弟が日本に一時帰国できるらしい。正月に母が入院となったが、彼はその間も日本に戻ってくることはなかった。母の様子を心配するラインが何度も届いたが、帰ってくることはなかった。

「顔さえ見せてくれたら、母は喜ぶだろう。元気にもなるだろう」

と、私は妹と話していた。その後、母はめでたく退院し、今では元の生活に戻りつつある。

 

 先日

「ようやく夏に戻れます」

と弟からラインがあった。その際は実家に集まろうと言う。そして

「お寿司でもどうですか?」

と。

 

 これ、弟は得意だ。まず、お寿司が大好物。昨年も一昨年も帰国の際には

「お寿司でもどうですか?」

があった。そして、実家の近くの廻るお寿司屋さんにテイクアウトの予約を入れるのは私の役目だ。

 

 その昔は、近所に出前をしてくれる専門店も数件あったが、今はもうすべて閉店となり、新しくできたのはいくつかの回転寿司チェーン店だ。そのうちの1件、ネタも新鮮で、おいしくて、弟に言わせると

「コスパでは銀座の高級寿司店にも劣らない」

だそうな。私なんて、銀座の寿司店、行ったことないわ。そして、当日受け取りも実家に近い私の役目となる。お支払いは母だったり、私だったり。

 

 「なんか、おかしい」

と思い、昨年は面と向かって私は弟に言ってみた。

「『お寿司でもどうですか?』ってさあ、『支払いも準備も自分がやりますからどうですか?』とか『私が持参しますから、皆さんでつまみませんか?』じゃないの?今まで、お金も予約も受け取りも全部人任せって、これおかしくない?」

すると弟はハハハと笑った。でね、私は伝えたことで満足しちゃうのか、弟の笑い顔に癒されちゃうのか、その話は終わってしまった。

 

 弟が帰ってから、母とそのことを再度話題にする。母は

「みっちゃんは、いっつもチャッカリしているねぇ」

と言って笑う。でもまんざらでもなさそう。そして、その後に続いた母の言葉に私は愕然とした。

「でもね、みっちゃんはいつも嬉しそうだよ。beachanは、私が何か『あげる』って言っても遠慮してなのか、受け取らない。物をもらっても嬉しそうじゃない」

 

 えっ?そういうこと?確かに母からおこづかいと言われても

「いいよ、いいよ。これはおかあちゃんのものだよ。本当は私が両親に渡さなくちゃいけない年齢だよ」

なんて断ってしまったこともある。それでもたまにもらったときには

「ありがとう」

とニコニコしてきたつもりだけれど?アレは軽くて邪魔にならず、邪魔どころか、大変ありがたい。大変嬉しい。喜ばしくいただいてきましたけど?

 

 いつまでも子どもで良かったのか‥‥‥。気づくのが遅すぎたな。なんだか、これを理由にしちゃいけないけど、やっぱり私は長女っぽいな。損な役回りだ。

 

 そして、今回は、弟が追伸として次のようなラインを送ってきた。

「自分で言い出しておいてお金を払わないと何か言われそうなので、今回私がお寿司のお支払いをいたします。母にもよくお伝え願います。私が支払うのでは、のどを通りませんか?」

だと。

 

 前半部分にはちょっとイラッとしたが、私はすぐに

「のど、通る通る、通りますとも」

と返信した。早速、母に伝えなくちゃ。母は、どんな顔をするだろう?何と言うだろう?

 

 今気づいたけど、予約と受け取りは相変わらず姉の私のようだ。