私が結婚し、子どもが生まれた頃だった。初孫の誕生に父は夢を託そうとしたのか?

 

 そんな話、初めて聞いたわ。父がパイロットに憧れていたなんて。さらに外交官なんて単語を聞かされて、びっくりぽんだよ。あ、この言葉、朝ドラでやってた?タイトルも忘れて、出てこないけれど……。

 

 言われてみればいくつか思い当たるフシはあった。私たち子ども3人が通っていた小学校の校歌に「世界へ羽ばたこう」みたいなフレーズがあって、父はお気に入りだった。PTA会長は務めたことがあったが

「多くの卒業生に世界で活躍してほしい」

なんて言ってた。校長先生でもないのに立派です。

 

 弟は高校に入学したその年の夏休みに行われた希望者だけの海外短期留学?ホームステイ?に参加していた。息子の申し出に躊躇することなく、我が家にとって決して安くないであろう費用をポンと出した父に特別な思いを感じた。

 

 ちょうどその頃だったか、我が家の近所に外国人一家が引っ越してきた。そして、お米を買ってくれるようになった。ある日、我が家の前を通りかかったご家族の一人の男の子(中学生くらい?)に

「ぜひぜひ、うちの子ども達と英語でお話ししてほしい」

と声をかけ、半ば強引に彼を招き入れた。

 

 当時私たちが習った英語なんて文法やリーダーが中心で、会話なんてしたことがない。黙りこくる私の横で、なんとか弟が挑戦したものの、5分も経たずして、彼は退散した。

 

 そのご家族は大変フレンドリーで、お店の前を通るときはいつもニコニコと手を振ってくれた。ある日、たまたま父が配達中に、パパさんと道端でお会いしたらしい。その時

「オー、ナイスマン」

と言われたんだって。夕食の時に自慢げに父が話した。

 

 いやいや

「お父ちゃん、それはライスマンの聞き間違えだと思うよ」

とは、私たちはだれも言えなかった。それとも父のジョークだったのかなぁ?

 

 仏壇の写真に聞いてみても答えは返ってこない。