長男が一歳半ぐらいの頃のことだ。多くの男児がそうであるように、当時彼は働く車が大好きだった。そして、その頃、彼はごみ収集車のことを「ポイ」と呼んで、見かけるととっても喜んでいた。おそらく「ゴミをポイと捨てる」の「ポイ」と私は理解していた。

 

 ある朝、家の前で清掃車の「ゴーゴー」という音が聞こえてきた。私はそれを息子に見せてやりたくて、彼を抱えて表へ飛び出していた。しばらく見ていたら、一人のおじさんが

「ボクはこの車が好きなの?」

と聞いてくれた。私は即座に

「大好きなんです」

と答えた。すると

「このボタン押していいよ」

と言ってくれたのだ。

 

 車の後部端に直径3センチくらいの赤いボタンがあった。それを押すと、中の金属板がまわってゴミを圧縮するような仕組みになっていた。今だったら、ごみ袋が破裂して、中のものが飛んできたりして危ないからと、そんなことは絶対にやらせてもらえないだろう。さすが30年前。私は思いっきりの笑顔でお礼を言って息子をそのボタンに近づけた。が、当たり前だけれど、それを押すには結構な力が必要で、一歳半の子どもにそれは無理だった。そこで私は片手で息子を抱きかかえ、もう片方の手指を息子のそれに添えることになった。

 

 アタフタやっていたので、運転席に座っていたおじさんが降りてきた。なかなか車に乗り込んでこない同僚に、何か起こったのかと思ったのかもしれない。そして、子どもを抱きかかえ、これでもかと車後部に近づけている私を見て

「奥さ~ん、だめだよう!子ども捨てちゃあ」

って……。私はおかしくって力が抜けて、子どもを落っことしそうになったわ。

 

 それから何年かが経ち、またまた業者さんとのやり取りがあった。我が家で飼っていた犬が人懐こくておじさん達はとてもかわいがってくれていた。ガレージの隙間から顔を出していたから、よく撫でてくれたのだ。ある日、名前を聞かれた。「レグルス」って答えたけれど、どう考えても1回でマスターできる名前じゃないよなあ。案の定、何週間か経ち、洗濯ものを干している時、又聞かれた。

「奥さ~ん、名前なんだっけ?」

「レグルスなんですけど、覚えにくくて、皆さん『レグ』って呼んでいます」

と言ったら、

「ああ、ハイレグのレグね」

と、コマネチポーズまでしてくれた。もちろん、それ以降は完璧だ。

 

 最近、車の後ろに何体かのマスコットが括り付けられている清掃車も見た。ドラえもんやらミニーやら、普通のお人形もあった。それが何とも愛らしかった。可燃ゴミとして出されたものだと思うが、人形には魂が宿っているとも聞く。おじさん達は、そんなことでも考えたのだろうか?そのまま車に放り込むのは忍びないと思ったのだろう。どこかで供養しようと思ったのだろうか?

 

 人が生きていくうえで、ゴミを処理するのは必須行動でありながらなかなか好んでできない。それをやってくれる人間味あふれる楽しい業者さん達とまたどこかで接点があるといいな。