3年生になってクラス替えがあった。僕はまた、タモちゃんと同じクラスになった。タモちゃんは放課後、少しずつ自分のことを僕だけに話してくれるようになった。

 

 「姉ちゃんはバスに乗って、少しだけ離れた中学校に通っているんだ」

「えっ?三中じゃないの?」

僕たちは、小学校を卒業すると、第二中学校か、第三中学校に行くことになっていた。大きな道を隔てて、区域が分かれていた。中学受験組は別だ。もっとも当時の僕は、私立中学校なんて知るよしもなかったが。

 

 「なんか、シエン学級とかいって、身体が不自由な子とか、頭の悪い子とか、が行くらしいんだよ。おかあさんが言ってた。でもね、姉ちゃんは三中でもいいって先生に言われたらしいんだけど、おとやんとおかあさんで話して決めたらしい」

タモちゃんはおとうさんのことを「おとやん」と呼んでいた。

 

 そういえば、タモちゃんにはお姉さんがいたっけ。1回見たことあったけど、タモちゃんが髪を伸ばして、スカートをはいたらそのまんま、ってくらい似ていたな。

 

 「姉ちゃん、小学校ではなにをやってもビリでさ、家で泣いてたんだよ。いじめられるって」

僕は、ハッとした。あの去年の「エンガチョ事件」をタモちゃんはどう思っているんだろう?忘れたのかな?覚えていて、わざと僕にこんな話をしたのかな?

 

 「それで、姉ちゃんはバスに乗って中学は別のところに行ったんだよ。そしたらさ、そのクラスで学級委員だって。なんでもみんなよりできるから先生に任されて、大喜びしてるよ。『自分がやらなきゃ』って、いろんな事頑張れるって。おとやんも喜んでるよ。でね、僕にもそこに行けって言うんだよ。それは嫌なんだけどさ」

タモちゃんは、いつもの舌足らずなゆっくりとした独特のしゃべり方で、語った。その時は珍しく熱く語っていた。

 

 僕はこういう話を誰にも言わない。そんな僕をタモちゃんが信頼してくれたと思うとちょっぴりうれしかった

 

 タモちゃんにもプライドはある。僕だってあるよ。あったよ、あの頃は。僕は何をやってもタモちゃんより少しだけできた。テストの点数だって、体育だって。 でもあの時は知らない言葉だったけど、きっと「どんぐりの背比べ」ってやつだったな。

 

 ただ大きく違うことがあった。それは家庭環境だ。タモちゃんはおじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らしていた。それが理由かはわからないけれど、どこか大らかで優しかった。そして、貧乏じゃなかった。それが、僕んちはどうだい!僕と弟たちは3人ともガリガリに痩せていた。おなか一杯ご飯もおやつも食べたかった。

 

 だから、タモちゃんは堂々としてるのかな?どこか肝が据わっていた感じを受けた。

 

   続く