未来日記⑯
美月はスマホの画面を見つめていた。
🌸ようこそ🌸
利用者数:5
あなたも未来を予約しますか?
【はい】🌸 【もちろん】🌸
「何これ?」
首を傾げる美月。
すると咲が身を乗り出した。
「おっ。」
「その反応、見覚えある。」
真一も頷く。
「俺も最初そうだった。」
結も笑う。
「私も。」
美月はますます混乱する。
「何なの?」
咲は得意げに胸を張った。
「未来日記。」
「名前は見れば分かる。」
「大丈夫。私も最初そう言った。」
真一が吹き出した。
結も肩を震わせている。
美月は半分呆れながらアプリを見る。
「で、何するアプリなの?」
咲は人差し指を立てた。
「詳しくはアプリの注意書きを読んで。」
「説明する気ないの?」
「あるけど、その方が早い。」
確かにそうだった。
美月はアプリを開く。
すると注意書きが表示される。
未来日記の原則
① 実現可能な未来しか書けません
② 未来は与えられません
③ 書いた人が未来を作ります
④ 実現すると『🌸大変よくできました🌸』スタンプが押されます
⑤ 書かなかった未来も存在します
美月は最後まで読む。
そして。
「意外と真面目。」
咲
「でしょ?」
真一
「変なアプリだけどな。」
結
「でも嫌いじゃない。」
秋川先生
「先生も使ってる。」
美月
「先生も!?」
茜先生は静かに頷いた。
「利用者です。」
その言い方に全員が笑う。
美月は再び画面を見る。
未来を作る。
未来を与えない。
書いた人が未来を作る。
その言葉は妙に心に残った。
「へぇ……」
咲はニヤニヤしている。
「どう?」
「何が?」
「仲間になる?」
美月は周りを見る。
窓際の席。
本棚。
静かな空気。
楽しそうな仲間たち。
そして未来日記。
少し考える。
本当に少しだけ。
そして。
【はい】🌸
を押した。
画面が桜色に光る。
空白ページが現れる。
カーソルが点滅する。
「何書こう……」
美月は呟く。
すると。
直樹が突然顔を上げた。
みんな驚く。
寝ていたはずなのに。
直樹は半目のまま言った。
「最初は簡単なのでいい。」
美月
「起きてたの?」
直樹
「今起きた。」
咲
「絶対嘘。」
直樹
「例えば。」
未来日記を開く。
そして見せる。
🌸大変よくできました🌸
美月
「そんなのあり!?」
咲は机を叩いて笑った。
結も笑う。
真一も吹き出した。
秋川先生は
「実に森原くんらしい。」
と評価した。
図書室は今日も平和だった。
美月は笑いながら、
未来日記の最初のページにこう書く。
借りたい本を見つける
入力完了。
画面が光る。
《未来を予約しました》🌸
咲は嬉しそうに言った。
「美月ちゃんも未来日記の仲間だね😊」
美月は少し照れながら笑った。
「うん。」
そして未来日記の利用者数は、
静かに――
6
へ変わった。🌸📖✨🌸
未来日記⑮
数日後。
昼休み。
図書室。
窓際のいつもの席。
真一。
結。
咲。
直樹。
そして時々様子を見に来る秋川先生。
すっかり見慣れた光景になっていた。
結が本を読んでいる。
真一は新しく借りた歴史小説。
咲はスマホで未来日記を開いている。
直樹は――
寝ていた。
図書室でも寝ていた。
「直樹。」
咲が呆れた声を出す。
「静かで落ち着く。」
「寝る場所じゃないから。」
「知ってる。」
「絶対わかってない。」
そんなやり取りをしていると。
図書室の扉が開いた。
一人の女子生徒が入ってくる。
肩まで伸びた黒髪。
落ち着いた雰囲気。
少し大きめのトートバッグ。
彼女は本棚へ向かいかけて――
足を止めた。
「あれ?」
窓際の席を見る。
そして目を丸くする。
「篠原さん?」
結が顔を上げた。
「あ。」
少し驚いた表情になる。
「朝倉さん。」
朝倉美月。
一年C組。
結とは同じクラスだが、そこまで接点は多くない。
成績優秀。
読書好き。
図書委員。
図書室では割と有名人だった。
美月は結を見る。
次に真一を見る。
咲を見る。
そして。
寝ている直樹を見る。
「……」
数秒沈黙。
そして。
「増えてる。」
真一たち 「?」
美月は真顔だった。
「前に見た時は篠原さん一人だった。」
結 「あー……」
確かにそうだった。
入学した頃。
結はいつも一人で本を読んでいた。
美月は続ける。
「次に見たら高瀬くんがいた。」
真一 「見られてたのか。」
「図書委員だから。」
妙に説得力がある。
そして。
「今日は四人。」
美月は少し考える。
「増殖してる。」
咲が吹き出した。
「菌みたいに言わないで!」
結も笑う。
真一も苦笑い。
直樹だけ寝ている。
平和だった。
美月はそんな様子を見ながら、
少しだけ微笑んだ。
「なんかいいね。」
結が首を傾げる。
「何が?」
「楽しそう。」
その言葉に。
結は少しだけ考えた。
そして小さく頷く。
「うん。」
それは素直な返事だった。
美月は少し驚く。
以前の結なら。
そんな風に即答しなかった気がする。
結は変わった。
きっと。
この場所で。
この仲間たちと出会って。
少しずつ。
「朝倉さんも座る?」
咲が空いている席を指差す。
美月は目をぱちぱちさせる。
「いいの?」
「もちろん。」
結が笑う。
「図書室の仲間は歓迎らしいから。」
全員の視線が秋川先生へ向く。
ちょうどカウンターから見ていた茜先生は即答した。
「歓迎します。」
「先生公認なんだ。」
美月が少し笑う。
そして空いている席へ腰掛けた。
その瞬間。
ポケットのスマホが震える。
美月は首を傾げる。
見覚えのない通知だった。
画面には。
青い手帳のアイコン。
🌸ようこそ🌸
利用者数:5
あなたも未来を予約しますか?
【はい】🌸 【もちろん】🌸
美月 「……何これ?」
咲 「あ。」
真一 「あ。」
結 「あ。」
秋川先生 「あら。」
直樹 「……すぅ……」
まだ寝ている。
こうして。
図書室の仲間は五人になった。
そして未来日記の利用者も、
また一人増えようとしていた。🌸📖✨😊
未来日記⑭
四時間目終了。
昼休み。
チャイムが鳴る。
真一はいつものように立ち上がった。
結も席を立つ。
咲も鞄からスマホを取り出す。
最近の日課。
図書室へ行くこと。
三人とも自然に教室を出ていく。
その様子を。
後ろの席で森原直樹はぼんやり見ていた。
「……」
咲。
結。
高瀬。
三人とも同じ方向へ向かう。
ここ数日ずっとだ。
気にならないと言えば嘘になる。
だが。
追いかけるほどでもない。
直樹はそう思っていた。
しかし。
ポケットのスマホが震える。
未来日記だった。
🌸本日の未来はありますか?🌸
「なんだよそれ」
直樹は小さく呟く。
昨日は勝手に入っていたアプリ。
気付けば消していない。
何となく開いてしまう。
空白ページ。
点滅するカーソル。
しばらく眺める。
何も思いつかない。
テスト勉強?
部活?
昼寝?
どれも面倒だ。
だが。
ふと浮かんだのは。
さっきの三人だった。
直樹は適当に入力する。
咲がどこへ行ってるか確認する
入力。
画面が桜色に光る。
《未来を予約しました》🌸
「……」
直樹は思わず笑う。
何だこのアプリ。
本当に変だ。
しかし。
予約してしまった以上、
妙な責任感が生まれる。
未来を作るのは本人。
利用規約にもそう書いてあった。
「仕方ねぇな」
直樹は立ち上がった。
そして。
咲たちの後を追う。
数分後。
図書室前。
直樹は扉の前で立ち止まる。
「図書室?」
予想外だった。
咲と図書室。
最も結び付かない組み合わせだ。
恐る恐る中を覗く。
すると。
窓際の席。
結。
高瀬。
咲。
そして秋川先生。
四人が楽しそうに話していた。
直樹は目を瞬かせる。
咲が笑っている。
結も笑っている。
高瀬も。
教室ではあまり見ない顔だった。
「へぇ」
その瞬間。
咲が気付いた。
「あ。」
全員の視線が集まる。
直樹。
固まる。
咲。
ニヤリ。
「あー!!」
嫌な予感。
ものすごく嫌な予感。
「直樹じゃん!」
「……」
「何してんの?」
「いや。」
「いや?」
「通りかかった。」
「図書室の前を?」
「たまたま。」
全員が思った。
嘘だ。
と。
秋川先生がくすっと笑う。
結も少し笑っている。
真一も察している。
咲は立ち上がった。
そして。
満面の笑みで言った。
「直樹。」
「なんだよ。」
「仲間になる?」
沈黙。
直樹は図書室を見渡す。
本棚。
窓際。
静かな空気。
思ったより悪くない。
そして。
咲がいる。
少しだけ嬉しそうな顔で。
直樹は頭を掻いた。
「たまになら。」
咲の顔が明るくなる。
「決まり!」
その瞬間。
直樹のスマホが震えた。
🌸大変よくできました🌸
『咲がどこへ行ってるか確認する』
実現しました
直樹 「……マジか。」
咲 「何?」
直樹 「いや。」
未来日記を閉じる。
そして初めて。
図書室の空いている席へ座った。
利用者数。
4。
いや――
まもなく。
5。 🌸📖✨