に落ち、これ以降10区へ襷が渡るまで1分~2分30秒程度のビハインドを常に強いられることになった。

7区の比較的早い段階で、日体大・住田、城西・山本、中央学院・新井、帝京・佐藤が集団を形成。

この四人は競ったこともあり、7区をそれぞれ2、4、6、8位と一桁順位でまとめることができた。

順天堂は10区花澤が中央学院に14秒差にまで追い上げたのもむなしくシード権を手放してしまったが、7区序盤のこの集団から置いて行かれたつまずきが、後々響いた形となってしまった。

中央学院が結果的に10位で、11位の順天堂と明暗を分けた形だが、8~10区では、いずれも集団になる場面がありその中で我慢してついて行ける場面が多かった。

前日の往路2区も、先頭は別として後続が集団で走れたかそうでなかったかの明暗がはっきりと出た。

当たり前のことだが、駅伝において集団になったらそれに食らいついていくことの大事さを改めて感じさせられた。

 

青学は8区下田、9区近藤、10区橋間と余裕を持ってつないだ。

下田は、区間新は逃したものの区間賞で箱根を締めくくった。

終始楽しんで走っているように見えたが、テレビ中継を見ていると戸塚中継所が近づき襷を外した時に一瞬、表情がゆがんだようにも見えた。

これで箱根駅伝が終わってしまうのだと言う万感の思いがこみ上げてきたのだろうかと思った。

近藤は4年生、橋間は3年生で箱根初出場。

共にトラック、ハーフマラソンとも、このレベルの高いチームの中では出色のものはないが、同じく初出場で送り込んだ7区林の快走からすると、原監督には不安はない万全を期した起用だったのだろうと思う。

 

東洋は、6、7区で勝負をつけられ、その後は前とも後ろとも離れた難しい単独走となった。

だが、8区が終わった戸塚中継所で青学につけられた最大6分15秒差を、9区小早川、10区小笹の上級生で大手町ゴール地点では4分53秒にまで縮めた。

通常駅伝ではこのような首位独走の展開になると、先頭を走るチームと追うチームとの勢いの違いから、開く一方で、逆に後続に差を詰められることが多いものだが、東洋は違った。

中継で時折映る選手の後方を走る管理運営車の酒井監督の声かけがちらほらと聞こえたが、ただの負けには終わらせない不屈の精神をこのチームには感じた。

逆に3位早稲田には6分37秒差をつけたので、優勝青学との差の方が小さいということになる。

1、2年生だけで7人を起用したチームの見通しは明るい。

来年以降しばらく、青学にとっては最も警戒すべきチームは東洋ということになるだろう。

「2強」と言われる時代が来るかもしれない。