長女が急に電話してきた。

鼻息荒く、興奮している様子。

今年34歳の長女が

学校に戻る、という。


「修士課程でもとるの?」と

尋ねたところ

アートスクールのカルナリー科に編入するという。

終了するとBA Degreeが取れるらしい。

昼間学校に行くために

今している秘書のパートもやめて

友達のつてで夜勤の仕事をするらしい。


昔から料理が大好きだった彼女。

いつも自分のランチネットを開くのが夢だった。

でもレストランは水商売で

苦労もすごい。

自分で経営するとなると ことさら大変。

長いこと決心に足踏みしていたよう。


旦那は複雑な心境だ。

「やっとやりたいことにむかって走り始めたんだから

応援してあげればいいじゃない。」

とやんわりいったら

10年前に始めたらよかったのに、とか

中途半端でやめることが多いから心配だ、とか

アートスクールなんて

学費も安くないし、大学のローンも

まだ返済し終わってないのに

お金はどうするんだ、とか

心配事はつきない。


彼女はいつも

夢ばかり見ていることは確かだ。

衝動的で あきやすく

なかなか一つのことに

長く従事できない性格の彼女。

長年婚約していた前の彼と

婚約破棄して別れたあとは

現実逃避が激しくて

Sex and the Cityの世界を

まねして

毎晩高級レストランで友達と食事したり

フランス系の40歳も年上のシェフと

お付き合いしてみたり

海外旅行にファーストクラスでいったりして散財のあげく

生みのお母さんが残した財産まで使い尽くしてしまった。

その後は

自己嫌悪のあまり

アルコールと過食に走ってしまった。


次女と三女は

両方とも計画性のある

こつこつ型。

次女は修士習得後

スピーチセラピストとして給料のいい仕事につき

Mr.ライトを捕まえて結婚、幸せに暮らしているし、

三女はこの12月に

修士過程を終えて児童カウンセリングの資格を取得。

彼女もドリームジョブがすぐ目のまえだ。

すてきな彼もできて

すでに結婚の計画もしているよう。

そんな姉妹たちの

成功や幸せを目にして

彼女は余計あせってしまったのかもしれない…。


半信半疑の旦那だが

彼女がやっと

やりたいことをはじめる決心をしたのなら

やるべきだと私は思う。

お金になるから、とか

資格がとれるから、とか

有名になれるから、なんてことを考えて

足踏みしている間に

時間は過ぎていくもの。

やらないであとで後悔するより

やってみて悔いなく残りの人生を生きるほうが

いいと思う。


彼女をみていると

自分が日本をたった16年前のことを

思い出してしまう。

あと数年で30代に足を踏み込む年になって

初めてアメリカ留学なんて

役にたたないに決まってる、と

父から真っ向反対されたのを押し切って

やってきたアメリカ。

なんだかんだ苦労もあって

日本に帰りたくなったこともあったが

結局はやりたいことを

やりきってよかったとしみじみ思う。


旦那は実の親だから

心配する気持ちもわかる。

末っ子のエマが外国に

一人で留学するなんてことになったら

私だって心配で

やらせる勇気なんてないかも。

でも

子供はそうやって大きくなっていくものなんだろう。

親はいつまでも

かばってやれないし、そうするべきじゃない。

長女は今が最後のチャンス。

よく考えて

自分の道を切り開いてほしい。