『福田村事件』を目撃した | ブラジリィー・アン・山田の活動日記『もう少しだけマシな理由』

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脚本家、演出家であるブラジリィー・アン・山田の活動日記です。主に、カレーや映画や変なグルメや宣伝のことを書いております。

ついに『福田村事件』を見ました。

2時間20分ということで、覚悟していましたが、あっという間の素晴らしい映画でした。

平日の昼間の回ですが、お客さんは60代以上の方がほとんどで、半分ぐらい埋まってました。大盛況。

 

千葉県の福田村で実際に起きた事件を映画化。

関東大震災の際に朝鮮人が暴動を起こしているというデマが流れ、

福田村に讃岐から来た行商たちが朝鮮人と間違われて、9名が自警団に殺害された。

 

朝鮮から戻った夫婦、生まれてからずっと福田村で暮らす村人、

部落出身の薬売りの行商、戦争未亡人と間男、

さまざまな登場人物が活き活きと描かれ、各人の葛藤がクライマックスに集結する脚本は圧巻。

 

 

《ネタバレ》

 

 

「この人たちは日本人だ!殺してはいけない!」と村の良心として描かれていた村長が暴走する村人たちを止める。

「そうだそうだ」と思った観客に対し、

「朝鮮人なら殺してもいいのか?」と反論する瑛太(行商)の言葉に、胸抉られる。

 

この事件に加害者はいたのか?

凄惨な現場で、みんなが皆、被害者みたいな顔して、力なく肩を落とす。

 

時代のせいか? それもちがう。

戦争のせい? その戦争を引き起こしたのは誰なのか?

政府なのか? 新聞なのか? 民衆なのか?

ラスト、川を流れていく主人公たちのように、100年後の我々はどこへ流れ着いたのか?

 

加害者と被害者、その原因を単純化せずに絶妙すぎるバランス感覚で、

この事件を描いた監督と脚本家陣に感服しました。

 

俳優たちもみなさん素晴らしすぎる。

コムアイさんのキリッとした佇まい、気だるそうな田中麗奈、色気ムンムンの魅力的な東出昌大、

水道橋博士だったんだと後から驚くほどリアルな演技、瑛太さんのカリスマっぷり(行商たちの”顔”もいい!)、

カトウシンスケくんの社会主義者も猫背な感じとかたまらない。

田舎の村にちょっと美男美女が揃いすぎているが。

 

映画が終わった後、しばらく立ち上がれなくなる、凄まじい作品でした。