星 こんばんは、門倉と申します。


今日の「夕焼け寺ちゃん」聴いていただいた方、ありがとうございました。


本音と建前のコーナーでお話した「ロンドン五輪の経済効果?」、数字がたくさん出てきてわかりづらかったかもしれないので、話の内容をまとめておきますね。



727日から812日までロンドン五輪が開催される。ロンドン五輪の経済効果については、様々な調査会社が試算結果を発表しているが、日本国内で発生する消費の押し上げ効果は、おおむね3000億円から4000億円の範囲とみられている。


●たとえば電通総研の調査によると、ロンドン五輪に関連する「直接的な消費の押し上げ効果」は3867億円となっている。


●「直接的な消費」とは、五輪競技を見るために、薄型テレビなどデジタル家電を購入したり、関連グッズを購入したりといった消費。「直接的な消費」が誘発する生産・所得などを合わせた全体の経済波及効果は8037億円。日本代表選手・チームのメダル獲得が増え心理的に盛り上がった場合には、さらに414億円上乗せされる可能性があると試算されている(電通総研)。


●ロンドン五輪でメダル獲得が期待されている競技は、体操、水泳、柔道、女子レスリング、女子サッカーなど。


●ところで、「直接的な消費の押し上げ効果」である3867億円という数字は08年の北京五輪に比べると3割ほど少ない金額。なぜ、北京五輪に比べて日本での経済効果は3割も小さくなってしまうのか。


●五輪商戦の主役ともいえるデジタル家電、とりわけ薄型テレビの販売増があまり期待できないというのが最大の理由。五輪といえばテレビの買い替えというイメージが強く、実際、薄型テレビが普及段階にあったアテネ五輪では薄型テレビの販売が前年比2倍、北京五輪でも前年比3割増となった。


●なぜ、ロンドン五輪では薄型テレビの販売増が見込めないのか。


●北京五輪のときと比べた場合には、時差の影響が大きい。北京五輪ではほとんど時差がなかったが、今回はかなりの時差が発生する。この時期、英国はサマータイム制を採用しているため、日本より8時間遅れ。現地で午後に開催される主要な競技は日本で深夜にテレビ放送されることになる。


●それだけではない。実は、ロンドン五輪の日本での経済効果は、同じように時差の問題があった04年のアテネ五輪と比べても1割ほど少ない。これは、昨年の地上デジタルテレビへの移行特需、エコポイント特需の反動が出ているためと考えられる。


●時差の問題に加えて地上デジタルテレビへの移行特需、エコポイント特需の反動が出るため、ロンドン五輪に合わせて新しいテレビを買おうという向きは少ないということに。


●ただ、デジタル家電の中には、ロンドン五輪で需要が拡大するとみられる商品もある。それがブルーレイ・レコーダー。


●ブルーレイ・レコーダーは、テレビに遅れて需要が拡大する傾向があって、昨年の地上デジタルテレビへの移行特需の際にはブルーレイ・レコーダー特需は発生していない。潜在的な需要があるところにロンドン五輪の時差対策になるということで、ブルーレイ・レコーダーの需要が期待できる。メーカー各社もブルーレイ・レコーダーの新機種を相次いで市場に投入している。


●ところで、オリンピックやサッカーワールドカップといったビッグイベントが開催されると、開催地では「夜のビジネス」が盛り上がるといわれるが、今回のロンドン五輪でも「夜のビジネス」は盛り上がるのか。


04年のアテネオリンピックや06年のドイツ・サッカーワールドカップなどでは、開催地にたくさんの観光客が訪れ、それに伴って「夜のビジネス」も大繁盛したが、ロンドン五輪では「夜のビジネス」もあまり盛り上がらないかもしれない。


●その理由は、欧州債務危機が深刻な状況で、ヨーロッパ全体が不景気。周辺国から五輪を観戦するためにロンドンを訪れるという流れが弱くなる。また、ロンドンはビジネス都市で、ほかの欧州主要都市と比べて観光地としての魅力が弱い。さらに、ロンドンではホテル代が高騰するなど、ほかの欧州主要都市と比べて物価が高いということもある。これらの事情により、ロンドンを訪れて「夜のビジネス」を楽しむ客の数も少なくなる可能性が高い。


●治安当局が五輪開催期間中に「夜のビジネス」、とりわけ売買春が横行することのないように治安対策を徹底していることも、「夜のビジネス」が期待できない理由のひとつ。


●治安当局は、ギャングやマフィアといった犯罪組織が外国人女性をロンドンに連れてきて「夜のビジネス」に売りつける「人身売買」ビジネスを強く警戒している。ロンドンに連れてこられる外国人女性はリトアニア、アルバニア、モルドバ、ルーマニアなど経済的に貧しい欧州の国の出身者が多い。ホテルの清掃の仕事などと騙されてロンドンに連れてこられる。


●英国内務省の統計によると、不法な手段で英国に連れてこられて売春を強制されている女性は年間約4千人となっており、20104月からは専門のトラフィッキング犯罪対策組織がつくられ、ロンドン五輪の準備・開催期間中に人身売買が横行することのないよう目を光らせている。



●過去、五輪を開催した国は、かなり高い確率でその後不況を経験している。日本も1964年の東京オリンピックが終わった翌年の1965年にオリンピック不況を経験した。なぜ、オリンピック不況が発生するかといえば、オリンピック開催前に道路や鉄道などの建設投資ブームが形成され、このブームが開催後に反落するため。またオリンピックが開催されるまでの一定期間、就業機会が生まれるが、オリンピックが終了すると就業機会がなくなり失業率が上昇するということもある。


●英国の場合、欧州危機の中での開催であるため倹約型のオリンピック。そもそも五輪に関連した建設投資ブームや就業機会の拡大などがないので、五輪後に反動が出る可能性も低い。












・・・・・・おわりだよ。






じゃあのかお




BRICs経済研究所 代表 門倉貴史