こんばんは、門倉と申します。
今日は、meの住んでいる横須賀に関係した『蜜柑』という短編小説を紹介します。。
『蜜柑』は、芥川龍之介が横須賀海軍機関学校の英語の嘱託教官をしていたときに書かれた小品です。
ある冬の日の夕暮れどき、いつになくブルーな気持ちの「私」は、横須賀線の二等客車に乗っています。すると、そこへ三等客車の切符を握った田舎娘が合い席してきます。
「私」は娘の服装が不潔であることや三等の切符なのに二等客車に平気で乗ってくる図々しさを目の当たりにして、一段とブルーな気持ちになります。
「おいおい、勘弁してくれよ。今日のおいらはめっちゃブルーなんだぜ」みたいな・・・
しかも、この少女、なぜか客席の窓を開けようとします。「ちょっ、待てよ」という間もなく、窓、開いちゃいました・・・。
トンネルに入ると、案の定、煙が車内に充満し(当時は蒸気機関車なので)、「私」は一層不機嫌になります。咳き込んじゃうし
。
しかしながら、トンネルを抜けて、踏み切りに差し掛かると、突然少女は窓から身を乗り出して、数個の蜜柑をポンポン外に放ります。実は、この少女は、わざわざ見送りに来ていた弟たちの労に報いようとしたのでした。
恐らく、この少女はこれから不安な気持ちで奉公に出るのです・・・。今の自分が表現できる精いっぱいの優しさや思いやりが、蜜柑を投げるという行為だったことにはたと気づいた「私」は、さっきまでのブルーな気持ちが消えて、優しい気持ちになるのでした。
「私」は、娘の行為を見て、退屈な人生をわずかに忘れることができましたというお話です。
JR
BRICs経済研究所 代表 門倉貴史