「お義母さんは、周りのみんなに優しく守られて、しかも素直にうなずくからかわいい」
ある時、義妹が言った。
「いやいや、昔は母も厳しくて可愛いなんてとんでもなくて、私はずいぶんと怒られたのよ。良くも悪くも気が強いところがある」
と私。
義妹は1人娘。お父さんは今から30年以上前に亡くなられた。彼女が弟と結婚して間もなくの頃だった。それからずっと1人暮らしのお母さんだ。しかもその間、1人娘はほとんど海外で生活している。
実家に足しげく通う私に対して、義妹はそうはいかない。同じ91歳にして、こんなに違うかと思わされることが多い。
母は夏に庭で転び、そこから足の運びが悪いと言う。
「介護用品の手すりを廊下にも増やしてもらおうか?」
私は弟妹とラインで相談もしていた。
そんな矢先に、義妹の言葉に驚くばかり。
「お義姉さん、聞いてくださいよ!私が海外にいる間に母が勝手に手すりを付けてもらっていたんですよ。『こんなことしたら、どんどん筋力が落ちて歩けなくなるじゃないの!』って言ったんですけど『そんなことあなたに言われたくない』とか言っちゃって。ほんと、ウチの母はかわいくない」
正反対とも言える対応だ。
確かに母とはとても同じ年とは思えないお母さんだ。デパートにお洋服も買いに行くし、おしゃれだ。そうそう、コロナ禍での予防接種もきちんと自分で予約をして受けてきたらしい。かたや、私の母は、私が予約もして、一緒にクリニックにも付き添い、接種してきたっけ。先日のスマホ忘れ事件の対応もお母さんお見事!
彼女は結婚してからトータルで20年以上は米国暮らしだった。1人娘の彼女はお母さんがなんでも自分でできるように、厳しく言っていた。お母さんも
「ほんとにウチの娘は怖いのよ~」
と言ってらっしゃたけれど、結果、それが正解だったのか。
厳しい口調であっても心の中ではどれだけ母を案じていたか。逆にお母さんも海外に住む娘のことを気にしていただろう。寂しさもあっただろう。
あの『9.11』の日も彼女はNYに住んでいながら、知ったのはお母さんからの電話だったらしい。朝、掃除機をかけていたら
「大丈夫なの?びっくりして、すぐに受話器を取った」
と、夜のニュースを見たお母さんが日本からすぐにNYに電話してきたと。直後だったから、電話も繋がったが、私はそのあと、まったく連絡が取れなかった。
私と母、義妹とお母さん、そのほか世の中の皆さん、置かれた状況、親子関係はそれぞれだ。
私が厳しく言っていたら、母は今でも何でも1人でこなしていたろうか?私が厳しく言っていても直角ほどに曲がった腰がピンとしていたなんてことはないだろうが。