ある日、一本の電話があった。

「シオリちゃんのお母さまでしょうか?小学校4年生ということで、中学校のお受験をお考えではないでしょうか?」

と、まあ、学習塾のお誘い電話だった。我が家に確かに娘はいるけれど、名前も年も違う。間違い電話ということで、すんなり終わった。

 

 ところが、この後、こういった電話がたびたびかかるようになった。どうも同姓の「シオリ」ちゃんの情報に、電話番号だけ我が家のものが載った名簿が出回っているようだ。あんまり度重なるものだから、こちらとしても文句の一つも言いたいし、できれば根絶したい。

「責任者を出してください」

「不在です」

「名簿の出どころを教えてください」

「アルバイトなのでわかりません」

当たり前だが、こんなやり取りが繰り返されるばかり……。そうこうするうちに、それらはいったん収まった。

 

 ところが、3年後、忘れていた頃に、高校受験に向けての電話攻撃が始まったのだ。そしてもちろんその3年後には、大学受験に向けての勧誘も。名簿業者って、違法じゃないの?このご時世、そんな商売が成立するのは容易に想像がつくけれど、だったらせめて正しいものを市場に出してちょうだい!私の地道な説明が功を奏したのか、シオリちゃんがすべての受験を終える年にもなったのか、すっかり電話はかかってこなくなった。

 

 しかし、しかし、である。ある日、

「シオリちゃんのお母さまでしょうか?」

がやってきた。それは、成人式の着物レンタルだった。私は、もう怒るどころか、感動だった。小学校4年生だったシオリちゃんも成人式を迎える年になったのだ。もちろん、どこに住んでいるのか、会ったこともないけれど、私はシオリちゃんに言いたい。

「シオリちゃん、成人おめでとう!」