『磨かれた円盤』

我は今
陽の光りに温められた湯に
鑑を浮かべる

絵柄が刻まれた側を下に
平らにそっと湯に乗せる

銅は水より重い
ただ置いただけでは沈んでしまう

器のように
中央を凹ませ
縁を付けた形にすれば
空気が鑑を浮かせてくれる

空気は水より軽い

そして
丁寧に磨かれた面が
こちらに向いている

そっと
浮かんでいる鑑を回転させる

綺麗に磨かれた面に
水で濡らした手を翳し

残しておきたい事を唱える

それを終えたら
翳していた手で鑑を湯に沈める

一晩そのままにして
水と化した湯から
鑑を静かに揚げる

水気を丁寧に拭きあげれば
我の思いは
永久に息づき
後世の者達への導きとなろう

詠み方は近親の者に伝えよう

簡単な事
唱えを封じ込めた時と
逆さをすれば良いだけの事

そう
簡単な事

我の思いを欲する者よ

逆さの意味をよく噛みしめ
我の意志を……

………
……

大学の研究室で
私は目が覚めた。

私は斜めになって
顔に引っ掛かっていた眼鏡を
かけ直し、

一心不乱に
ノートへ書きなぐった

今見たフルカラーの
リアリティ溢れる夢の内容を。

考古学を学ぶ学生や
研究者にとって
これはまさに天啓、

今までの常識をひっくり返す

……

試してみないと……

私は書きなぐったノートを手に
研究室を飛び出していった。

期待と高揚感は
表情に出ていたに
違いない。



おわり