幼稚園の時、私同様妹もオルガンを習っていた。東芝のオルガン教室だった。地元の町の電気屋さんの2階の小さなお部屋で6台くらいのオルガンが並んでいた。母が忙しかったので、時々は私が付き添いに行っていた。小学校高学年にもなればそれくらいのことはできた。
ある時、新宿の朝日生命ホールで発表会があり、私も見に行った。さすが東芝、司会はあのサザエさんの歌でおなじみの宇野ゆう子さんで、最後にはその歌を披露してくださった。
さて、妹は、いつものお稽古仲間6人でオルガンの合奏を発表した。ブーカブーカと始まったその演奏は、まったくバラバラで、びっくりするほどお粗末だった。幼稚園児のすることとはいえ、先生もあせっただろうな。ほんの八小節くらいの短い曲、それなりに練習を積んできたはずなのに。
そして、もっと驚いたのは、妹以外の子らが一人二人と手を膝に置き始めた後も妹だけが最後までブーコブーコとのんびり弾いていたことだ。彼女は何の迷いもなく弾き切った。会場からはクスクス笑いも起こっていた。
みんなが終わった時、どさくさに紛れてやめちゃえばよかったのに。私だったらそうする。ただ、私はその時既に十歳を過ぎていた。自分が五歳だったらそんなことができたかどうかわからない。が、このあと、事あるごとに「周りを見てやめちゃえる力」を持つ私と「周りに無関係にやり抜く力」を持つ妹との差を知らされることとなる。
両親は、三番目の末っ子の余裕からか、怒ることもなく苦笑いしていた。もしそれが私だったら
「まったく、恥ずかしいったらありゃしない」
くらい言われていたと思う。オルガン教室の後、ピアノの個人レッスンを受けた私に対して、妹は楽器はとっととやめていたわ。