2年ほど前に出た本ですが、シンプルな内容ながら、目からウロコの本。
顧客ロイヤルティ論の専門家、フレッド・ライクヘルド氏の本です。
- 顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)/フレッド・ライクヘルド
- ¥2,520
- Amazon.co.jp
「満足」「やや満足」で「満足計65%」というような満足度調査は意味がなく、
実際のところ、ブランドからの離脱者の多くは、「満足」と答えているという動向を踏まえて、
たった一つのシンプルな「究極の質問」に行き着く。
それは「この会社の商品を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか?」というもの。
「人に薦めるくらいいい」というのは、言われてみるとハッとします。
単に表層的に満足、というレベルを超えて、前向きな意識としての推奨度こそが真実で
測る意味のある指標だ、というのは深いです。
ライクヘルドは、この質問から、新たな指標、
NPS(Net Promoter Score:推奨者正味比率)を提示しています。
顧客はロイヤルティーが高く、友人にも勧める「推奨者」、満足あるものの
競合からの働きかけになびきやすい「中立者」、いいサービスを受けられず
不満客となった「批判者」の3つに分類される。そのなかで、「推奨者-批判者」
で算出されるのがNPSとなります。
多くの業界での検証から、NPSと売上増は相関が見られ、また実際の顧客行動、
例えば、顧客維持率、クロスセル/アップセル、口コミ紹介などとも強く相関する、とのこと。
顧客はロイヤルティに基づいた消費行動をとるわけで、推奨者は
長期にわたる顧客であると同時に、より多くの顧客獲得に貢献する、と言えます。
もう一つ、この本ですばらしいのは、「良き利益」と「悪しき利益」という考え方です。
顧客とのリレーションを犠牲にして得られる短期的な利益「悪しき利益」ではなく、
顧客満足、満足による継続購入、顧客が満足することによって、他人に推奨して
得られる利益「良き利益」というものです。
企業の本当の成長、持続的成長のために、こうした倫理的なビジネス思考は
傾聴に値すると思う。そういう点で珍しいビジネス本。
もちろん、企業活動でこのNPS指標を軸にして全社的活動を行っていくことの難しさも
想定されますが、著名企業の採用が相次ぐということからも、注目すべき考え方だと思います。
会社でも、個別の組織単位でも導入が可能な指標だからです。
フレッド・ライクヘルド氏はベイン・アンド・カンパニーの名誉ディレクターですが、
ベインがこの「究極の質問」をベースにした、コンサルティングを強化している感じです。
ベイン・ジャパン パートナー山本真司氏と同じくパートナー森光威文氏の
日経bizplusでの連載(現在第4回まできてます)は、読み物風で
「究極の質問」の理解に役立ちます。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/bain.cfm?i=20080215eh000da
う~ん、コンサルティングはやはり、いいアイデアを大量のデータで裏づけ、
メソッド化して、スターが書籍、セミナーで広めて営業する、という感じでしょうか。
こういうやり方は、「究極の質問」とは別に勉強になります。