おとめ座 芥川龍之介1920年(大正9年)に発表した短編『舞踏会』は、鹿鳴館を舞台にしたお話です。

 あらすじはこんな感じです(ネタばれ注意)。

 

主人公は当時17歳の明子さんです。明子さんは、ある夜、生まれて初めて鹿鳴館を訪れました。明子さんは超ビューテホーだったので鹿鳴館に来ていた男性陣の注目を一身に浴びます。最初は緊張していた明子さんも、殿方に注目されるうちに、自信に満ちた表情に変わっていきます。「わたしのこのナイスバディを御覧なさい、どう?」みたいな・・・

 すると、外国人の海軍将校が明子さんのところにきて「シャル ウィ ダンス?」と誘います。

 明子さんはノリノリで、「オフコース!、いいわよ」、2人は一緒にダンシングしますおとめ座

 ダンスが終わってから2人は一緒にアイスクリームソフトクリームを食べて、星月夜に打ち上げられる花火に見入るのでした。

 

 この小説の面白いところは、最後に明子さんが老婆になってからのシーンに移っていくところでです。

 

 おばあちゃんになった明子さんは、鎌倉に向かう横須賀線の列車内で、青年小説家と一緒になります。明子さんは鹿鳴館の思い出を青年小説家に話します。


 そして・・・明子さんが鹿鳴館でダンスをしたお相手が、あのピエール・ロティであったことが明らかになるのです。

ピエール・ロティ(Pierre Loti18501923年)は、『お菊さん』を執筆したフランスの小説家です。この『お菊さん』をもとにイタリアの作曲家プッチーニがオペラ『蝶々婦人』を作曲したのでした。


でも明子さんは、ペンネームのピエール・ロティではなく、彼の本名である「ジュリアン・ヴィオー」で覚えていたのでした・・・。


読者は、ピエール・ロティとジュリアン・ヴィオーが同一人物であるという予備知識がないと、ここのくだりはよくわからないかもしれません。


 明子さんが鹿鳴館でダンスをした後に見た夜空に消えていく美しい花火・・・この美しい花火は、人生のはかなさ、人生の空しさを象徴しているのでしょうシラー



BRICs経済研究所 代表 門倉貴史