90歳の実母は一人暮らしをしている。私は自転車で行かれる距離に住んでいる。

 

 朝早く、母から、庭で転んだと電話があった。4:00起床とその1日の始まりは早い。耳の遠い母は、補聴器をつけていても電話での会話は不可能だ。自分からならば、私の携帯に伝えたいことを勝手にしゃべることができる。逆に私からかけて、どんなに大きな声を張り上げても

「どちらさまですか?‥‥‥わからないので切りますね」

ガチャン!で終わる。詐欺に引っかかる心配はないが。

 

 仕事の前に立ち寄る。数回転んだあと、ゴミ出しをしようとシルバーカーにゴミを積んで歩き出したら、足が前に出なくなり、見知らぬお兄さんと女性の方が助けてくれたという。

 

 私は熱中症と思い込み、涼しい部屋でしばらく見守った。飲み物を飲ませ、私のお弁当のおにぎりを食べさせた。元気だ。すると

「トランプやる時間ある?」

びっくりした。これは熱中症ではないな。

「会社の帰りに寄るから、無理しないでね。飲み物と食べ物はしっかりね」

と実家を後にした。

 

 その後も足の運びが悪いということで診察を受けると、

「高齢者は転んだりすると大きな衝撃を受けるので、そういった症状が出やすいです。骨折はしていません。治るのには時間がかかるかもしれませんね」

とのことだった。

 

 週に2回のお風呂介助と、1回のおつかいをお願いしているヘルパーさんがケアマネさんに伝えてくれたらしく、すぐに電話があった。詳しい経緯を説明すると、「訪問リハビリ」を勧められた。

 

 「おかあちゃん、訪問リハビリといって、先生が来てくれて、マッサージやいろいろ簡単な運動を教えてくれて一緒にやってくれるみたい。お試しでいいからやってみようよ。治るかもしれないよ。初めての時は私も来るから」

 

 母は即座に

「そういうのは鬱陶しい」

だと。「鬱陶しいですと?」私はそういう言葉を聞くと、母がそう言うんだったら、やめよう、と思っちゃう。

 

 現在、母は腰が直角くらいに曲がり、歩くときは必ずどこかにつかまって伝い歩きだ。立ち上がる時も容易ではない。痛々しさまで感じてしまう。そんな姿を見ると、いつ何があってもおかしくないと思う。事実、今年のお正月には大変なことになり、入院した。



 私は介護というほどのことはしていないが、お呼びがあれば駆けつける。病院付き添い、あとはもっぱら安否確認。そしてボードゲームとトランプ相手。


 心配事は尽きないが、それを解決するためのこと、私が良かれと思うことを母はほとんど拒否する。結果、私は母の望むことをし、望まないことには手を出さない、その方針でやってきた。これでいいのかな?少なくとも何十年か、週に1回以上は実家に行き、時間を共にしてきた今の私に、ここで母に何かあっても悔いはないんだけれど。


 それでも迷う。「訪問リハビリ」「見守りなどの機器」「防犯対策機器」「デイサービス」「ショートステイ」など、強引に進めてみようか?母はぜーんぶ鬱陶しいと拒否している。