6歳、年長さんの夏でした。父が後ろを支えて、
「大丈夫、持ってるからねー」
と叫んで走ってくれて。それを信じてこぎ続けた。あっという間に乗れるようになった。
「自転車乗れないと困るからね。それに、こういうことは小さい時に身体で覚えることだからね」
父はそう言っていた。
自分の自転車もあったろうけど、あまり記憶にない。昭和40年代、1人の子どもに成長に伴って自転車を数台買い与える時代ではなかった。私は背も大きかったし、小学生になった頃には、既に親の自転車を乗りこなしていた。
三角乗りもしたけれど、きちんとサドルに座って、右足でペダルをしっかり踏めば、左のペダルが上にくる。そして、左を強くこぐ……の繰り返し。「停まったときに両足がぺたりと地面につく高さが適切」なんて無視もいいとこ。乗ってるときに、ペダルに両足が届かないんだもの。交通ルールも何のその。
高校時代の修学旅行でサイクリングをすることになった。自転車で観光地を回ることになった。ところが、クラスに自転車に乗れない、という女子がいた。そういう人がいることにびっくりしてしまった。私にとっては、必須と思っていたから。でも練習しなければ乗れないんだ。当たり前なことに気付いた。
現地では、仲良しのお友だちが、今ではめったに見かけない2人乗り自転車(サドルもペダルも2人分ずつある、長めの自転車です)でお付き合いすることになった。私はグループが一緒ではなかったので、どんな風だったか知らないけれど。あれって、ほとんど1人の人の力で2人分こぐってこと?そもそも乗れたのかなあ?それとも1人用の自転車の後ろの荷台に座って2人乗りしたのかなあ?
さて、結婚してから、知り合った方の中にもいらっしゃった。自転車に乗れない女性。ところが、私の住まい辺りは自転車がないと不便なところ。彼女は旦那さんの教えで毎晩練習していた。そしてついに乗れるようになった。どれほどかかったか、その努力はすごいと思う。子どもならばあっという間なのに。
その姿は「ザ!正しい乗り方」って感じ。絶対に手離しはできそうもなく、一定のリズムで背筋をのばしてまっすぐ前を見据えてこいでいる。スピードは出せない。右折、左折もきっちり。安定しているようでいて、どこか危なっかしい感じ。
こういうことってやっぱり小さい時に身体で覚えるものなのね。父の言うとおりだった。
