勉強方法を考える(16) | どうしてそうなる 英文法&イディオム

勉強方法を考える(16)

英単語の勉強でも、単語集を何冊もやる人がいる。
ある塾では単語集を生徒に2冊買わせている。
1冊目が終わったら、2冊目をやるというわけだ。

もっとすごい先生もいた。
僕がある塾に講師として採用されて、前の先生から引き継ぎを受けた。
この時その先生が、「うちの子は優秀な生徒が多いから、単語集は沢山やらせている」というのだ。
そして「東大を目指している子がいたから7冊使った」と誇らしげに言っていた。

「単語集を7冊もやったんだ、スゴいだろう」というわけだ。
その時、私は何も言わなかったけど…。
7冊もやらなければならないというのは、1冊も覚えていないからそういうことになる。
一冊をチャンと覚えてあったら2冊目を見たとき、どの単語も「知ってる、知ってる」…となるはずだ。
だから2冊目をやるのがアホらしくなる。
金をかけてわざわざ新しく本を買うのももったいない、そういう話になるはずだ。
だから単語にしろ、日本史にしろ、チャンと覚えよう。
しかし、それは「スゴく大変」なことなんだけど。

僕は「試験に出る英単語」(青春出版:森一郎)を使った。
昔は「単語集」と言えば、これだった。
「しけ単」とか「出る単」と呼ばれることが多かった。
日比谷高校の英語の先生だった森一郎先生が書いた本だ。
多分皆さんの両親の世代は、多くの人がこの本を使ったんじゃないだろうか。

だけど、今ではもう注目されなくなってしまった。
内容が古いからだ。
コンピュータやインターネット関係の単語が全く載っていない。
しかし、このような欠陥にも関わらず、この本はスゴい本だ。

なぜ「スゴい」かと言うと、「訳語」がスゴいのだ。
単語集は他にも沢山でている。
しかしそのほとんどは「訳語」がクソだ。
多分、大学院の学生(以下「院生」と略)のアルバイトでも雇って、彼らにやらせているのだろう。
辞書に載っている訳語を最初から適当にコピペすれば、本はできてしまう。

ところが、「出る単」はそうではない。
筆者の森先生が、多分自分で記憶している訳語を載せたのだろう。
「これは私が実際に覚えている内容です。皆さんもそこまで覚えましょう」と筆者はきっと思っているはずだ。

そう思わずにはいられない本だ。