結婚すると、赤の他人同士が一緒に暮らすんだから、こんなに違うんだってことがいくつかある。代表的なものがお料理、味、だと思うが、夫から
「おふくろの味がなつかしいなあ」
みたいなこと、言われたことがないのは幸いです。夫は
「大学の寮に入っていて、そこで飯を食っていたから忘れたんだ」
って言います。それでも何かしらありそうだが、あまり執着がないようで、私は助かっている。
常備薬ってどこの家庭でもあると思うが、その中身っていろいろだ。たとえば、昔だけれど、頭痛薬としてノーシンなのか、イブなのか、バファリンなのか、最近はロキソニンもよく耳にする。そもそも頭痛に縁のない家庭は置いていないかもしれない。夫の実家がそうだ。私の田舎のおばあちゃんはケロリンを飲んでいた。
新婚の頃、夫が
「目薬がない」
と言い出した。私の実家では薬箱に目薬はなかった。蚊に刺された時も
「キンカンがない」
とこれまた大騒ぎ。
薬とお家の関係って、代々受け継がれているようだ。特に漢方とかね。友人が
「ウチはいつでもバファリンよ。頭痛、歯痛、風邪、腹痛も全部」
と言っていたからびっくりした。頭痛、歯痛までは理解できる。まあ、解熱効果もあるから風邪も良しとしよう。が、腹痛にも効くの?きっと両親に倣ってずっとそのように使ってきたんだろう。
さて、今では目薬もキンカンも我が家の薬箱に入っている。ドラッグストアーでお金を払えば手に入るんだから、「おふくろの味」を要求されるよりたやすいもんだ。
昔『赤チン』ってあった。転んで膝小僧をすりむいたりしたとき、塗る液体薬。ふたを開けるとその内側に1センチ角くらいのスポンジがついている。それで直接患部に塗る。文字通り赤いけれど、塗った後、角度によっては金色や玉虫色にちょっと光る。消毒、消炎剤だったのだろう。
小学生の頃、ある日弟は膝小僧に擦り傷を作り、赤チンを塗った。それがなんか面白かったらしい。その周りにある、ほとんど治りかかっている古傷にも塗った。どんどん拡がり、かさぶたの痕やらホクロやら、蚊に刺された痕とか、手足のむき出しになっているちょっと気になる部分全部にその作業を施した。私は、絶対に怒られるだろうと分かっていたが、事の結末に興味もあり静観していた。
夢中になっていた弟が
「ふうっ」
と顔を上げた時、手足には赤いヒョウ柄が出来上がっていた。私はおなかを抱えて笑った。弟はなぜか満足気に手足を眺めていた。
案の定、母に怒られた。