いい国つくろう、何度でも | 熱中時代! 社長編

いい国つくろう、何度でも

今朝、町内で神社の清掃を行いました。
清掃後にお渡しするペットボトルを各班毎に用意し、班長さんへ渡したのですが、解散後、ある班長さんが「会長さん 私のところ1本たらなかったのですが・・・。」と言うのですが、各班毎に仕分けして、班長さんに確認してから、手渡したので間違えることが無いのです。しかし、足らないのですかと尋ねると「はい」と言うのです。

話をしてみると昨年末にアパートに引越しをされた方が参加したようです。
通常は、会長のところへ班長さんから「町会加入届け」と言うものが提出されていなかったので、わからないのも当然ですね。きっと、班長さんのところへご挨拶されたので、情報を聞いて参加されたのではと思います。手続きもそうですが、清掃の時に、お越しいただいていたのなら、そこで、町内の方々へご紹介も出来たのですが残念でした。また、加入されていませんので不足分のペットボトル1本は、私の分を充当させていただきました。

その後、午前中に班長とご本人が、家にいらしてお話を伺いました。
福島から引越しをされたということで、「震災、原発の被災地」からですかと尋ねると自営業を営む夫とその両親は、福島に残り娘さん親子と3人で、5時間ほどかかるところから栃木県の親戚を頼りに佐野市へ昨年12月末に引っ越されたそうです。「町会加入届け」を書き込みながら、現在の状況や思いを伺いました。不安、心配という言葉がどんどんと出て来ます。私自身、震災後には東北に何度も足を運びました。「東北頑張ろう!」などとは、言えない。

昨年、朝日新聞に掲載された広告を思い出しました。

毎年新聞紙上の企業広告が話題をさらう宝島社が広告主です。
9月2日朝刊に全30段二連版の広告を展開。
コーンパイプをくわえ、レイバンのサングラスをかけたダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が厚木飛行場に降り立つ姿に「いい国つくろう、何度でも。」というコピーを重ねた紙面が大きな反響を呼び、今年も強烈なインパクトでした。

苦難の昨年、日本人の精神的な強さを呼び覚ましたいと意味で、大震災を思い起こした読者は少なくなかっただろう。広告制作の準備はまさに震災のあった昨年3月に始まったらしいです。
掲載を決算年度の始まりにあたる9月に見据え、コンペを実施。「日本人」というテーマに取り組んだアサツー ディ・ケイが担当しました。
$熱中時代! 社長編-2011年09月02日
「日本人は、天災や敗戦など幾度も苦難を乗り越え、国を再建してきました。今こそ、そうした精神的な強さを呼び覚ましたい、との思いがありました。『がんばろう』というようなアプローチではなく、内なる発奮を促したいと。自発性や創意性を重んじる当社の企業文化に沿った広告です」とは、マーケティング本部部長の話です。

掲載日の9月2日は、日本が降伏文書に調印した日であり、2011年9月2日は、「イイクニ」と語呂合わせができる。野田佳彦新内閣の発足の日でもありました。
「企画や日程は6月に決定しており、偶然が重なっただけですべて狙ったわけではないんです」と話すが、タイミングの合致にピンときたのではないでしょうか。

「コピーのほかには、社名と住所『ダグラス・マッカーサー財団の許可を受けています』という意味の英文を小さく載せているだけです。可能な限り説明をそぎ落とし、ご覧になった方それぞれに広告の意図について思いを深めていただきたいという趣旨でしたが、掲載日の意味にまで考えを広げてくださる方が大勢いたことに驚きました」コピーには「ゼロからプラスの価値を生み出していく日本人の力を信じたい」という思いを込め、マッカーサーの写真は「日本の復興を象徴的に物語るアイコン」としてとらえていたという。「とても有名な写真ですが、財団によれば、商業広告に使われたのは初めてで、これまで新聞に載ったこともないそうです」

米軍機の背景には、戦後の焼け野原の写真を合成し、もとの写真には建物などが写っていたが、震災の被災地に見えないように合成するなどの注意を払った。

賛否両論の中、掲載後の反響はさまざまあったが、電話や手紙の反響が少なかった一方で、ツイッターなどソーシャルメディアへの書き込みが相次いだそうです。
「朝からツイッターをチェックしていましたが、ものすごい反響でした。興味深かったのは、新聞広告を実際に見た方と、ネット上で情報を得ただけの方と、感想の質が明らかに違っていたことです。全30段二連版の大きさの紙面を手元で見た人の感想は、やっぱり違いましたね。また、その書き込みを見て、『現物を見なくては』『やっと新聞を買って確認した』というネットの書き込みもありました。
また、ネットでは他の人の書き込んだ意見も見られるので、意見が意見を呼び、思わぬ方向に議論が発展していく現象も見られました」今回の広告はYAHOO!JAPANなどのネットニュースや『ジャパンタイムズ』でもニュースとして取りあげられた。日米同時掲載した昨年の企業広告「日本の犬と、アメリカの犬は、会話できるのか。」に続き、今年も外国人ジャーナリストの注目を集めました。
$熱中時代! 社長編-2010年09月02日付 朝刊  全30段  宝島社
「賛否両論ある中、戦争体験者を含む多くのご年配の方々が賛同してくださったことも意外でした。敗戦後の日本やマッカーサーのことをよくご存じだからなのだと思います。被災地からは、『がんばろう、と言われるより心に響く』といったご意見も届きました」

新聞広告が果たす役割について「家庭や職場でコミュニケーションのきっかけにしてほしいという思いが毎回ありますが、今回はどういう感想をお持ちになったかによって、個人の考え方やモノの見方が見えてしまうような内容だったので、もしかしたら身近な方とは話題にしにくかったかもしれませんね。新聞広告は、他人の意見に左右されず、直観的に何かをくみ取ったり、知識や経験に照らし合わせてじっくり考えたりもできる。そこも魅力です。人は、お金を払って得る情報の質はシビアに吟味しますし、『自分ごと』として真剣に向き合うのではないでしょうか。新聞も同じで、読者は主体性をもって読み、考えるのだと思います」「これからも新聞という媒体を通じて企業としての考えを皆さんにお伝えしていきたいと思っています」宝島社の企業広告の目的は、ブランディングや販促ではないという。

震災のことは意識していますが、それだけではありません。景気の低迷や政治不信、日本の未来に対し不安な人は大勢いると思います。そんな状況で宝島社として何かできることはないか、と考えていきました。それは、昨年の犬の広告(「日本の犬と、アメリカの犬は、会話できるのか。」というコピーと、シバイヌとラブラドルレトリバー2匹の写真でデザインされたもの)も同様です。これらの広告の役割を言葉にするならば「読者の思考のスイッチを押すこと」だと考えます。

「いい国つくろう、何度でも。」というコピーとダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が厚木飛行場に降り立つビジュアルはインパクトがありました。今、日本の歴史のページが大きくめくられ、世の中が変わろうとしている瞬間だと考えます。そんなスケール感を共有できる表現とは何かとディスカッションを重ねた末に完成したものです。

日本は自然災害や戦争からの復興と、苦しい出来事や問題を幾度も乗り越えてきた歴史があります。日本人は捨てたもんじゃないぞ。個人的には、そんな思いを込めて作りました。「いい国」という鎌倉幕府成立の年号(1192年※)を覚えるための語呂合わせは、暗くなりがちな状況だからこそ、ちょうどいい軽やかさになったと思っています。
※現在では、鎌倉幕府の成立は1185年という説もあります。

コピーの書き方は今と昔で変わったこと

何をどう言うか、それを考えることはプロとして当然のことです。今はそれだけではなくて、言葉を投げたあと、受け手がどう感じるのかを具体的にイメージし、ゴールを設けて言葉を作っていく必要があります。そうしないと、ただの「つぶやき」と同じになってしまいますからね(笑)。
 「いい国つくろう、何度でも。」というコピーも、フレーズは大事だけど、読んだあと「ところで、いい国ってなんだろう」というムーブメントが起こることを期待した書き方をしたつもりです。書いて終わりではなくて、読者にとって何かを起動させるきっかけを作るというのが、コピーライターの仕事であり、もしかしたらクリエーティブディレクターの仕事なのかもしれません。