伊藤比呂美著「父の生きる」
作者は詩人ですが、エッセイ本も書いています。
子育てのエッセイは、息子を出産した当時に読みました。
本書は、カリフォルニア在住の一人っ子の作者が、熊本で一人暮らしをしている父を遠距離介護した記録です。
高齢になり、寂しさや苛立ちから、カリフォルニアから電話をかける娘に対して、不機嫌な会話しかできなくなった父。
そういう父へ、申し訳ないと思いながらも、だんだんと電話をかけるのが億劫になる娘。
だけど、そのままだと、余計に機嫌が悪くなる父。
数か月ごとに、カリフォルニアから熊本へ介護にいきながらも、娘には家族があり仕事があり、体調だってある。
なんともやるせない気持ちがひしひしと伝わってきます。
心に残った言葉。
「人がひとり死ねずにいる。それを見守ろうとしている。いつか死ぬ。それまで生きる。それをただ見守るだけである。でも重たい。人ひとり死ぬのを見守るには、生きている人ひとり分の力がいるようだ。」
いつか私も熊本で一人暮らししている父を見送らなくてはならず。
しかも、作者と同じ一人っ子。
こういった本を読んでおくのは、何かヒントになると思いました。
作者は、こちらの新聞にもお悩み相談の連載をもっており、そこでもよく書かれてあるのだけど、
介護はそれぞれ。決まった形はなく、その時できることをできる範囲でやるしかないと。
どういう介護をしたにせよ、おそらく悔いは残るだろうと。
重い内容ではありますが、淡々と描かれていたのが、よかったと思います。
お父様を見送った後の作者の虚しさを思うと、最後は泣いてしまいました。