日本小児歯科学会が作成した「子ども虐待防止ガイドライン」というものがあります。
このガイドラインでは歯科医がデンタルネグレクト等の難しい問題に対して、どう判断しどう行動すべきかがまとめられております。
今回はこのガイドラインを読み解き、その内容をより多くの歯科医療従事者の方に知って頂きたいと思い記事を書きました。
このガイドラインの発行は2009年と記載されておりますので、約9年前にまとめられたものであります。
その内容を抜粋いたしますと・・・
● 親が一生懸命でも子どもにとって有害であれば虐待(ネグレクト)になる可能性がある。
● 虐待を疑った場合に、目の前の子どもを守るために(通告などの行動を起こすのには)勇気が必要であり、躊躇していた歯科医師が多い。
● 改正された児童虐待の防止等に関する法律(法第六条関係)において、(児童相談所等への)通告義務の対象が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大され、虐待が事実でなくとも主観的に虐待があったと思うのであれば通告義務が生じることとなった。
● 同法の趣旨において、虐待の通告が結果的に誤りであったとしても責任は問われない(刑事上・民事上とも)ものであり、子供を守るために、まず相談あるいは通告という行動を起こすべき。
● 虐待が決してまれなものではないことを認識する。(2009年で500人に1.1人。現在は約4倍か。)
● 「繰り返す外傷」・「つじつまのあわない事故(起こりにくい場所での外傷)」・「説明のつきにくい放置された多数歯のう蝕」は要注意
● 法律で、通告義務が守秘義務より優先されると明示されており、積極的な通告が苦しい思いをしている親子が「よき援助者」に出会うきっかけになりうる。
● 多数歯う蝕や歯肉膿瘍などが放置されている場合(虐待が疑われる)は、歯科診療中に頭部、顔面、腕、手足などを観察する。
● 多数歯の未処置のう蝕や歯肉の腫脹があれば、それ自体がネグレクトを十分疑わせる要因である。(虐待児のう蝕は一般の児の2~3倍。)
● しかし多くの歯科医師が、虐待を通告することに不安を感じている。
・・・以上が、ガイドラインの抜粋であります。
この様に、小児歯科学会が策定したガイドライン及び児童虐待防止法におきましては、「疑わしきは躊躇なく通告せよ」の方針で一貫しておりますが、実際のところ私も一人の歯科医療関係者としてそこまでドライになり切れない思いと、その後どのような事になるのかという、無知故の怖さを感じざる負えないというのが正直なところであります。
私自身、デンタルネグレクト並びにその疑いに対しまして、どう立ち回れば良いのか今も葛藤しておりますが、歯科医療従事者の皆さまに置かれましては、一度じっくりと「子ども虐待防止ガイドライン」全文に目を通され熟考するだけでも非常に大きな意味があることかと思います。
以上、「子ども虐待防止対応ガイドラインを読み解く」のお話でした。
最後までお読みいただき、誠に有難うございました。