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あらすじは次のとおりです(ネタバレ注意)。
主人公のフランシス・マカンバーは奥さんのマーゴットに「臆病者のダメおやじ」と思われています。
というのも、狩猟のときに、手負いのライオンが突進してくるのを見て、ビビッて逃げ出しちゃったからです。もうパニック状態だったのです。
マカンバーは自分が醜態をさらしてしまったという負い目もあって、夫人が狩猟案内人のウィルソンと浮気をしているのを知っても、あまり強い態度に出ることができません。
汚名を返上するべく、「こなくそっ!」とマカンバーは水牛(バッファロー)狩りに出かけることにします。
そして、マカンバーは水牛を追っているうちに、みるみる勇気と自信がみなぎってくるのを感じ、突進してくる水牛に勇敢に立ち向かいます。「カモン!俺はマッチョでワイルドなハンターなんだぜいっ!」みたいな。
そのとき、近くにいたマカンバーの奥さんが銃を発射して、その弾がマカンバーのヘッドを直撃してしまいます。「あ、え?」マカンバーは即死でした。
マカンバーの短い幸福な人生というのは、「勇気が湧いて自信満々に水牛と格闘していた一瞬」のことをさしているのです。
衝撃のラストシーンについて、奥さんがわざとマカンバーのヘッドを狙い撃ちしたのではないかという解釈もありますが、テクストの中にはっきりと「マカンバー夫人は水牛を狙い撃った。」という主語と述語、目的語を明確にした記述があるので、マカンバー夫人は、自分の夫を助けるために水牛を狙い撃ったが、弾が外れて不幸にも夫のヘッドに直撃してしまったというのが実情だと思います。
読後感ですが、夫人が故意に夫を撃ったわけではないということを前提においても、me は「タイトルにある通り、本当にマカンバーの人生は幸福だったと言えるのかしら?」と思ってしまいました。
確かに「男らしさ」を実感して死んでいくことができたという点では幸福なのかもしれませんが、それはほんの一瞬の出来事ですし、その直前までマカンバーの精神の動きはジェットコースターのように底から天井へと大きく揺れ動いています。精神的には情緒不安定な状況にあって、一瞬、幸福を感じたときにわけもわからずに死んでしまったという感じです。
me はこの短編を読んで、むしろ人生のむなしさやはかなさを強く感じてしまいました。
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BRICs経済研究所 代表 門倉貴史