先日オンラインにて歯科医師会の講習を受けました。来年の成人歯科検診も引き続き当院で行えるよう医療機関登録する為です。その講習の中で是非皆さんにお伝えしたい内容がありましたのでシェアさせて頂きます。

 

まず、成人歯科検診とは何か、受診経験のない方もいらっしゃいますので簡単にご説明します。

<検診期間>

 毎年7/1~11/30

 (今年はコロナウイルス感染症の影響により8/1~11/30でした。)

 

<該当する検診>

 ・「20歳のデンタルケア」

 ・「30歳、40歳、50歳、60歳、70歳の歯周病検診」

 ・「仙台市職員共済組合による35歳、45歳、55歳、65歳の歯科検診」

 

<検診内容>

 ・口腔内診査…歯科医師が目に見える範囲で行います。

  「今までの治療歴」、「虫歯の有無」、「粘膜に癌などの異常がないか」、

  「顎関節症状の有無」、「歯並び」、「歯石や歯垢の付着量」など診査します。

 ・歯周病の簡易検査…歯科医師の指示により歯科衛生士が行います。

  検診で指定された特定の歯の歯周ポケット検査を行い、歯周病の状態を大まかに

  把握します。

 

<検診の目的>虫歯や歯周病の早期発見を行い早期治療へ促します。

 ・虫歯は痛みがない初期に治療をする程、歯へのダメージ、治療回数、治療費用を

  低く抑えることが出来ます。

 ・歯周病は痛みなく知らないうちに進行するので早期に発見することが重要です。

 ・歯周病が全身の病気に影響を与え、病気を悪化させる、病気の治療の妨げになる

  ことが分かっているため、患者さんへ啓発を行います。

 ・健康寿命を延ばすため、お口の健康維持と機能維持を行います。

 ・若い世代からお口の健康を意識することは、次の世代へ引き継がれるため、

  「20歳のデンタルケア」から意識付けを行うことも重要です。

 

「痛い」、「歯が揺れる」、「噛めない」など、症状が出てから歯医者さんにいらっしゃる方も少なくありません。虫歯治療をきっかけに来院された患者さんに歯周病を発見することもよくあります。

成人歯科検診は特に歯医者さんにかかる理由がない方の受診を促すことで、歯周病や虫歯の早期発見につなげる意味もあります。

何かしらの症状が出る前に早期発見・早期治療することが、結果的には来院回数や金銭的負担、痛みに対するストレスを少なくすることが出来るのです。

 

当院では早期発見・早期治療の重要性という観点から、成人歯科検診の医療機関に毎年登録を行なっております。

(※但しルール上、検診当日の治療は行えません。翌日以降で治療を始めていくことになります。)

 

 

それではメインのお話に入ります。

成人歯科検診において、歯周病の早期発見・早期治療は重要な目的になります。

なぜ歯周病ケアが重要なのか、「歯周病と全身の病気」「歯周病と健康寿命」について詳しくご説明します。

 

◎「歯周病と全身の病気」

お口の中には常にたくさんの菌が常在菌として住んでいます。常在菌の中には悪さをしない乳酸菌などもいれば、歯周病菌や虫歯菌、カビなども一定量住んでいます。

 ①歯周病になると、まずお口の中の歯周病菌が増えます。

     ↓

 ②歯周病菌からは毒素が出ます。

  その毒素によって歯茎や歯周ポケットの中で炎症反応が起こります。

     ↓

 ③歯周病が悪化すればするほど、細菌や炎症のもとが、歯茎の中の血流に乗って

  全身に運ばれてしまいます。

     ↓

 結果として…全身に回った細菌は、色々な臓器で悪影響を及ぼすのです。

 

 ⚪︎歯周病と関連のある全身の病気

 ▷動脈疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞)

  歯周病菌と戦う仕組みが過剰反応を起こし血管が詰まる病気を引き起こします。

 ▷感染性心内膜炎

  歯周病菌が血流に乗って運ばれて心臓に届き菌が付着・増殖をします。

  最終的には心不全を引き起こす場合もあります。

 ▷糖尿病

  歯周病菌に対抗する仕組みが血糖値を下げるインスリンの働きを悪くし糖尿病を

  悪化させます。

 ▷誤嚥性肺炎

  飲み込む力が弱くなった方は、お口の細菌が誤って肺に流れ込んでしまいます。

 ▷骨粗しょう症

  骨粗しょう症が進む原因のエストロゲンホルモンの低下は、歯を支える顎の骨も

  同じように脆くします。

  歯を支える骨が脆くなるほど、歯周病は悪化しやすくなります。

 ▷早産、低体重児出産

  歯周病菌の成分に反応して子宮が収縮し、早産や低体重児出産の原因になること

  があります。

 ▷認知症

  ・重度歯周病では失う歯の本数が多くなります。噛む機能が低下しますので、

   噛むという行為による刺激が脳に入らなくなることで脳が萎縮してしまい、

   認知症が進むと言われています。

  ・アルツハイマー病が歯周病によって悪化する仕組みも分かってきました。

   歯周病が慢性化し歯周病菌の数が増えるほど、脳内までその炎症が波及し、

   脳の中のアルツハイマー病の原因因子を増加させてしまうのです。

 ▷リウマチ

  歯周病菌が起こす炎症反応はリウマチ反応を起こし、リウマチが悪化させます。

 ▷手術との兼ね合い

  血流に乗って運ばれる歯周病菌は心臓の人工弁、人工血管、人工関節まで届き、

  留まりやすくなります。

  このような手術歴がある、あるいはこれから手術をする方は歯周病ケアが重要に

  なります。

 

◎「歯周病と健康寿命」

歯周病や虫歯の原因はそれぞれ歯周病菌と虫歯菌になります。これらの細菌が増える土台は磨き残しの汚れです。

つまり歯周病予防、虫歯予防の基本は歯磨きをしっかり行なうことです。

 ①歯周病により歯を失う本数が増えれば増えるほど、「食べ物を噛めない」という

  機能低下が生じます。

     ↓

 ②「食べ物を噛めなくなる」と柔らかいものしか食べられなくなる。

     ↓

 ③食事の満足度が下がることで、食欲が低下します。

     ↓

 ④必要なカロリー、栄養素を摂取出来なくなり、栄養不足になります。

     ↓

 ⑤全身の筋力低下に繋がります。

     ↓

 全身の筋力低下の状態は、将来要介護になる危険性を高くします。

 

 ⚪︎筋力の中でも特に…食べ物を小さく咀嚼し飲み込む筋力が低下すると?

 ▷食事中むせやすくなり、誤嚥性肺炎になるリスクも高まります。

  肺炎は令和元年度の死因第5位に入りますので、その一種の誤嚥性肺炎を予防する

  重要性はお分かり頂けるのでは無いでしょうか。

 

 

◉成人歯科検診の重要性◉

歯周病は軽症から重症までかなり症状が幅広い病気です。高齢の方の病気ではなく、若い方でも軽度な歯周病になっている方もいらっしゃいます。

虫歯や歯周病は命に直結する病気ではないのでどうしても意識が後回しになりがちです。

しかし、お口の中の管理をしっかりすることは「全身の病気」「健康寿命」と密接に関係しており、最終的には命を守ることと結びつくということをお分かり頂けると幸いです。

 

長くなりましたので、次の記事で新型コロナウイルス感染症に関連するお話もシェアさせて頂きます。

 

 

 

当院では新型コロナウイルス感染症だけでなく、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどあらゆる感染症対策を行い診療しております。

成人歯科検診に関わらず、お口の中でご心配な事等ありましたら、お気軽にお電話下さい。

 

電話022ー347ー4618

3月の休診日:4日、5日(午後)、9日〜11日、18日〜20日、25日