「あら、元気ないねぇ」

 皓一郎に声を掛けてきたのは、購買にいた販売員戸木 佳央璃(とぎ かおり)でした。

「色々悩みがあって」

 皓一郎は顔を窓の方に向けました。


「って言ってもね、何の効力も無いじゃないですか~!」

 教室。

 大西 三津子(だいさい みつこ)が、口癖の『って言ってもね、何の効力も無いじゃないですか~!』と少し怒鳴りぎみに言っています。

(ちょっと正直うるさいかも)

 皓一郎はあまりの彼女の声の大きさに、ため息をつきました。

「転校早々、大変だよね」

 東野依紅子(ひがしの いくこ)が皓一郎のため息に同調しました。

 しかし、依紅子も彼の本当の悩みは知るはずもありませんでした。

「皆のいる場所って……」

 紗季の言っていたその場所に、皓一郎は心当たりがありませんでした。


 放課後。

 教室に現れたのは、小紫菜々愛でした。

「帰ろっ」

 菜々愛に強引に引きずられるように去っていく皓一郎。

 そのあまりの手早さに、誰も皓一郎を助けることができませんでした。