独断と偏見の書評ー『戦争にチャンスを与えよ』~真実は口に苦し | 宇宙世紀を生き抜く知恵

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救世主は現れないし恐怖の大王も降って来ない。
人類を救うのも破滅に導くのも、それは人間だ。

『戦争にチャンスを与えよ』

出版社:文藝春秋
発売日:2017/4/20
著者:ルトワック,エドワード

ワシントンにある大手シンクタンク、米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問。

戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。

1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれ。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。

内容紹介

国連やNGOや他国による中途半端な「人道介入」が、戦争を終わらせるのではなく、戦争を長引かせる。無理に停戦させても、紛争の原因たる「火種」を凍結するだけだ。本当の平和は、徹底的に戦った後でなければ訪れない。 

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本書が主張する「中途半端な介入が紛争を長引かせる」という点には同意しますが、「本当の平和は徹底的に戦った後でなければ訪れない」という結論は極めて短絡的だと思います。

第一次世界大戦後、連合国はドイツが2度と復活しない様に、ベルサイユ条約で徹底的に貶めました。

その反発がヒトラーの台頭を生み、さらに悲惨な第2次世界大戦の要因となりました。

WWⅠとWWⅡを1つの戦争と括れば、「WWⅠが中途半端な終わり方をしたのでWWⅡが起きました」と言えなくも無いですが、WWⅠの惨禍を以ってしても「徹底的に戦っていない」のだとすれば、欧州大戦はいったいどれだけの犠牲を払わなければ収束しなかったのか?

※「ソンムの戦い」100万人以上が戦死。

それを是とするなら平和の代償としては高すぎる。

その「平和」は誰の為の平和なのか?

私は、「国家間のパワーバランスと実際の勢力圏の不一致が紛争を生み、その解消を妨げると安定化しない」というロジックが真実なのだと考えています。

東西冷戦終了後のアメリカ合衆国の地位低下が示すとおり、幸か不幸か1国で全世界を遍く支配できる国家は今も昔も存在しません。

複数の国家のパワーが拮抗する状態を保つしか「平和=戦争では無い状態」を実現する手段が無い。その拮抗がズレた場所に紛争が起きるのだと思います。