先日アース・ウインド・ファイアのボーカル、モーリス・ホワイトが亡くなりました。
彼の訃報に触れたとき、自分でも思いもかけないほどのショックがあって、「あー俺ってこんなにアースの音楽好きだったんだな...」と改めて噛みしめている今日この頃です。

 アースが登場した70年代の黒人音楽シーンには、ファンタジーな世界観を表現するアーティストがたくさんいました。自分たちのルーツであるアフリカへの回帰思想や、誰もが平等なユートピアとしての宇宙への憧れ等々、彼らの世界観は荒唐無稽そのものなんだけど、アーティストの圧倒的なパワーで違う世界に連れてかれちゃうんですよねー。
 中でもアースの放つメッセージはストレートでしかも青臭い!でも!だからこそ胸が熱くなって時には泣いてしまってる俺がいる。そのユートピア行きの宇宙船に「俺も乗っけてくれ!」って思っちゃう。音楽の力ってすげぇな、と思わせてくれたのがアースなんです。

 アースといえば、充実のホーンセクションも忘れちゃいけない。リズムに強烈なアクセントを入れるだけの凡百のファンクバンドとは違い、ボーカルと絡むオブリガードとか、アースのホーンセクションはきっちり聴かせる演奏をしてくれます。
 そもそも私がアースを手に取ったきっかけは、ホーンセクションが気になったからでした。学生時代、トランペットを吹いていた関係で、ホーンセクションのカッコいいバンドをジャンル構わず片っ端から聴いていたのですが、当時自分の好きな音楽は何なのか、まったくもって五里霧中でした。しかしアースと出会ったとき「俺の音楽はこれかもしれない!」という確信に近いものをつかむことができた感覚がありました。今は70年代のジャズやファンクを中心に豊かな黒人音楽の世界を楽しむことができていますが、その入り口に導いてくれたのがアースだったのです。

 今夜は、アースの中心として、その世界観を作ってきたモーリス・ホワイトへ、私を豊かな黒人音楽の世界へ導いてくれた感謝を込めて、この曲をUPしたいと思います。

 美しい季節に巡り会った恋人へ、問いかける形ではじまるこのご機嫌なディスコ・ナンバーの歌いだしはこうです。

「覚えているかい?9月21日の星空を?」
 
 覚えてるぜ!アースの音楽と出会った時のときめきを!そして忘れねぇよ!これからも!

 ようこそ私のブログにおいでくださいました。

 このブログは喇叭吹きの筆者がJAZZ・FUNK・その他ポピュラーミュージックについて語るブログです。筆者がこのブログを書く目的は、出会った音楽とどう向き合い、どう鑑賞するかを自分自身に問いかけ、自分の好きな音楽を探求していくことにあります。また、ゆくゆくは動画やCDのリンクを貼った記事を分類して、このブログ全体を、私の好きな音楽のアーカイブにしたい、とも考えています。お越しになった皆さんには、このブログを通して好きな音楽を探したり、鑑賞の仕方についてのヒントなど見つけていただければ、これに勝る喜びはありません。



 筆者は小学校4年の時に父親の影響でトランペットを手にし、以来大学卒業まで、ずっと吹奏楽に関わってきました。しかしトランペットを続けるうちに他のジャンルの音楽にも興味が湧いて、JAZZやFUNKを中心にBRASSやHORNのカッコいい音楽をずっと探してきました。その関係でこのブログの主に扱う領域としてはJAZZやFUNKを中心としたBRASSのカッコいい音楽、ということになります。


筆者自身、JAZZだとかR&Bについては、それを専門に極めた「通」の方からみれば、知識的には至らないところもあるかと思います。しかし


そんな筆者のブログでも、特長を挙げるとするならば、

①ジャンルにこだわらず、素晴らしい楽器の演奏を集めているところ、

②親しみやすいポピュラー・ミュージックも取り上げるところ、

③筆者が楽器をやっていた関係で、管楽器プレイヤーの目線が入ること

等でしょうか。


 また、本ブログは批評とか評論とか呼べるようなものではございません。文章にした以上、その内容について最低限の責任は持つつもりですが、真面目に書いていても所詮個人的な趣味のものですから、その点ご理解いただいて、おおらかな気持ちで読んでいただけると幸いです。

 

 いやぁ、この時期に聴く「枯葉」って、やっぱいいっすよね。

 元々は、シャンソンで原題を「Les Feuilles mortes」といいます。しかし、今日では英題の「Autumn Leaves」が圧倒的に人々の耳に馴染んでいることでしょう。50年代にアメリカに輸入された同曲はピアノのインストゥルメンタル版やフランク・シナトラの歌唱(上の動画)によって大ヒットし、秋のポピュラー・ミュージックの大定番として今日に至ります。
 物悲しい晩秋に終わった恋の思い出をかみしめるっていう曲の世界観は、まぁベタっちゃあベタなんですが、だからこそ時代を超えて愛されているともいえる。たとえ陳腐でも、いや、陳腐だからこそ、多くの人々の心に届いて、慰めたり寄り添ってくれるのがポピュラーミュージックの美点ですからね。その点でやっぱり枯葉は名曲だと思います。

また、非ポピュラーなJAZZ界隈の人々にとっても「枯葉」は特別な意味を持った曲だといえます。マイルス・デイヴィスの「枯葉」、ビル・エヴァンスの「枯葉」等々、JAZZの巨人たちによって名演とたたえられる多くの「枯葉」が生み出され、JAZZ界においても最重要なスタンダードのひとつとして定着しているのです。
 JAZZにおける枯葉は聴き比べるのが面白い。みんなが知ってるリリカルなメロディーと世界観をいかにして自分の色に染め上げるか。偉大なジャズメンたちはそこにこそ腐心してきたといえるでしょう。枯葉の世界に浸りたい!という聴衆の期待に応えるのか、それとも思い切って解体するのか、ジャズメンたちのその選択をみるだけでもなかなかスリリングで楽しいものです。また、枯葉という定点から様々なミュージシャンを観測することでミュージシャンごとの個性がはっきりと見えてきます。私はJAZZの本質は独創性の追求だと思うので、もし「枯葉」の定点観測によってミュージシャンの個性がわかってきたならば、「JAZZってこういう風に楽しめばいいんだ!」っていう気づきにもつながるのではないでしょうか。

 さぁ、ここからは「枯葉」の聴き比べとまいりましょう。「枯葉」の名演は数あれど、JAZZのピアノやら歌については、私が語れるほど語彙を持ってないもんで、今回は2人のトランペッターの枯葉を取り上げるにとどめたいと思います。あとは皆さんで色々探してみてね!

まずは王道、マイルス・デイヴィスの枯葉から

マイルス・デイヴィスといえば、初心者には難解な印象が強いようです。私とてそれは例外ではなかったのですが、耳に馴染んだテーマを割と崩さずに吹いてくれるこの演奏は、初めて聴いたときすんなり入っていくことができました(崩しまくってる演奏もあるけど)。私にとっては、マイケルジャクソンのカヴァ―である「human nature」と併せてマイルス入門の一曲でしたね。
 まず雰囲気がぴったりじゃないっすか!もはや原曲よりも「枯葉」っぽいとすら言えるのではあるまいか。シンプルなビートの上でマイルスの喇叭がポツリ・ポツリと語ってます。音の数は少ないですが、だからこそフレージングとか音の間をたっぷり味わってほしい。またミュートの喇叭がねぇ、いいんですよ!感情を押し殺してもなお漏れてくる感じで。さらに、さんざんマイルスの世界に酔いしれたあとでおなじみのテーマに戻ってくる構成がまたニクい!最後のテーマの一番エモーションが高まるところで、キーーーン!と、しっかりミュートを鳴らしての吹きのばしを聴いた瞬間、もうイクぅーーーードキドキですよ!
 どこまでも渋い、クールなマイルスにイかされたい人おすすめの「枯葉」です。

さて2曲目はチェット・ベイカーの「枯葉」

 喇叭を吹くジェームス・ディーン、ジャズ界きっての色男、チェット・ベイカー。若いころは実力もさることながら黒人音楽のJAZZに誕生した白人イケメンスターということもあってアイドル的な人気がありました。しかし生涯にわたってドラッグとの関係が切れることなく、この「枯葉」を吹き込むころには身も心もすっかり枯れてしまっていました。しかし悲しいかな、中性的な甘いヴォーカルと、それをそのまま置き換えたような喇叭はなお美しかった。
 さて「枯葉」についてですが、マイルス版とはまるで違います。エレクトリックなピアノサウンドに象徴的ですが、非常に都会的で近代的なイメージです。アップテンポでリズムセクションが暴れている上で、チェットの喇叭が、ポールのアルトが、甘い旋律を奏でます。細かいリズムとアドリブが折り重なり絡み合いながら終焉に向かってとめどなく流れていく。チェットの温もりのあるサウンドがリズムの海に揺蕩っている、そんな感じでしょうか。個人的にはラストの直前にアルトがメインのテーマを甘く切なく歌うところがたまらんですね。ここまでノンストップで流れてきたところで、フッと甘いメロディを聴かす、この緩急!泣いてまうやろー!
 チェットの温もりを感じたい!という方にはこちらがおすすめ。

今回取り上げた「枯葉」が聴ける音源
Somethin’ Else/Blue Note

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マイルスの「枯葉」が入った1枚。キャノンボール・アダレイの名義だが、実質はマイルスのリーダー作。JAZZの大名盤のひとつです

枯葉/キングレコード

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チェット・ベイカーの「枯葉」が入った1枚。ファンとしてはこのアルバムで、彼のヴォーカルの魅力にも触れてほしいところ

キーワード:Miles Davis・Chet Baker・Frank Sinatra・Autumn Leaves