積読本の中から。
白石一文著「翼」。

田宮里江子は、学生時代に友人聖子から、彼氏長谷川岳志を紹介される。
直後に、岳志に呼び出され、結婚してほしいと言われる。
あまりに唐突な申し出に驚き、もちろん断る。
そして、聖子と岳志は結婚し、以後二人とは自然と連絡を断ってしまう。

そして10年後里江子と岳志は再会し、一緒に生きていこうと言われる。
岳志から離婚を切り出された聖子が里江子のもとを訪れ、引っ越しと携帯電話番号の変更を求め、費用も全額負担すると言うのだ。
里江子は、誰かの不幸を前提にした幸福などないと、それを受け入れアメリカへ発つ。

里江子は久留米の出身で、母の法事で帰省した辺りの話は興味深い。
弟との縁も薄く、「今後、法事以外で私がここへ戻る理由はない。十三回忌が終われば二度と戻らなくてもいい。人は故郷を捨てるのではなく、こうやって失くしていくのだ。」
この台詞は自身にも当てはまり共感できた。

また、人は死んだらどうなるのか?について書かれている。
里江子は、「完全な無」「記憶の消滅」と表現する。
私もそう思ってきたが、ここでは、死してもその人の記憶は関係者の中に思い出として残る。
その人を記憶した人たちが亡くなってこそ、本当の無になる。
こういう考え方をしたことがなかったので、深いなぁと思いました。
少し哲学的な感じもしました。

白石一文さんの他の作品も読んでみたくなりました。