第12話の開幕で、われわれは少年の大発見の瞬間を目の当たりにすることになる。
磁石のNとSは近づけるだけでくっつくという、世紀の大発見をした10歳の少年。
作中のキャラクターのみならず、読者からも絶賛されると思われたこの科学史上に残る大発見に、なんのためらいもなく水を差す一人の少年。
特許権を脅かされることでも恐れたのだろうか、発見者の少年は体中の血液が煮えたぎるほど怒り狂う。
彼はその怒りのあまり理性や言葉さえも失い、本来ならばセリフとして表現することさえ困難と思われる(どちらかといえば擬音語に近い)唸り声を発しながら、目の前のライバルを執拗に追いかける。
とうとう獲物を追い詰めた彼は、目標をどう見誤ったのだろうか。
目の前にいる小動物同然の少年の命などその気になればいともたやすく奪い去るほど屈強な彼の拳は、目標物の腹に食い込むわけでも、顔面にめり込むわけでもなく、ただあらぬ方向に空を切っただけであった。
このようにして獲物として追い詰められた少年はかろうじて命拾いをし、ドラえもん史上最初となるシリーズ存続の危機は回避されることになったのだ。