大部分の医師は自分の趣味を持っている。一番多いのがゴルフだと思うが、中にはいろいろ個性的な趣味を持った人もいる。
僕の研究および人生の師匠であるK先生の趣味は珍しく、ラリーだった。ラリーとは、ご存じのように車のレースの一種で、2種類のステージがあり、時間を正確に刻む普通の里中を走るステージと、速さを競い山の中の林道を全速力で走り抜けるSSというステージに分かれている。
兄貴みたいなK先生だったから、僕もラリーのレースに誘われた。もちろん、ドライバーがK先生で、僕は助手席のナビ役。
まあ、好奇心旺盛な僕だから、一つ返事でOKした。しかしその時はまだ、ラリーがこんなに過酷なレースだとは思いもよらなかった。
とりあえず、師匠の所属する「Team Kyrrell」というチームに所属し、日本自動車連盟
のB級ライセンス
を取得した。
そして、一回だけ町中の練習に出かけた。その時は、ナビって単にコンピューターのボタンを押すだけだなあ、後は師匠がやってくれるようだし。って安易に考えていた。
参加した大会は、大阪電通大
の自動車部主催のレース。Aクラスという軽自動車部門に参加した。
金曜当直明けの土曜日の仕事を夕方に終えた後、合流し京都の北、丹後半島まで移動。レースは夜を徹して行われることをそこで知った。それだったら仮眠をとっておくのだったと思ったのが後の祭りで、最悪のコンディションで大会に臨むことになった。
スタートは夜中の12時ジャスト。師匠のミラ・ターボ
に乗り込みいざ出陣。
最初は町中をのんびり、僕は言われたところでコンピューターのボタンを押すだけ。これなら何とかなるか。しかしその先だった。段々と山の中に入っていったら・・・・。SSコース開始のポイントだった。
山の中の舗装のしていない曲がりくねったガタゴト道。そこを全力疾走で走り抜ける。ヘルメットをかぶった頭が前後左右に揺れ、窓ガラスに当たるわ、ヘッドレストに当たるわで、首を痛めそうだった。
また、ガードレールなど無いから、ハンドル操作を誤ったら谷に落ちるっ!て感じ。でも何とか落ちずにすんだ。
そんな、タイムを正確に刻むステージと、スピードを競うSSコースが、何回か繰り返されるうち、気分が悪くて吐きそうになった。最後のSSステージでは「先生、もう止めましょう!」って言いそうになった。車酔いにもほどがある!
ゴールに帰ってきたときは、気分不良と吐き気、眠気で意識が遠のいていた。結果が出るまでの時間は、仮眠室で爆睡していた。結果なんてどうでもいいやって。
そして、早朝の表彰式。優勝候補が次々とタイムの刻み違いや事故で脱落。なぜか棚ぼたの準優勝だった。何もしてないのに、トロフィーとメダルをもらった。しかし、表彰台の上でこころに誓った。「2度と参加しないぞ!」って。(でも、誘われたらまた参加するのが僕の性(さが)ですけどね。)
後で、以前ナビとして参加したことのある看護婦さんの話を聞いたら、「私は谷底に落ちたわよ」だって。恐いねえ。
人気ブログランキング なにとぞご協力を!
読んで頂けたら、ここをクリック ↓お願いしますm(_ _)m