平野啓一郎著『富士山』。


些細なことで、私たちの運命は変わってしまう。

あり得たかもしれない幾つもの人生の中で、何故、今のこの人生なのか?

その疑問を抱えて生きていく私たちに微かな光を与える5つの短編集。


一番心に残ったのは「息吹」でした。

息子を塾の模試会場へ迎えに行った息吹は、時間を間違えて1時間も早く来てしまう。

そこで、かき氷屋に入ろうとしたのだが、あいにく混んでいて、結局マクドナルドで時間をつぶす事にする。

たまたま隣に座っていた女性2人の会話が耳に入る。

大腸内視鏡でポリープを切除し、早く発見できたから大事には至らなかったらしい。

息吹は、気になり、自分も大腸内視鏡の検査を受けることにしたのだが…。


もしあの時、かき氷屋さんが空いていて、かき氷を食べていたら、マックの女性の会話を聞くこともなく、自分は大腸内視鏡検査を受けなかったはず。

そうしたらどうなっていたか?


この息吹の妄想にだんだんとイライラしてきたのだけど、結末のシーンを読んで、いったいどっちなの?誰が妄想していたの?と分からなくなってしまいました。


本当にほんのちょっとの些細なことで、私の運命も大きく変わっているんだろうなと思います。


平野啓一郎さんの、哲学的なところ、面白いです。